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ロロブスの収穫祭(2)

*少し過激な表現が含まれております、ご注意ください。


「そういえば、今日は収穫祭の最終日だそうですよ」


魔物の解体が終わり、少し早めの昼食をとることにしたシノアリスと暁。

以前シノアリスが渾身の思いで作り上げた改良・超絶安眠抱き枕を椅子の代わりとして座りながらサクサクの生地とチーズが包まれたパイを食べながら、まったりと過ごしていた。

だがふと思い出したようにシノアリスは暁に話しかけた。


「収穫祭?」

「あ、収穫祭とはですね」


奴隷商の地下で過ごしていた暁が知るはずもなく不思議そうな顔にシノアリスは得意げにロロブスの収穫祭について説明をした。

その内容を聞き、暁もそういえば中央通りになかったはずの組み木が立っていたことを思い出す。


「最終日はなにをするのでしょうね」


こういった祭りに参加することがなかったシノアリスは、楽しげに話す。

暁も故郷では祭りといえば酒を煽るくらいしか思い出がなかったので、ロロブスのお祭り騒ぎには圧倒された。だから暁も最終日がどんなものなのか気にはなる。


「なら早く採取を終わらせよう」

「そうですね!せっかくのお祭りですから」


やる気に満ちた顔でシノアリスと暁は昼食を平らげ、再び王冠キノコの採取を始めた。




「あ!王冠キノコみっけ!!」


上流の滝付近まで近づいてきたことで、ようやく目的の王冠キノコを見つけたシノアリス。

滝付近では大きな岩などが複数あり、苔の間などを調べればお目当ての王冠キノコが実っていた。


「小さいな」

「王冠キノコは、小さすぎて採取しづらいんですよ」


小指の半分くらいの大きさしかない王冠キノコ。

確かにこの大きさでは岩場の隙間でも中々見つけづらい。本ではこれほど小さいとは思わなかった暁も

見落とさないよう気を付けて岩場の隙間を探していく。


掌がいっぱいになりだしたので、そろそろ素材専用収納袋に納めようかとシノアリスは岩場を覗き込んでいた体を起こすが、不意に水の中に光る何かを見つける。

もしかして光源石だろうかと手を伸ばす。


「・・・・腕輪?」


だが出てきたのは光源石ではなく、微かな金色の輝きを放つ小さな腕輪だった。真ん中には宝石がいくつかついている。だが落ちた衝撃か川の流れで剝がれたのか数個ほど空洞になっていた。

誰かの落とし物だろうかとシノアリスは腕輪に名前が書いてないかと角度を変えながら覗き込む。


「・・・ロー、ラ?」


ようやく名前らしき文字を見つけるが、腕輪の劣化が激しすぎて文字がよく読めない。

落とし物をこのまま持ち帰るのは流石に良くないだろうが、このまま置いていくのもいけないような気がする。


「うーん、どうしよう」


とりあえず相棒である暁に相談してみようかと、シノアリスは屈んでいた体を起こそうとした。だが自身を覆う影と微かに漂う異臭に動きを止め、咄嗟に目の前の川の中に飛び込んだ。

飛び込む音に水しぶき、そして遅れて響く刃物を岩に叩きつけた鈍い音が反響する。


「シノアリス!?」


少し離れた先で王冠キノコを採取していた暁は、その音を拾い咄嗟にシノアリスがいた方を振り向くが彼女のいた場所には魔物が居た。

目についたのは苔まみれの鎧とそれを纏う人間ではなく骸骨の姿。

暁はその存在を知っていた。

いつしか奴隷の時に余興として闘技場で戦わされた時、物理攻撃が中々効かず苦戦を強いられた死霊(アンデッド)”系の魔物の一つ“骸骨怪物(スケルトン)”。


スケルトンは、振り下ろした剣を持ち上げ川の中にいるシノアリスに目掛けて振り下ろそうとしていた。

暁は瞬時に足を集中強化させ、一瞬で間合いを詰め骸骨騎士の背中に拳を叩きつける。

骸骨の体は簡単に吹っ飛んでしまい土壁にぶつかり骨や鎧が砕け散る、暁は慌てて川の中で座り込んでいるシノアリスの腕を引き寄せた。


「シノアリス!無事か?!」

「あ、はい。私は大丈夫です、さっきのは・・・」

骸骨怪物(スケルトン)だな」


シノアリスの顔はスケルトンという名の魔物に訝しげに顔を歪ませた。

カタ、と骨が軋む音に先ほどスケルトンが叩きつけられた土壁へと視線を向ければ、眼球のない空洞の穴から見える赤い光と視線が交わる。シノアリスはホルダーバッグを漁り、液体の入った小瓶を取り出した。


「アカツキさん、手を出してもらえます?」


シノアリスの要求に首を傾げながらも素直に両手を出す暁、シノアリスは数滴ほど液体を暁の手に振りかける。


「よし、これでニ~三発は死霊系の魔物にも物理は通じますよ」

「シノアリス、それは?」

「聖水です」


聖水は、光属性の強い水のため死霊系を倒すには最適の道具である。

教会の厳重な管理で入手しづらいが、妖精が住む泉も聖水と同じ効力を持っている。光属性が強いので魔を寄せ付けず、呪いを解き、退治することもできる優れものだ。


暁は、再び獲物を手にゆっくりとした進行で近づくスケルトンへ向き、集中強化は使用せずにそのままスケルトンの胸に拳を叩きつけた。

その瞬間、暁が拳を叩きつけた箇所から煙があがり、もがき苦しむ。やがて崩れ落ち眼球の空洞の中で光っていた明りが消え動かなくなる。


暁はひどく驚いた、たった数滴の聖水をかけただけなのに。

闘技場で何度も苦戦を強いられた思い出があるために少しだけ複雑な心境でもあるが、もう暁は奴隷ではない。

思考を切り替えるように緩く頭を振り、背後で複雑そうな顔をしていた暁を心配げに見つめるシノアリスの方を振り返った。


「シノアリス、スケルトンで採取できる素材はあるのか?」

「ちょっと待ってください」


実はシノアリスは死霊系の魔物から素材採取したことがない。

真夜中にしか採取できない素材を採取したことがあるのだが、死霊系は今回が初めてである。すぐにヘルプを呼び出し素材箇所を検索するシノアリス。


「えーっと、スケルトンは肋骨が素材となります」

「・・・肋骨」


暁はそっと動かくなったスケルトンを見下ろす。

さきほど暁が攻撃した場所は胸元付近。砕かれた鎧を除ければ素材の対象でもある肋骨は見事にバラバラになっていた。


「おぉう、見事にバラバラですね」

「す、まない」

「仕方ないですよ、私もアカツキさんも素材になる箇所を知らなかったんですから」


それに聖水の効果が此処まで凄いとも知らなかったのもある。

責めることも怒ることもないシノアリスに、暁はどうしてもまだ慣れなかった。


「それにしても、昼間にスケルトンが出るなんて不思議ですね」

「なにかおかしいのか?」

「死霊系は暗闇を好む魔物ばかりで、真夜中ならまだしも昼間から見かけるのは少ないです」

「・・・一度ロロブスに戻るか」

「そうですね」


あまりにも不可解な事ばかりなので、一度撤退する提案にシノアリスは即座に頷く。

採取した王冠キノコを仕舞い、川を下ろうと歩き出そうとした矢先に暁はシノアリスの腕を掴んだ。


「アカツキさん?」

「・・・囲まれている」

「うぇっ!?」


先ほどは王冠キノコを採取することに意識を集中していた所為で、気配察知できなかったが今は周囲を意識していた為、暁は自分たちを囲む気配に気づいた。

暁の言葉にシノアリスのアホ毛が跳ね上がり、即座に周囲を見渡せば林の影から微かに見える赤い光が此方を見つめている。

思わず身を引くシノアリスを暁は庇うように己の背に隠す。


するとガサリと茂みから姿を見せたのは大きな熊。

その正体は“ブラッディベアー”という魔物である、だが至る箇所が腐敗しているのか骨や内臓が剝き出しになっており、動く度に腐敗した肉や臓器がこぼれ落ちていく。

どうやら死霊として蘇ったようだ。


「おぉう、中々きつい絵面ですね」

「シノアリス、わざわざ見なくていい」

「とりあえずコレでも投げて威嚇して撤退しましょうか」

「それは?」


タプンと薄い膜につつまれた水袋を掲げるシノアリス。

それは先ほどの聖水を川の水で半分に薄めた物だという、水で薄めれば効果が薄まるが威嚇にはなるのではというシノアリスのアイディアだ。

シノアリスは試しにと薄めた聖水をブラッディベアーへ放り投げる。


「グルァアア!?」

「おぎゃぁああ!?」

「うぉぉおお!?」


バシャリ、と弧を描いてブラッディベアーの頭に当たった。

当たったのだが、薄め方が足りず聖水の成分が強かった所為なのかドロドロとブラッディベアーの頭部が溶けていく。

モザイク描写されてもおかしくないほどの見えてはいけない部分が丸見えになり、ブラッディベアーの絶叫とシノアリスと暁の絶叫が重なり合う。それを攻撃と受け取ったのか茂みから多くの腐乱死体である魔物たちが一斉に飛び出し、シノアリスを脇に抱え慌てて走り出す暁。


下流に向かえば、人を巻き込んでしまうと咄嗟に考えたのか暁は足を集中強化させ、壁を蹴り滝の壁を登っていく。

暁の腰に抱かれているシノアリスは必然的に下に視線が行き、威嚇し唸り声をあげる死霊化した魔物たちに半泣きになりつつあった。


滝の壁を登り切った暁は、シノアリスを地面に下ろして下を覗き込む。

魔物たちは二手に分かれ、一方は滝ノ下に留まり残りは暁達を追いかけるように迂回を初め、茂みの奥へ潜っていく。

これでは戻ろうにも戻れない、またいつまでも此処で待機しているわけには行かない。



「そこのお二人さん!!」

「「!?」」


突然背後から聞こえた声に暁は咄嗟にシノアリスを背に庇う。

だが、茂みから現れたのは配達員のマークが刻まれた帽子をかぶった若者だった。こっちだと手招きをする姿にシノアリスと暁は警戒する。


「はやく!あいつらがこっちに迫ってきている!」

「アカツキさん」

「・・・行こう、シノアリス」


若者の言葉の通り、信じられない速さで迫ってくる気配に気づいた暁。

シノアリスも暁の様子から魔物が追ってきているのだと気づいたのか暁と共に茂みの奥へ進む若者の後を追いかけた。


骸骨怪物(スケルトン)

死霊系の魔物の一つ。

全身が骨のため物理攻撃で砕いても骨が集まり再生する。倒す手段は聖水を使用する事や光魔法や光属性での攻撃のみ。

暗闇や怨念の籠った場所を好むので、明るい場所には基本出てこない。


・聖水

清められた神聖な水。

光属性の強い水のため死霊系を倒すには最適の道具である。

教会の厳重な管理で入手しづらいが、妖精が住む泉も聖水と同じ効力を持っている。光属性が強いので魔を寄せ付けず、呪いを解き、退治することもできる優れもの。


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最後までお読みいただきありがとうございます。

数ある小説の中からこの小説をお読み頂き、とても嬉しいです。

少しでも本作品を面白い、続きが気になると思って頂ければブクマやコメントを頂けると大変活力となります(*'ω'*)

更新頻度はそこまで早くはありませんが、主人公ともども暖かく見守っていただけると嬉しいです。


【更新予告】

来週の更新はお休みします。

次回更新は8日です。

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