【雇用№027】雇われ勇者 天蓋付きのベッドと少女
おはようございます。
朝からノリにのって、書いてたら、まさかまさかの一投稿がこれまでで一番多い量になってしまいました。
前の話で、毒により皆さまのこころが傷んでいると思いますので、
このお話でお口直ししてもらえればと思います。
うん。なんか変なナレーションみたいなものが聞こえたような気がするけど……
気のせいだな。きっと。空耳空耳。
「ウェルザさんって、昨日会ったばかりですけど。ご自宅ってここから結構近いのですか?」
「そうね。リュウさんの所からだいたい歩いて30分くらいのとこかしら。リュウさんのお宅って、畑があるから、町の郊外ですよね。私のとこは、繁華街の近くなので中心部のちょっと端にあるんですよ。」
「ねえねぇモニカちゃん。今回持ってくるベッドとか丁度品とかって、可愛いのあるかな?」
「チルお姉ちゃん。可愛くはないんだけど、お客さん用だからすんごい高貴でシックな感じだよ。」
「そっか~。王女様とかが使ってそうな天蓋付きのベッド欲しかったのよね。」
「ふふふ、チルさんは女の子ですね。客室用のは、男性も泊まるから、シンプルにしてりますね。でも、私のお部屋のベッドはチルさんの好みにあうと思います。私も結婚した当初は、天蓋つきのものが小さい頃からの憧れだったので、旦那様にお願いして、元々あったベッドにつけてもらったんですよ。」
「ですよね。ですよね。やっぱりそういうのって女子なら憧れますよね。宿屋で住み込みの時は、そういうの買っても困るだけだったけど。あっ、そもそもそんな高価なものを変える余裕はなかったんだけどね。リュウの屋敷に住んで、自分の部屋がもらえるってなったら、自分の気に入るものが欲しいな~って思っちゃて。えへっ。」
「へ~~~よくわからないけど、女の子ってそういうもので、テンション上がるものなの?」
「上がるよ。すんごい上がるよ。寝るときに、天蓋付きのベッドで寝られたら、昇天しちゃいそうになるくらいになるよ。きっと。でも、そういうこと言うリュウ兄ちゃんて彼女いないでしょ。」
「いや、いるよ。いるに決まってるだろ。(出来て早々、こっちに転移してきたから、悲しいのだが)」
「あっ、焦ってる。本当はいないんでしょ。無理しなくて。いいんだよ。私も彼氏とかいたことないし。無理してみえはらなくていいんだよ。」
「いや、だから、いるって。無理もしてないし、見栄もはってないよ」
「リュウさんのお連れ合いの方でしたらきっと素敵な方でしょうね。どのような方なんですか?」
「今はもう会えないかも知れないくらい遠い所に住んでます。彼女は、黒髪のショートヘアで、なんでも思ったことはづけづけ言ってくるけど。周りの人には人一倍気を遣って、みんなに愛されている。そんな僕にはもったいない人です。」
「リュウお兄ちゃんの住んでた所ってどこなの?さっきのお家じゃなかったの?」
「あっ、それ私もすっごい、気になってたんだ。宿に来たときは見知らぬおかしな恰好でいきなり来て。お金の価値も知らなかったし。どこの人だろうって思ってたんだ。あの時は、お客さんだったし聞けなかったけど、今なら聞いてもいいよね。」
「そうだね。日本って国なんだけど聞いたことがあるかな?お米っていう麦のような粒が白いものを主食としているとこで。馬車の代わりに自動車っていう無人で、走る馬車があったりするとこなんだ」
「ないよ」
「知らない」
「この大陸の街はだいたい覚えてます。そのような名前は聞いたことがありません。海の向こう側から来られたんですね。」
「そうです。この大陸の海を渡ったとこよりももっとっ遠い所から来ました」
「へ~無人で走る馬車?思い浮かばないそれってどうやって走るの?」
「モニカもその馬車のってみた~い」
「僕も詳しい原理は知らないんだ。だからそういうものがあると思ってくれればいいよ。モニカちゃんは行くことがあったら一緒に行こうね。」
(異世界に帰ることが厳しいから、一緒に行くことなんてまず出来ないんだけど)
「やったー」
「あっ、ずるい、その時は私も連れてってよ。」
「チル。わかったから、そんなに引っ付くなよ。チルも連れてくし、モニカちゃんが来るなら、ウェルザさんも一緒に行って。その時は農園管理メンバーの慰労会としゃれこもう。」
「「やった~~~~」」
「ほらほら皆さんお話しているうちにつきましたよ。こちらが私とモニカの自宅です」
「「お邪魔しま~す。」」
「こちらが客室です。このベッドとこの部屋の調度品なら、使っていませんので持って行っても大丈夫です。」
「えっ、この部屋の全部いいの?うわ~~~い。ウェルザさんありがと~~。なら、ベッドでしょう。この机と椅子と、洋服ダンスもいるし、あっ、化粧台まである。全部欲しい♪」
「さっきまで天蓋ベッドが欲しかった人とは思えない上がりっぷりだな。でも流石に全部は無理だぞ。チルの部屋にはそんなに入らないからね。それに、ここから結構遠いんだから、重いものをそんなに何度も運んでいる時間はないよ。家具はベッドの一点だけだ。それだけでも、結構重そうで、二人で持てるか心配なくらいだよ。」
「う~~~~~。残念だけど、わかったよ。は~~~そうだよね。よく考えると、リュウ兄ちゃんの家まで運ばなきゃならないんだよね。は~惜しいな。ウェルザさん。持っていくものは後にして、女子の夢の天蓋付きベッド見せてもらっていいですか?」
「いいわよ。私の部屋は2階にあるの。ここです。」
「きゃ~~~夢にまで見た、天蓋付きのベッドだ~~~。」
と言って、自分の部屋ではないのに、ベッドにダイブする。
「あ~~すんごい。いい香り♪。それに布団もふかふかであったかい。あっリュウ兄ちゃん。すごいよ、このベッド。のったら、バウンドする。面白~~い。」
「おいおい、いくらなんでもそれはないだろ。 人のベッド見せてもらって、そこにダイブして、ベッドの上で跳ねるなんて。ウェルザさんすみませんね。」
「ふふふっ、いいのですよ。あ~いう純粋な反応は見てて楽しいですから。チルさん。ベッドもお布団も客室のものと同じですよ。それに天蓋が外付けしてありますから。ふふっ。」
「そうなのやった~。宿のお客さん用のベッドより寝心地いいよ。きっと。今日寝るのが楽しみだな~~~。これってどうやって取り付けるんですか?」
「貴族御用たしの家具屋さんで売っているものを主人が業者にお願いしてつけてもらいました。お古でよければ、この天蓋を外して、持っていきますか?」
「えっ、いいの~~~。ウェルザさんありがと。ウェルザさんだ~~~い好き。」
チルはウェルザさんに抱き着いて、抱きしめていた。
あ~~羨ましい。僕も純粋にチルみたいにできれば、ウェルザさんに抱きしめてもらえるのに……
「宿のベッドよりもいいのか。僕のベッドなんかは、宿のより硬くて、寝返りうつのも厳しいし。布団も重くて、せんべいみたいなんだよね。チルっ。僕のと交換しない?」
「えっ、やだよ。これは私がもらったんだもん。あげないよ。どうしてもこのベッドで寝たいっていうんなら、一緒に寝る?」
ちょっと顔を赤らめながら、こっちを見上げるチル。可愛らしいな思わず抱きしめたくなるよ。でも、僕には彼女がいるし、愛ちゃんを裏切るわけにはいかないんだ。だって、僕は彼女のいる地球へ絶対に帰るんだから……
「またっ、冗談いって、揶揄う気でしょ。その手にはのらないよ。ま~欲しくなった、買いにいくよ。さて、時間もそろそろなくなってきたし、天蓋取り外して、ベッドと一緒に運ぶよ」
「は~~~い」
手分けして、天蓋を外しベッドの上に載せた。
「リュウ兄ちゃん。ここまできてなんだけど。このベッド結構大きいからきっと。重いよ」
「あら。ごめんなさい。重さのことまで考えていませんでした。」
「いいんですよ。ウェルザさん。ここまででかいとは思っていませんでしたけど、僕も男ですから、そこそこ体力には自信あります」
「いや、リュウ兄ちゃん、ちょっと冷静になって。いくら大の男の人でも、これは無理だって。ガンツのおじさんだって、あんなに筋骨ムキムキだけど、これは持てないよ。」
「ま~文句はあとから聞きますよ。まずは見てみてください」
とっておきの風魔法があるんだよね。
『物の重みを軽減せよ。浮力』
とみんなに聞こえないように、魔法を発動する。屋敷に引っ越した時にものの配置換えをするとき開発した魔法だ。これは風の魔法で、物の対象の下方から、風を当て続け、重みを軽減するのだ。
けっして、スカートをはいている女性に使ってはいけない危険な魔法だ。僕はそういうこともあって、この魔法を他の人に教えるようなことは絶対にしない。そうしない。絶対だ。ま~そもそもの話、独自で作った魔法が他の人も使えるかどうかはわからないんだけど。
とベッドに重量軽減の魔法をかけてベッドの端を軽々と持ち上げる。
「おっ、リュウにいちゃんすごい。本当はすご~~~く力持ちだったんだね。疑ってごめんね」
「いいよ。いいよ。そんなの気にしてないから。とは言え、流石に一人でベッドは持てないので、ウェルザさんとチルは僕の反対側を持ってください。モニカちゃんは扉の開け閉めと、進行方向の誘導やってくれる」
「うん。わかった」
こうして、大きな天蓋つきのベッドは、ウェルザさんのお屋敷から、リュウの屋敷まで運ばれることになった。
歩きつかれたモニカちゃんは、途中から眠そうだったので、ベッドの上に載せて、寝ながら運んだ。チルが羨ましそうに見てたが、気付かないふりをした。いやいやチルがのったら、だれがベッド運ぶんだよ。自分の使うベッドにのって、ウェルザさんに自分ごと運ばせる気か……
道中の不思議な光景に、歩いていく先々で、憧れと不思議な視線と、
「そして、私もあれやってみたい」
という声が「キャーキャー」と各方面から聞こえてくるのであった。筋コツムキムキなイケメンの人が運ぶ人力車が始まるきっかけを作ってしまったことをリュウたちは知らない。それは、小さなベッドに天蓋をあしらえたもので、下に車輪がついており。馬の代わりに人が引いてくれるものである。
これを自分で発明して、役所に届けていれば、農地管理などしなくても、権利収入だけで、暮らしていけたことをリュウは知らない。
・・・・
「は~ようやく着いたよ。たっだいま~~~」
「だれもいないけどね。お帰りと」
「さて、部屋に運んだら、今日のお仕事はこれでおしまいです。ウェルザさん。夕飯の材料ってなんか買ってますか?」
「いえ、今日はお昼だけだと思ってましたので、買い置きはしてませんね」
「そうですよね。では、夕飯は明日からにお願いします。ウェルザさん、モニカちゃん二人とも今日はありがとうございます。明日また宜しくね」
「はい。お疲れ様です。明日からは、夕飯の分もお昼に買出ししておきますね。では今日はこれで。さようなら~」
「ばいば~~~い」
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リュウを地球に一刻も早く愛ちゃんのとこへ戻すために皆さんのパワーをお貸しください。




