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シノアリスの知る狭い世界

※5/7 誤字報告により修正しました。

※5/8 誤字報告により修正しました。

とある宿屋の一室にて、軽装状態のシノアリスは腕を組み唸りながらエクストラスキル【ヘルプ】のボードを見ていた。

そこには、今現在シノアリスが取得しているスキルの項目が並んでいる。


----------------------------------


【スキル】

・鑑定 Lv.MAX

・薬神の眼 

・錬金術 Lv.MAX

・創作 Lv.1

生活魔法(クリーン) Lv.7


【エクストラスキル】

ヘルプ Lv.2


----------------------------------


シノアリスはボードにむけて「薬神の眼とは」と言葉を発する。

すると瞬時に薬神の眼への解説がシノアリスの目の前に現れた。


【薬神の眼】

【この世界における薬神の加護を受けた者がもつ眼】

【病気や呪い、状態異常を解析、分析する。】

【使用回数や所有者の魔力によって見れる内容が違います】

【取得方法は以下2つ。】

【① 薬神の加護を受けし者】

【② 鑑定のレベルが高く、病人を鑑定し続けたとき極稀に取得できる(成功率0.001%)】


カシスの呪いの箇所を探し出すためには、どうしても薬神の眼というスキルが必要だった。

2つ目の取得方法は、地球の言葉を借りれば“バグ”を利用するもの。

なので成功率はほぼないに等しいが賭けた結果、シノアリスはバグでスキルを取得できた。


「改めてみると凄いスキルだわ、これ」


あのとき、いかに無我夢中だったのかようやく実感する。





そもそもスキルとエクストラスキルの違いは取得する条件である。

エクストラスキルは人が生まれた瞬間授かる特殊な力、そしてスキルはその成長により獲得できる能力である。

ゲームの世界ではステータスを唱えれば体力とかスキルとか自分で確認できる展開だが、この世界ではスキルを見ることが出来るのは聖職者しか取得できない【スキル鑑定】をもつ神官のみ。


勿論本来であればシノアリスも、自身のスキルなど見れないはずだ。

なのにヘルプのボードに【スキル一覧】という項目があったので、選択した途端上記のスキル一覧が現れたのだ。

なぜ自身のスキルだけは確認できるようになったのか、もしかするとエクストラスキルのレベルが上がったことと関係しているのかもしれない。



鑑定にも様々と種類がある。

本来、鑑定は物の真偽や状態を見るものであって、人のステータスを見るものではない。そして病気や呪いなども見れない。

鑑定にもどれほど種類があるのか、シノアリスはヘルプに問う。


【鑑定の種類】

【鑑定関連のスキルは以下 5つ存在します】

【①鑑定(物の真偽、状態を見る/取得方法:簡易)】

【②スキル鑑定(対象が取得しているスキルを見る/取得方法:難)】

【③薬神の眼(病気や呪い、状態異常を解析、分析する/取得方法:特殊条件)】

【④妖精の眼(対象のステータス全てを見れる/取得方法:特殊条件)】

【⑤神眼(森羅万象、未来、過去全てを見通せる/取得方法:***)】


「おぉう、なんか凄いスキルの存在を知ってしまった」


1番や2番はシノアリスでも知っているが、3番以降のスキルの存在はシノアリスは今まで生きていた中で知らなかった。

もしかしたら一番大きな国の図書館などに行けば、そういったスキルが記された書物を読むことも可能かもしれないが、まだナストリアを移動する気はないので頭の片隅に残しておく。



「そういえば魔法もあんまり詳しく見てなかった」


魔法の属性は全部で7種類存在する。

・火属性 ・水属性 ・土属性

・風属性 ・金属性 ・光属性 ・闇属性


生活魔法は上記の属性の中で光属性に該当する。

理由も調べれば教えてくれるだろうが、専門用語などが出てくるので魔法に関しては迂闊に調べようとは思えない。

さて、シノアリスが唯一取得している魔法が生活魔法。

生活魔法はきっと地球にすむ人ならだれでも察せる魔法である。


生活魔法(クリーン)

【対象の物を綺麗にする、ただし呪いなどを浄化する作用はない/取得方法:簡易】


これは日々お風呂に入れない洗濯ができないシノアリスにとって必要不可欠な魔法だ。

取得方法も至って簡単。

生活魔法は魔力調整ができれば簡単に取得できる。冒険者や旅人であれば魔力調整は簡単に行えるので、ある程度の人は大体持っている。

ふと狼の鉤爪はだれも生活魔法を取得していないとのことだったので、不向きの種族もいるのだろう。


この世界には錬金術だけでなく魔法にも溢れている。

シノアリスにも魔力はあるし、調整もできるので魔法の取得も難しくはないだろうが彼女が目指すのは放浪の錬金術士を超えた錬金術士なので、魔法の取得に関しても頭の片隅に置いていく。




「あ、そういえば“創作”ってスキル手に入れたんだっけ」


スキルにも進化など存在するのかと、まだまだシノアリスの知らないことは沢山ある。

だけど彼女が困ったときに常に助けてくれるヘルプのおかげで生きてきたので、知らないことに対して危機感はあまり抱いていない。



【創作】

【錬金術の上位スキル】

【調合するとき“追撃付与(アタック)”、“補助付与(アシスト)”を付与できる】


「なんですと!?」


創作の説明に思わずシノアリスはボードにかじりついた。

錬金術で調合できる魔道具は、その1つの効果だけ。だが例えるのなら御蔵行である“電光石”の攻撃力はとてつもなく高いが威力の調整が出来ない。

シノアリスは唾を飲み込み、“補助付与”の項目に触れる。


補助付与(アシスト)

【1つのアイテムに対しスキル付与が出来る。】

【なお付与するスキルや付与する量により成功率が変動します。】


「お、おぉぉぉぉおお!」


まさに先ほどシノアリスが例えた“電光石”に、この創作スキルを使用すれば“補助付与”により調整をすることが出来、新たな魔道具作成ができるという事だ。


「なにこの神チートスキルは!」


その内容に思わずシノアリスは慄くが、瞬時にあることを思いついた。


「は!これを使えば一閃で素材が解体できる包丁とか作れるのでは!」


シノアリスの脳内では、魔物入手、魔物をスキル付与した包丁で解体、屋台のおっちゃんに極上の肉を焼いてもらう、食べる、幸せという構図が浮かび上がる。


「て、天才!やはり私は天才美少女錬金術士だよ!」


自画自賛しながらシノアリスは己の発想に震えていた。

もし此処にシノアリスの知人がいれば誰もが突っ込んでいただろう。そんなアホな発想をできるのは世界でお前だけだろうな、と。


妄想でハイテンションになったシノアリスは早速作ろうとしたが、グジャリと何かを潰したことに気付く。

潰したなにかは毛生え薬の依頼書だった。


それを見た瞬間、シノアリスの興奮も一気に冷め落ち着きを取り戻した。

納期があと14日と迫っている。

そろそろ本格的に作成をしなくてはいけないのだが、狼の鉤爪との出会いによりシノアリスは如何に無知であったかを思い知らされた。


今まで気にもしていなかった世界が、いろんなものが気になり始めていた。

スキルも、そうだ。

狼の鉤爪との出会いがなければ、薬神の眼など無縁だったはず。

新たに取得した創作の内容すら確認せず、いつもの錬金術で薬を調合するだけに終わっていただろう。


「これもマリブさん達と冒険したからなんだろうなぁ」


確かにシノアリスは様々な街を移動してきた。

だけど、誰かと深く関わることをしていなかった。いまだから分かる。どれだけ勿体ない時間を過ごしたのかを。

この国でロゼッタに出会った。

極上の肉を焼いてくれるおっちゃんに出会った。

無知なシノアリスに対し、知識を教え、冒険の大変さや深い傷跡を教えてくれた狼の鉤爪と旅をした。


「楽しかったなぁ」


誰かと冒険がこんなにも楽しかったなんて、シノアリスは知らなかった。

でもシノアリスは冒険者ではなく錬金術士だ。

パーティーを探したところで、足手纏いになるお荷物を受け入れてくれる冒険者などいないだろう。

彼らは常に命のやり取りをしている。

毛生え薬やら草を採取し、調合し道具を作成している錬金術士からすれば遠い世界だ。


だけどあの時間は、シノアリスにとって未知で楽しい世界だった。



「だめだめ!私には私にしか出来ない仕事があるんだから!」


羨ましいと思ってもシノアリスは冒険者にはなれない。

ならそれはそれで仕方ない。

シノアリスは未練がましい自分を叱咤するように両手で頬を叩きつける。思いのほか力が強すぎて頬が赤く腫れてしまうが、気分を切り替えるように調合用の道具を準備する。



錬金術といえば、アトリエで調合するイメージが強いが間違いではない。

だがシノアリスは色んな街をみるため、アトリエは持たないようにしている。

道具も容量制限のない収納が付与されているホルダーバッグに入るから、何処でも調合ができるのだ。

取り出した簡易鍋やすり鉢などを並べていき、シノアリスは素材保管用の麻袋から毛生え薬の材料を並べていく。

シノアリスは、手順を指示してもらうためエクストラスキルを発動させる。



「スキル発動、ヘルプ」



世界はシノアリスが想像する以上に広いだろう。


いつの日か現れるだろうか。

シノアリスと共に旅をしてくれる最高の相棒に。

















「おっちゃーん!!おっちゃぁあん!この包丁で美味しい串焼き作ってえぇ!」

「馬鹿野郎!そんな鈍らな包丁は要らん!物を寄越すなら焦げにくい前掛け持ってこぉぉい!」



その日、1人の女の子が130cmはあるバカデカい包丁を持って市場を走る姿が多数目撃された。


また何処かの魔法施設で、窓という窓から毛髪だと思われる物体が生き物のように飛び生えてきた事件が起きた。

切っても切っても再生する脅威の再生力から、魔術協会が新たに生み出した生き物ではないかと噂され、以後“魔法施設破壊事件”と名付けられた。

余談だが、翌日魔術塔の責任者がイメージチェンジをしたのか豪快なアフロをこれでもかと見せつけていたらしい。



・バカデカい包丁

巨大な牛刀包丁だと思ってください。

シノアリス特製により【解体】【清潔】【血抜き】【鮮度】【切れ味抜群】のスキルが付与されてます。

素材や食用となる魔物を一閃すれば即座に解体されます。

この後、おっちゃんに怒られたので御蔵行きの一品となる。


・魔法施設破壊事件

突如、魔術研究塔の責任者の部屋をぶち破り現れた毛髪。

一瞬にして塔の中を毛髪が満たし、窓をぶち破った事件。原因は不明。

切っても切っても再生する脅威の再生力から、魔術協会が新たに生み出した生き物ではないかと噂され事件へと発展した。

また、翌日魔術塔の責任者がイメージチェンジをしたのか豪快なアフロをこれでもかと見せつけてくるようになったそうだ。



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最後までお読みいただきありがとうございます。

数ある小説の中からこの小説をお読み頂き、とても嬉しいです。

少しでも本作品を面白い、続きが気になると思って頂ければブクマやコメントを頂けると大変活力となります(*'ω'*)

更新頻度はそこまで早くはありませんが、主人公ともども暖かく見守っていただけると嬉しいです。




私は海外に行ったことがありません。

行っては見たいのですが、言葉の壁があまりにも分厚いので生涯日本から出られないと思います(´Д⊂ヽ


*更新予告*

少し時間に余裕が出来ましたので、9日まで連続投稿します( *´艸`)

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― 新着の感想 ―
[良い点] おっちゃんとの掛け合い おっちゃんかなり好きなんですけどいずれ町を離れたらお別れするのが悲しいです。 屋台のおっちゃん、何ものなんでしょうね。気になる気持ちと謎のままでいて欲しい気持ちが同…
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