【雇用№007】雇われ勇者 雑貨屋でバイトする
襲撃からしばらく経った。体力が戻ってきたので、倒したインプの死体を役所の人と一緒に、ゴミ捨て場に運んでいった。
「う~ん、これで最後ね。リュウ君助かったわ。ありがと」
「いえ、こんなことくらいしか出来ませんから」
「そんなことないわよ。襲撃時も色々活躍したみたいじゃない。町の色んな人から感謝されてたわよ。」
「ガンツさんがいてくれたからですよ。」
「あなたがいてくれて、戦ってくれたから助かった命があるのよ。よ~く覚えときなさい。それにしても、このインプはちょっと大変ね。前は魔鴉の大群でそれはそれで大変だったけど、後処理は楽なもんだったんだけどね。」
「インプだと、魔石を体の人間でいう心臓部分から取出して、後は、焼却する必要があるのよね。リュウ君確か、仕事探してたわよね。そんなに高くは出せないけど、手伝ってくれるわね。」
「ええ、喜んで」
「なら、手始めに、魔石を全て取り除いて頂戴。後は、素材としては使えないし、腐ったら匂いで魔猪がよって来るのよね。早めに焼却するから一か所に集めといて。」
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数時間後、「ようやく終わりました。計56個です。」
「よくやったわ。後は焼却なんだけど。この量はちょっと多いわね。中級魔法使える人はで払っているし、初級魔法でちまちま焼却していくしかないわね。あ~、今日は残業かも。リュウ君魔法は使える?」
「えぇ、宿の人に生活魔法を教えてもらって少しだけ。」
「あらこれも少しは手伝ってもらえそうね。私が魔法を唱えるから後でマネして、復唱してね。」
『万物のエネルギーの素たる命の炎よ。女神フェリシアの名の元にわが前に獲物を焦がす炎を権限せん。フレイムガトリング』
周 囲から魔素が時間をかけて集まり、スイカほどの炎のかたまりがインプの死体に届いて、炎を巻き上げた。
「ふ~私だと一匹ずつ焼却が限界ね。しかも後、3発くらいしか打てないわ。リュウ君もやってみて」
「はい、エルザさん」
『万物のエネルギーの素たる命の炎よ。女神フェリシアの名の元にわが前に獲物を焦がす炎を権限せん。フレイムガトリング』
唱えたはいいが、エルザさんが詠唱した時よりも魔素が集約するまでに時間がかかる。ようやくたまって、放った時には10分程が経過していた。
「時間がかかったわね。リュウ君て魔法は使えるけど、魔力が少ないタイプなのかな?」
「そうなんですかね。ミネラルウォータも発動はしますが、豆粒くらいですからね。はっはは」
「ま~この魔法は、どんな人でも魔力が使える人なら使えるけど、人によって、詠唱時間が異なるのよね。」
「時間がかかりそうなので、少し聞いてもいいですかね」
「いいわよ。でも、私のスリーサイズに関しては、秘密よ。」
「えぇ、もちろんですよ。(興味ありませんし)」
「まずは、今回のゲート発生に関してですが、よくあるのでしょうか?」
「そうね。10年前までは、年に1回くらいだったけど、最近は月に一回くらいのペースかしらね。その時々に応じて、魔物が来たりするわ。何も来ないときもあるけど」
「そうなんですね。月に一回って結構な割合だと思うんですけど、それにしては戦える人が少ないような気がします。今回も目立って倒してたのって、雑貨屋のガンツさんですし。」
「それはねちょっとした理由があるのよ。魔族はね。ゲートを通ってやてきて、人間を殺していくから、防衛に本来人手が必要なのよね。でも、現在、世界4カ国で魔族への全面攻撃を行っているのよ。それで、戦える人は大概徴兵されて、出払っているってわけ。ガンツさんも強いけど、それでも冒険者ランクではDランクだから。魔族への徴兵には適用されず防衛することで残っているのよ。」
「でもそれだとCランク以上の魔族が来た場合、まずいのでは?対抗できる人はいないし、何より城の防衛ができずに落とされるのではないですか?」
「でもこれまでにゲートから、そんな高ランクの魔族が出てきたことは幸いないのよね。なので、高魔族はゲートをなんらかの理由で、ゲートを利用できないのよ。きっと。それを方針に国は、戦力を出しているわけ。もちろん、王の周囲には数人、Aランクの聖騎士がいるわよ。警護はどうしても必要だからね。なので、今回ガンツさんと一緒にインプと戦えたリュウには期待してるわよ。弱いといっても、それ以下の民間人の方が多いから、怪我したりするのはなるべく避けたいのよね。」
エルザさんがそう言って僕の両肩にがしっと両手を置いて掴んだ来た。
「ポーションはあるといっても、少しだけよ。少しだけ。今はガンツさんが一人で作っているから、量が少ないのよ。出来たものも、軍事物資として、ほとんが徴収されるから。」
「リュウ君。このインプの丸焼きが終わったら、雑貨屋のガンツさんのとこにバイトに行ってきなさいよ。薬草の採取やら、ポーションづくり、ポーションに入れる瓶づくり、きっと仕事は山のようにあるわよ。私から話はつけとくからね。」
「そうですね。町の皆さんのために出来ることがあって、それがお仕事になるのであれば喜んで。」
「あっ、詠唱が完了したみたいなので、発現しますね」
『フレイムガトリング』
インプの1匹が丸焼けになった。
「お~魔力の低い僕でも火力がでた」
「でしょ~、で、後何回くらいできそう?」
「そうですね。使う魔力が、ミネラルウォーターと同じくらいだから。200回くらいはいけるかと」
「ええぇ~~~。200回も出来るの何それ、魔力は低いけど、魔力容量はとんでもなくでかいってこと」
「チルさんも驚いてたけど、そんなに僕って容量多いんですかね。」
「多いんですかねってものじゃないわよ。宮廷魔術師並の容量よ。冒険者でいえば、中堅のBランクよ。でも詠唱完了にかかる時間が長くなるから、宮廷魔術師は無理でしょうね。 ま~それでも、それだけ魔法が使えるんなら今日中に終わりそうね。ちょっと今夜は長くなりそうだけどね。お腹もすいてきたし、私は一旦魔石をもって、役所に戻るわね。戻ってくる時に飲み物と食べ物もってくるわ。今日は寝かさないよわ。」
と可愛らしく、シナを作ってウインクする。
思わずドキッとしてしまう。
「やだな~からかわないでくださいよ。僕もお腹空いてきたのでお願いします。」
すたすたと大きな袋に魔石を入れて、役所に向けて歩いていくエルザお姉さん。
「は~ほんと、女性に免疫ないから、やめてほしいな~。さて、だれもいなくなったことだし、新しく学んだ魔法を解析してみますか」
『スマホ:オープン』
さてさて、それでは記録開始といきますかね。ぽちっとな。
『万物のエネルギーの素たる命の炎よ。女神フェリシアの名の元にわが前に獲物を焦がす炎を権限せん。フレイムガトリング』
『終了』っと。
「されどんなコードで書かれているかな?っと。ふむふむ基本的には、ポケットライターの魔法と同じような感じだね。なるほど、ここの条件は、時間ではなくて、魔素の容量で判断しているから、魔力の大小によって詠唱時間が変わるわけか。で、ポケットライターの方は、時間内に集めた魔素で発動するから人によって強弱がでるってことね。」
んで、このワードがどうも火の属性を指し示すコードみたいだね。となると、風と土と水のコードもわかってきたな。面白くなってきたぞ。コードの内容がわからなくて、あまり大きな変更は出来なかったけど、ある程度ソースコードが集まれば、それから差分を抽出して、意味を読み解くことぐらいなんとかなるさ。
さ~面白くなってきたぞ。異世界といえば、魔法、しかも自分で魔法をいじれるとなれば
かなり凄いことだぞ。絶対ばれないようにしないと。
一応、ガンツさんが唱えてた魔法『フレイムボール』も記録しておいた。でも、残念ながら前の詠唱の『フレイムガトリング』が完了していないため、発動すらしなかった。
フレイムガトリングの詠唱が完了し、発現後にフレイムボールを記録した。フレイムボールも詠唱容量タイプではあったが、使いやすさ優先のためか、必要な魔力容量が、フレイムガトリングの半分以下であった。
ひとまずは、あまりスキルがバレルのは面白くないので、大幅な変更はせず。詠唱内容のみを短縮の呪文に変更した。そうこうして、3~4体焼却しているうちにエルザのお姉さんがかえってきた。
「お~い、リュウ君。おまたせ~~」
「リュウさん。お疲れさまで~す」
「リュウさん。オツ」
「リュウさん。ありがとうございます」
と先ほど助けた3人娘がやってきた。
「役所の帰りに、眼鏡かけた黒髪の人について聞かれたから。 ついてきちゃった。あと雑貨屋のガンツさんにも声かけたから後で来ると思うわよ。」
「へへへ~。聞いてから急いで用意したので、手の込んだものはないですけど。よかったらどうぞ!!」
「わ~お腹ペコペコだったんだ。ありがとう。え~と……」
「自己紹介まだでしたね。私はエリナ17歳。服飾屋で見習いのお仕事してます。さっきは、助けてくれてありがとう。とってもかっこよかったです。」
「私は、フェリス。歳は秘密。酪農家でお仕事してます。料理得意じゃないので、うちにあったチーズと牛乳です。絞りたてです。助けてくれてありがと。私の棒では、どうにもならなかった」
「マインの名前はマイン12歳です。武器屋で鍛冶職人やってます。リュウのお兄さんも是非一度来てくださいね。お兄さんみたいな彼氏がほしい~~」
「エリナさんにフェリスさんにマインちゃんね。宜しく。マインちゃんは可愛いからきっと今に素敵な彼氏ができるよ」
「おーやってるな。これかみさんからの差し入れだわ。デザートに、プルシェもってきたぞ」
「「「プルシェ、好き~」」」
「へ~そんなにプルシェって美味しいの?」
「お兄さん食べたことないの?これすんごく甘くてジューシーで、食べ応えのある果物なんだよ。」
「へ~じゃ、是非食べたさせてもらおうかな?うん、美味しい。噛むたびに口の中から果汁が溢れてくる。(前の世界だとメロンに近い味だな)」
「でしょ~。私も食~べよっと」
「あらあら賑やかになってきたわね。リュウ君あれから進んだ?」
「そうですね、追加で4匹ほど焼却しました。」
「なら合計で私のも入れて、6匹ね。56匹分の焼却だと先が見えないわね。あ~ん。どうしようかしら。ほっておいたら、魔鴉のエサになるし、魔猪も寄ってくるし。かと言って、焼却するための火力要員は不足してるし。う……ん」
「ちょっと手立てを考えるから、リュウ君は引き続き続けて」
「はい」
「あの、いいですか?マインは知っているのです。武器を鍛えるためには、火の温度を上げる必用があること。そして、火が燃えるためには、新鮮な空気と周りと異なる壁、部屋がいること。」
「なるほど。では、温度が逃げないような部屋を作って、そこに新鮮な空気を風で送り込んで焼却すればいいのかしら。」
「なら詠唱を中断して、窯っぽいものを作りますね。」
『万物の恵の要たる土よ。女神フェリシアの名の元にわが前に少量の土を与えよ。トッカン』
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「はー、これで地面に穴を掘って、その周りを畝上にして壁を作りました。天井の穴はあいてますが。インプを入れるための入り口はつけてあります。大分熱は逃げなくなります。」
「よし、ならそこにインプは俺がもっていってやる。嬢ちゃんたちは、魔法で風を送ってくれ。使えるよな」
「はい」「うん」「もちろん」
「なら、点火は私がやるわね。」
『万物のエネルギーの素たる命の炎よ。女神フェリシアの名の元にわが前に獲物を焦がす炎を権限せん。フレイムガトリング』
竈らしきもののとこへ、火種が放り込まれた。竈は火をともし、高熱へと変化していく、入っていたインプはあっという間に焼却されていく。
「これなら少ない魔力でもなんとかなりそうですね」
「ほれ追加のインプだ。どんどん入れていくぞ」
・・・・・
それからしばらく経って
「や~~っと終わったわね。今日中には終わらないと思っていたけど。片付いてよかったわ。みんなも遅くまで手伝ってくれてありがと。討伐の報酬と今回の焼却の報酬は、精算するからちょっと時間をもらうわね。2~3日後に役所に来て頂戴。あ~あ、リュウ君を夜通し、焼却しながら誘惑しようと思ってたけどあてが外れたな~」
「かみさんが待っているのでおいとまするわ。リュウよ。うちでバイトしたかった、明日からこいな。出来る仕事は色々あるぞ。まっ、明日からだ。」
「私たちもこれで」
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宿屋へ帰ると、チルが扉を開けた瞬間泣きながら抱き着いてきた。
「リュウさん。遅いですよ。ひっく。ひっく。襲撃されたときになにかあったんじゃないかと。ひっくひっく。」
「チルごめんて。まさかそんなに心配されているとは……」
「ごめんじゃないですよ。どれだけ心配したと思ってんですか……バカ」
「襲撃の後は、そのまま役所の手伝いで、魔物の処理やってて。思ったより時間かかっちゃって、遅くなっちゃいました」
「晩御飯は冷めちゃったけど、いりますか?」
「ちょっと食べてきたけど、チルの作った料理はたべたいな」
「魔法はもう打ち止めなんで、あったかくは出来ませんが、これ食べてください」
「ありがと。ほんと今日は色々あったな~危うく死んじゃないかと思ったわ」
「今日の出来事詳しく教えてよね。もう、話すまで寝かさないんだから」
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リュウを地球に一刻も早く愛ちゃんのとこへ戻すために皆さんのパワーをお貸しください。