【雇用№170】魔王城での一夜
「うん分かったわ。二人ともこの世界でリュウ君を支えてくれてありがとうね。それは、それとして、リュウ君。私以外の女の子二人と一つ屋根の下で住んでいる件。それにノエルちゃんが産まれた一件、この2つに関しては後ほどしっかりとお仕置きさせてもらいますらね。」
冷めた笑みで愛ちゃんが優しく言ってくる。背筋がゾクゾクして、寒気がしてくる。愛ちゃんがなにか固有のスキルでも使っているのだろうか?
「リュウ兄ちゃんが言ってた愛さんて、この人のことだったんだね。」
はーっ、好きな人と出会っちゃったか。リュウ兄ちゃんが嬉しいことは私にとっても嬉しいことの筈なんだけど、なんかモヤモヤするな。
「パパ、話には聞いてましたが実際にいたんですね。でも、私のママはティタニアママ唯1人です。」
「うん、ちゃんといただろ。愛ちゃん、それに関しては、色々とやむを得ない事情がありましたので事情酌量の予知をお願いします。」
「リュウ君、その話は後で2人でじーっくりとお話しましょうね。」
どうやら、世界の危機は一時的に回避出来たみたいだ。もっともそれがすぐ後にやってくるかもしれないのだが………。
その後もなんだかんだと3人から詰められ、話が長引き夜になってしまったので、魔王城にて夕食をご馳走になることになった。
お話の結果、今後することは、まずは女神に連絡を取ること。指令と報酬の件を確認すること。
上記の内容を確認できたら、状況によっては、愛ちゃんと出会った場所の魔霊樹を伐採する。
こちらも一ヶ月以内に女神に連絡が取れない場合は、魔霊樹を伐採する。魔族の襲撃が1ヶ月スパンの為、それ以上伸びると僕とチルがいない戦力で魔族襲撃に対応する必要が出てくる。いない状況でどうなるかなんて、そんなものは考えたくない。
転移ゲートがあの場所で1ヶ月にもう一度開くことを前提での話し合いだった。無論、そこに集まった魔族を魔法で一層して、開いた転移ゲートで戻るというのも手ではあるが、根本的な解決にはならない。
帰ったが最後また月一スパンでの魔族襲撃のインターバルが発生する。あの街にはもう戦えるだけの体力がない。根本的に襲撃が出ない様にしないとね。
なんであの場所からわざわざ襲撃してくるかも確認したいけど、後手になりそうな感じが半端ない。土地勘のない僕らが1ヶ月で成果を上げるのは厳し過ぎる気がする。
なにはともあれ方針は、あの女神にコンタクトを取ること。その一点に尽きる。
今宵はお城でお泊まりに、チルと僕は別々の個室を用意された。愛ちゃんに用意してもらうのも悪いから1部屋でいいと言った所、何故か盛大に僕が睨まれて、別別の部屋を用意してくる運びとなった。無論、ノエルは僕と同じ部屋である。
愛ちゃんもそこは、ノーコメントだった。
お部屋でノエルと一息ついていると。
「コンッコンッ」
ノックの音がしてきた。
僕は鍵がかかってはいないが、扉の所へいき、ドアノブを回して開けると。
「リュウ君ちょっと二人で話せるかな?」
と、愛ちゃんが机の上で座って、お茶を飲んでいるノエルに視線を向けて言ってきた。
コクンと僕は頷いた。
「ノエル今日は少し愛ちゃんと二人で話したいから、チルと一緒に今晩は寝てくれるか?」
「パパ、ノエルはお邪魔ですか?」
可愛らしい瞳でウルウルとしながらこちらに訴えてくる。
「ノエル、邪魔なんてことはないよ。愛ちゃんとは話すことが沢山あるから、そうなると夜通し話すことになるし、向こうの世界についての話になるだろう。ノエルにとってつまらないし、五月蝿くて眠れないんじゃないかと思ってさ。」
「パパのお話なら、ノエルどんなことでも聞きたいです。でも、そう言う理由でしたら、100年以上会えていなかった愛さんにお譲りしますね。パパ、愛さん、お休みなさい。」
そう言ってノエルはパタパタと、扉と愛ちゃんの隙間からチルの部屋に飛んで行った。
「さっ、愛ちゃん寒いだろうから中に入って。」
僕は愛ちゃんを部屋に招き入れた。愛ちゃんは、寝巻きは寝巻きなのだが、ネグリジェとか庶民が普段使うタイプの寝巻きではなく、羽織るタイプのガウンを着ていた。
「これで周りの目は気にしなくていいわね。リュウ君とても愛たかったわ。正直もう地球にも日本にも帰れないと思っていたわ。だから、お父さんやお母さん、リュウ君にも会えないと思っていたの。」
愛ちゃんが涙ぐみながら抱きついてくる。
僕たちは、ベッドに座りながら二人が生きて出逢えてたことを抱き合って噛み締めていた。
「大変だったね。ごめんね。100年も一人でこの世界で生活させて。愛ちゃんがいると分かって入れば、危険を省みることなく、超特急で助けに来たのに。」
「リュウ君がそう言ってくれて嬉しいわ。でも危険を省みるなんてやめてね。ここは日本と違って簡単に命がなくなる世界だもの。私は無事、健康で元気なリュウ君と会えただけで凄く嬉しいわ。」
そう言って、目を瞑って、唇をこちらに向けてきた。
んっ、これはキスしろと言うことですか?
恋愛経験の少ない僕には、男女の距離が理解出来ずにいた。




