【雇用№186】フィナーレ1
僕と愛ちゃんは、神界から戻って来た。
戻された場所が愛ちゃんのお城で本当によかった。外に放り出されていたら、今の僕と愛ちゃんの二人では到底魔物の相手も動物の相手すら出来ないのだから。
僕は、チルとノエルに帰還の報告に行ってきた。
「ただいま。ノエル、チル」
「お帰り、リュウ兄ちゃん。」
「お帰りなさいませ。パパ」
「魔霊樹の件は、何もしなくて良くなったから、折を見てドラゴンファームへ帰ろうか。」
「うん、もう少しだけここで、お仕事したいっていいかな?お城の人のお仕事手伝うってすっごい楽しいし、色々学んでから、帰りたいかな。リュウ兄ちゃんなら、転移魔法でビュイッとすぐ帰れるから少し遅くなっても大丈夫だよね。」
「へー、僕のいない間にそんなに仕事の手伝いしてたのか………。ん、ちょっと待って、僕たちが行ってから一晩しか経ってないよね?」
「ええと、何日だっかな?」
チルが人差し指を口に当てて、首を傾げて答えてきた。
「チルお姉ちゃん。既に5日経ってますよ。パパの感覚では、一晩だけなんですか?」
「うん、一晩だけ。」
浦島太郎の御伽話ではないけど、異界に行くと時間の流れが違うのだろうか?そうなるとここの一年と神様の一年って一体どれくらい違うんだろう?
まーいーかわもう行くこともないし、神様達に会うこともないから。
「転移のことだけど、実は僕は魔法やらスキルが全部なくなったから、今までみたいに戦うことも出来ないし、移動することも出来ないんだ。」
「「ええーーっ」」
これまでの経緯を二人に細かく説明した。神様が出てきた所で、ノエルが偉く緊張したみたいだけど。普通はそこまで緊張するよな。チルはのほほんと気楽に話しを聞いているし。
「パパ、ちょっと待って、せ精霊神からご神託が来ました。」
どうもテレパシー形式で、話しがきた様だ。僕とチルは、話すのをやめて、静かにノエルが精霊神様と話し終えるのを待っている。
「はい、はい、分かりました。その様に致します。失礼します。」
「終わりました〜」
とぐったりした様子で僕の胸ポケットに入ってきて項垂れている。
上位の人とのお話は、失礼がないから常に気を張って話すから、例え数分のことでも凄く疲れるよね。
「お疲れ様大変だったね。それで精霊神様はなんて?」
「ふーっ、先程パパが話された内容と概ね同じです。魔霊樹は伐採しなくて良いと。私としては、納得出来る内容ではないのですが精霊神様がそう言うのでそうします。あと……」
「あと?」
「チルお姉ちゃんとティタニアママと一緒に、大好きな人間が居なくなったら一緒に精霊界に戻って来なさいって。」
ん、どういう意味だ?ティタニアは、禁術の影響でしばらくこの世界には存在しないだろう?一緒に帰ってこいというのは、数百年後のこと?なら、チルはなんで?人間なのに何故呼ばれたんだ?数百年も生きられないだろう。
この世界の人間は数百年も何もなければ生きられる種族なのか?大好きな人間は、僕かドラゴンファームの人達だろう?
「どうして、私とティタニアちゃんとノエルちゃんの3人だけなのかな?ノエルちゃんとティタニアちゃんの二人は精霊だから精霊界に戻るのは分かるけど。なんで私も?」
「それは私も分かりかねますね。理由は、精霊神は何も言っておられないので………。うーん、私の考えでは、気が扱えて、精霊術が扱えるからではと思います。パパは、そう言う意味では、もう使えないので対象から外されたのかと。」
「そうなのかな?リュウ兄ちゃんなしでの精霊界への旅か。なんか予想もつかないかな?精霊界ってどんなとこなの?」
「私も生まれたばかりですので、行ったことはありませんが。自然溢れる豊かな土地で、水も空気も美味しいとこらしいですよ。」
「そうなんだね。いずれは行ってみたいかな。出来れば、ノエルちゃんやリュウ兄ちゃんと一緒に」
そう言ってニコやかに笑いながら僕の手を取ってきた。
「そうだな。いずれは、そんな世界に行くのもありか。」
その時までに鍛錬しておかないとな。魔法の使えない僕は足手纏い以外の何者でもない。長刀持って立って、敏捷を上げなければ、動物にもついていけないんだから。
「あっ………」
「どうしたのリュウ兄ちゃん?」
「精霊樹の長刀がもしかしたらなくなったかも。」
「えーーっ、それなかったら魔族と戦う時大変じゃないの。」
とりあえず確認しようとして、精霊術で異空間を開けようとするが、気のない僕には当然扱うことも出来ず。
「あ………、だ大丈夫だよ。リュウ兄ちゃんの行く所は、私も行くし、今までは守ってもらっていたから、今後は私が守ってあげるよ。リュウ兄ちゃん。」
はー、いい年こいた大人が二十歳前の女の子に守ってもらうなんて。
「ありがとう、チル。期待してるよ。」
「私も頑張りますよ。パパの為なら」
「ノエルももちろん期待してるよ。」
「リュウくーん。こっちはもう大丈夫だよ。魔王の地位も他の人に譲り渡してきたから、私がここにいなくても回るよ。長い間お勤めご苦労様でしたって。」
急遽、交代の話を持っていったにも関わらず両手に溢れる程の花を抱えてそう言ってきた。
「それでいつリュウ君の住んでいる大陸に向かうの?」




