【雇用№044】雇われ勇者 現地民の魔法の学び処その1
「チル、ポーション作りに必要な材料持ってきたからここに置いておくね。」
「うん、リュウ兄ちゃんありがとう」
「前から聞きたかったことがあったんだけど、いいかな?」
「さっきの今で聞きたいこと?いいよ?」
ポーション作成の手を止めてこっちに身体を向けて座り直すチル。
「この世界で、庶民は魔法を家事の手伝いや仕事の手伝いで、習って自然と覚えるっていってたよね?」
「うん、そう言ったね」
「でね、照明とかって、魔道具とか、油を燃やして、灯りとしてるじゃない?魔法単品でそういうのってないかな?あとは、チルが知っている魔法を使えないのも含めて全部教えて欲しいかな。これは旅する上で大事なことになってくるんだけど、回復魔法……ええっと、ポーションみたいに体の怪我や病気を治す魔法ってあるのかな?あったら、薬儒の森や魔霊樹伐採に行く前にどうしても覚えておきたいんだ。
二人とも近接タイプの戦士ではないし、僕はどちらかといえば遠距離魔法使いタイプ。ミリィは回避しながらの、遠距離からの投擲タイプになると思うんだ。回復がポーションだけだと、持って行ける量が決まっているし、あと、持ってた分しか回復出来ないから。出来れば違う方法での回復方法が欲しいんだ。」
「リュウ兄ちゃん。一遍に言われても答えられないよ。え~~と、まず、照明の魔法だっけ?私は知らないよ。宿屋では、リュウ兄ちゃんも知っていると思うけど、蝋燭に火を灯して、灯り(あかり)としてたから。私が知っている魔法は、この前、教えたので全部だよ。他は、知らないよ。一般のとこじゃ、魔法を使える回数が少ないから、そこまで多くの種類は覚えていないんだよ。
それと、回復魔法だっけ?それに関しては、私は聞いたことないよ。怪我した時は、放置して、自然に治るのに任せるし、デーモンが襲ってきた時とかは、ポーションで回復してるから。病気の場合は、風邪ぐらいだったら、やっぱり自然治癒だし、よっぽど酷くても……庶民は何も出来ないかな。庶民はそこまで給金が高くないから、ポーションなんてそもそも高くて手が届かないんだよ。」
あ~~そういえばそうだったよ。ポーションって、販売価格1本1万ループとかするんだった。自分で薬草栽培して、ポーションも自作出来て、フレッシュハーブティーにして毎日飲んでるからちょっと金銭感覚おかしくなってるかも。
「チルは知らないか。うん、わかったよ。ありがとう。ならさ~、この件に関して知ってそうな人って知らないかな?」
「う~~ん……わかんないけど、警備隊のグラマン隊長か、役所のエルザさんなら一通り知ってるんじゃないかな。」
「なるほど、グラマン隊長と、エルザさんね。うん、ちょっと行って聞いてくるわ。チルはポーション作り引き続き宜しく。」
そういえば、昨日倒した魔猪の討伐報酬ももらっていなかったっけ。ついでにもらってこよう。
リュウは一人、役所へと向かっていった。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
「エルザさん。こんにちは」
「あら、リュウ君こんにちは、今日はどうしたの?ポーションでももう出来たのかしら?」
額から汗が流れ落ちる。あれっ、もしかして不味いタイミングで来ちゃったり?
「いえ、まだですね。ポーション作りはチルとウェルザさんモニカちゃんに頑張ってもらってますので、もう少し待ってください。今日来たのはですね。魔猪を討伐した報告とちょっと聞きたいことがあったからです。はい、これ討伐証明部位と魔石です。」
「じゃ~まずは討伐の精算を行うわね。討伐部位の鼻ね。討伐報酬は10万ループ、魔石は20万ループ、合わせて30万ループね。はいっ」
といってエルザさんはポンと報酬を渡してくれた。
「それと私に聞きたい事ってなにかしら?また、スリーサイズを聞きに来てくれたのかしら?」
「いやいや、こんな人の居る所で人聞きの悪いこと言って揶揄わないでくださいよ。」
僕は顔を膨らませ抗議する。
「ごめんごめん、あんまりリュウ君の反応が面白いからついね。で、なにかしら。聞きたいことって。」
「ポーション作りを楽にするために、魔法を色々と覚えたいんですけど、照明の魔法とか、どこに行ったらそういうのってわかりますかね?後、人の治療をポーションみたいに出来る魔法ってありますか?」
「そうね。私もそんなに魔法に関しては詳しいとは言えないわね。普通の人が使ってる魔法にこの前みせた、『アイスクーラー』や『フレイムガトリング』などの役所で覚えた方がいい魔法くらいかしら。みんな職業ごとに教えている魔法が違うから、誰がなんの魔法を使っているかは知らないわよ。ポーション作りの魔法だったら、ガンツさんがよく知っているんじゃない。あの人はこの町の唯一の錬金術士だから。
あと照明の魔法は、私は知らないかな。警備隊の人も夜間の任務の時は、松明持っての見回りだったでしょ。そこまで簡単に魔法をなんども使える人はいないからね。う~~~ん、お貴族様や宮廷魔術だったら知っているのかしらね。
それと、人治療の魔法?だったわね。お医者様か、教会の方ならご存知かもしれないわよ。治療やお薬にはかなり高額な材料が必要だったりするから。教会やお医者さんは、私たちみたいな雇われ人じゃとてもじゃないけど、お願い出来たりしないわよ。お貴族様専門てところかしらね。」
「なるほど、ポーション関連の魔法は、ガンツさんに確認してみます。照明の魔法は宮廷魔術士かもですか。回復魔法も、お医者様か教会だと……。どっちも僕がぽっと行って、相手にしてくれるものでしょうか?」
「う~~ん、難しいと思うわよ。あそこは全部紹介制になっているから、初めてのお客さんは一切相手にされないのよ。私も正直無理ね。」
「そうですか。なら、そこはもう打つ手なしってことですね……。はぁっ」
先行きが暗くなり、ちょっとため息を吐いてしまった。
「そっ、そうだわ。もしかしたら、リュウ君のとこで働いているウェルザさんが何か知っているか?伝手があるかもしれないわよ。あそこの亡くなった旦那さんは元下級の貴族だったからね」
「えっ、そうなんですか。灯台元暗しか、それともチルチルミチルと青い鳥か、探しものは僕の近くにあったのか。ありがとうございます。早速、ウェルザさんに聞いてみます。」
そう言って役所を離れ、自宅に戻っていくリュウであった。もう一つ紙に関する案件があったことを忘れていたのだった。
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