表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
負けヒロインは助けたい! ~勝ちヒロインの王女が婚約破棄の危機!? 私が『魔導具』を駆使して救ってみせます!~  作者: あかつき セキ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
39/43

70~71  祈る夜明け(前編)


    70



 白い息を吐きながら、ライールが船底のところへナイフを突き立て、底を抜こうとしていた。


 防寒着を着てあると言っても、冬用の徹底した物ではないから、彼はもう少し着込んでくれば良かったと後悔した。


 底を抜いたことによる事故で、さらなる後悔を加速させる可能性もあるが、その前に、上から人の大声が聞こえた。


 そちらの方向を向くと、誰かが落ちていくのが見えた。見た目からして男性であり、動きがないので死体だろう。エリカでは無いが、無事なのか怪しくなってきた……


 風の音に混じって、上から早く閉めろとか、色々と混乱しているような怒号がしてくる。

 ライールは早く底を抜いて侵入しないと、自分もあの男のように落ちていくことになると考え、とにかくナイフを力いっぱいに突き立てた。


 すると、塗装で見えていなかった継ぎ()ぎ部分の境目を貫いた。こうなったら後は簡単。境目に沿って、たくさんの穴を作っていくだけである。


 四角形の、継ぎ接ぎに使ってあるトタンみたいな材質の板に、穴を連ねていく。


 手を突っ込んで引き()がせるくらいになったから、片側を引っ張ってやった。すると、四隅の方からバリバリと剥がれて、あるところで風圧に耐えられず、勝手に剥がれていった。被膜が鋼製であることを忘れるくらいに、ヒラヒラと布切れみたいに落ちていく。


 船底の方へ視線を戻すと、体が通るくらいの四角い穴ができていた。


 穴の先にはまだ天井みたいな底が見えるが、これは木製だからやりやすい。しかも、先程やってきた男達の声の位置から察するに、出入り口がある廊下辺りにでるだろうと予測できた。


 普通なら見張りがいるから不運なところだが、今は空中。見張りを立てておく意味が無いから、きっと誰もいないはずである。


 もちろん、機関室の底とかガスの入った気嚢(きのう)がある真下の可能性だとか、不安材料はあるけれど、何も知らないライールだからこそ、その不安材料は頭に無かった。だから彼は、目的に向かって真っ直ぐ進むことができた。


 ――揺れが少し大きくなってきている。


 穴へ入るには、立ちあがる必要があった。しかも命綱である鈎縄の縄を、足首から外さないといけない。


 怖くはあるが、仕方ない。

 ライールはナイフで縄をこそぎ切った。


 時宜(じぎ)を見計らって、体を伸ばすように立ち上がり、四角い穴へ上体を入れていく。そうして、両手で鋼鉄製の骨組みをつかみ、大引と根太(ねだ)らしき四角柱に乗っている、合板と合板の重なりの隙間(すきま)へ、ナイフの刃を通すように刺した。


 合板(ごうばん)の上に石膏(せっこう)があり、そこの上に床板があるようで、切り込みを入れるごとにポロポロと石膏(せっこう)の破片が落ちてきて、防塵眼鏡(ぼうじんめがね)が汚れる。


 ――幸い、硬い物はあいだに入っていないようである。これなら侵入できそうだ。


 充分に切り込みと穴を連ねた床板を、ライールが思いっきりナイフの柄で殴ると、ボコッと合板が浮き上がった。


 殴る回数を増やすごとに、床が大きく跳ねるように浮かびあがって、仕舞いにはボッキリと折れる形で、床に穴があいた。


 すぐにナイフを片付けて拳銃に持ちかえ、内部へと入っていくライール。


 彼は敵がおらず、自分がやはり出入り口付近の廊下に出たことを確認すると、近くにある扉へ寄って、静かに扉をあけて中を伺った。


 誰もいないようなので、一旦、この部屋へ入ろうと決心する。



    71



 飛行船は高度3000メートルを超えた。日本なら、富士山を越える高さである。


 揺れが中々収まらない上に、白息(しらいき)が出るほど寒く、結局は体調不良を訴える人間も出始めていた。が、本来ならもっと(ひど)くなっているとエリカは言って、お茶を(にご)していた。


 隣にいるアルメリアは動じず、機が訪れるのを待ち続けている。


「おい!」


 扉をあけるなり、男が見張り番に向けて言った。


「異常発生だ、ちょっと来てくれ!」

「見張りはどうする?」

「王女も後ろの方へ縄を(つな)げてあるんだろう? ムハク様が呼んでいるから、そっちを優先させるんだ!」

「分かった、すぐ行く」


 見張り番と一緒に、男が機関室から出た。


「エリカさん……!」


 アルメリアがすぐ言った。


「右の脚の上にナイフがあります、取ってください……!」


 アルメリアは右足だけ伸ばし、その爪先(つまさき)を外側へ向けた。

 エリカはアルメリアのスカートをたくしあげて、太ももへ手をつっ込む。


「どっち側?」

「右です、(また)に近いところに(つか)があるはず。(さや)から引き抜いてください」

「意外と大胆ね……」


 エリカが手の感触で柄を見つけると、アルメリアを傷付けないよう、自分の方へゆっくり引いた。


「よし……!」


 と言うなり、後ろで縛られているアルメリアの手首の縄に、刃を当ててこすり始めた。


「ジッとしててね……!」

「ナイフは私の手に持たせてください。ひとまず誤魔化せると思いますから……」

「もうちょっと……!」


 ――やった!


 エリカは縄を一本、切断することに成功した。

 こうなれば後は、アルメリアが自分で切ることも可能になるくらい、可動性があがる。

 エリカはアルメリアにナイフを渡し、


「一気に解かないようにね? 縄が緩んでバレるから」

「分かっています。――いつ脱出します?」

「そうね…… 何か予想外の事態が起こってるみたいだから、もうちょっとだけ様子を見て……」


 と言っているうちに、扉が開くから、エリカがすぐ前を向いて、装置を操作する振りをした。


「おいお前! 揺れが大きいぞ!」

「だから航行中に外への扉をあけるなって言ったじゃない。――何かあったの?」

「お前は操縦に専念していろ!」


 そう言って、彼は長身の銃を壁に立てかけて、代わりに長方形の木板を持ち出した。


「穴でもあいたのでしょうか?」

「でしょうね」と言って、エリカがアルメリアを見やった。「脱出するなら、今かも」

「じゃあ、これを」


 アルメリアが手の縄をパッと解き、ナイフの柄をエリカへ手渡した。


「扉を塞ぐ物を探します。足の縄を切っておいてください」

「あそこの戸棚、倒せるかも」


 エリカの視線を辿(たど)ったアルメリアが、扉の横にある背の高い、大きな棚のところへ走った。

 それを横から押してみると動かせたから、肩を当てて、踏ん張って、押し続けた。


 一方のエリカは、足の縄を解いている最中に、四隅にある大きなリュックサックみたいな背負い鞄を一つ、見つけた。これ見よがしに置かれてあったから、余計、目に付く。


 足が縄から解放され、腰に巻かれた縄も切って、犬のリール染みたものからも解放されたから、そのまま四隅へ向かった。


 ――間違いない、パラシュートだ。鞄の上にゴーグルもあるから間違いない。それに(ほこり)の具合から言っても、誰も動かしていないようだ。


「なるほど…… ここの内装もそのまま遺物ってワケね」

「エリカさん……!」


 アルメリアが棚を押しながら言った。


「手伝って、ください……!」

「ごめん、すぐ行く!」


 二人で棚を押し、扉の取っ手のところまで移動させた。


「あと、これも移動させておきましょうか」


 エリカが、下に置いてあるいくつかの木箱を指差して言った。これは連中が運んできたものだろう。所謂(いわゆる)、バラストみたいな物かもしれない。


 その木箱を二人で扉の前や棚の前に移動させ、扉があかないように補強した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ