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狼の鉤爪(1)

※5/8 誤字報告により修正しました。

前略、故郷にいるお母さんへ。

お元気でしょうか、貴女の娘シノアリスは今日も元気に肉をモリモリ食べています。

そういえば、いまこの国には何でも“放浪の錬金術士”が滞在しているそうです。いまだ、その方の魔道具に出会えていないのですが、同じ錬金術士として是非ともじっくりと堪能したいものです。



シノアリスは故郷にいる母親を思いながら便箋に言葉を綴らせていく。

そして便箋から顔をあげ、視線の先にある掲示板に向ければ1枚だけ貼られた紙が寂しくヒラヒラと揺れていた。

その光景に、シノアリスはぶわっと目尻に涙を溜めながら、たまらず叫んだ。


「なんで誰も依頼受けてくれないのぉおおおお~!」


おぎゃあぁぁぁ、と何処かで何かが生まれたような叫びが冒険者ギルドから響いたのだった。





***


いまシノアリスが見ている掲示板は、冒険者ギルドにある依頼掲示板。

此処には冒険者ギルドに申請することで護衛や討伐などの依頼書が貼られる仕組みとなっている。ここで冒険者たちは依頼書を見て、受注するかを決めるのだ。


「なんでぇぇえ、何がいけないのぉおお」


冒険者ギルドを出て、近くの広場にある長椅子に座り、エグエグと涙と鼻水を垂らす。いつも元気なアホ毛も心の心境を現すかのように萎れていた。

シノアリスの手に握られているのは1枚の護衛募集の依頼書だった。



------------------------------------------------

〇“スズの湖”までの護衛

スズの湖に生息している“キシジル草”を採取

するための護衛を募集。


達成報酬 金貨5枚


依頼主 錬金術士 シノアリス


------------------------------------------------



シノアリスが受注している依頼“毛生え薬”の作成にはどうしても、スズの湖に生息している“キシジル草”が必須。

だがスズの湖はナストリア王国から数十キロ離れた場所にある、スズの湖までに大きな森を抜けなければいけない。

まず“青の森”はナストリア国の東側にある巨大な森。この森には多くの魔物が生息し、中でも“ブルートレント”の生息地でもあった。

スズの湖はその森を抜けた先にある。



「は!そうか!!募集内容がいけないんだ!魅力を感じないから誰も手に取らないんだ!」


原因が分かった!と言わんばかりにシノアリスは、早速この危機的状況を脱出するためエクストラスキル【ヘルプ】を発動させる。

シノアリスのエクストラスキル【ヘルプ】はどんな質問にも答えてくれる。


「“検索”!えーっと、そうだ!“求人の書き方”“魅力的”これだ!!」


検索ワードを紡げば、瞬時に膨大な情報が現れる。

これで誰もが、この依頼書に惹かれ殺到するはず!わたし、大勝利なり!!とシノアリスは膨大な情報へと目を向け依頼書に書き足していった。






------------------------------------------------

〇“スズの湖”までの護衛

スズの湖に生息している“キシジル草”を採取

するための護衛を募集。


強い方大募集!

三食ご飯付き!あとオヤツもついてきます!!


達成報酬 金貨7枚大サービス!オマケもつけます!


依頼主 錬金術士 シノアリス


------------------------------------------------


依頼書を書き直し、提出してから3日後。

再び掲示板にはシノアリスの依頼書だけが取り残されていた。ヒュー、と寂しい風が依頼書とシノアリスだけを吹き抜ける。


チートだと思っていたエクストラスキル【ヘルプ】の力を駆使しても冒険者がシノアリスの依頼を誰も取ろうとしなかった。

貼り出されたその日、確かに冒険者達はシノアリスの依頼書を見た。そう見たのだが、すぐに別の依頼書を取り受付へと行ってしまう。

シノアリスからしても魅力溢れる依頼書だと言うのに、何故なのか。



取り残された依頼書を見ながら、シノアリスは深く深く肩を落とした。

“導きの灯”は既に昨日納品できた。

残るは“毛生え薬”のみ、此方は納期にまだ時間があると言えど、このままでは納期に間に合わない。最終手段はシノアリス1人で採取に向かうしかないのだが。

街を移動するときは辻馬車などを利用して移動していたが、それはちゃんと設備された道を移動していたから道に迷うこともなくたどり着けた。

だが、青の森は巨大な森。

冒険者達のような知識もなく踏み込んで、五体満足何もないとは言い切れない。


“命大事に!”それがシノアリスの鉄則。


ヘルプを使えばいけるかもしれない、だが未知の世界に踏み出すのはどうしても怖気づいてしまう。

シノアリスは、まだ15歳。

錬金術士として稼働できたのは13歳。まだ2年弱しか世界に足を踏み出していないシノアリスにとって未知の世界に足を踏みいれるのは簡単ではない。

安全と保障されていないことが此処まで怖いなんて。

まだまだ経験不足だ、とシノアリスは項垂れた。



「あら?そこにいるのはアリスちゃん?」

「!ロ、ロゼッタさぁああん!」


シノアリスを愛称で呼ぶ人間は限られている、またこの優しい慈愛に満ちた声はつい昨日聞いたばかりの声。商業ギルドの受付嬢ロゼッタの声だ。

即座に顔をあげれば、そこにはギルドの制服ではなくブルーのシャツに茶色のスカートを纏ったロゼッタ。

手には大きな紙袋を抱えており袋からパンや果物が覗いている、どうやら休日の買い出しに出ていた矢先に見知った姿を見て声をかけたようだ。


シノアリスは大好きなロゼッタの姿に駆け寄り、おぎゃぁあん!と何がが生まれたような鳴き声をあげながら涙目でロゼッタに縋った。


「ロゼッタさん!だれも護衛依頼を受けてくれないんです!どうしたらいいんですかぁあああ!」

「あらあら」






・掲示板

冒険者ギルドや商業ギルドにもある依頼掲示板。

まず受付で依頼を申請し、受理されれば受理印と一緒に張り出される。


***

最後までお読みいただきありがとうございます。

数ある小説の中からこの小説をお読み頂き、とても嬉しいです。

少しでも本作品を面白い、続きが気になると思って頂ければ嬉しいです(*'ω'*)

更新頻度はそこまで早くはありませんが、主人公ともども暖かく見守っていただけると嬉しいです。


作者も職活中にWEBサイトには大変お世話になりました。

だけど一番凄かったのは志望動機や自己PRを書くとき、作文などで賞を獲得した友人に添削してもらい応募したら予選を必ず通過したことです。



本日時間に余裕が出来たのでもう1話追加でUPします!

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