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証明するアルナ



「並べているものはどれも本物です! 宝石だって確認する術はあります! 模様が描かれた紙の上に置いて透かせば、本物なら透かして見えないという特徴があります!」

「それが正しい見分け方という確証もないからなぁ――そうだ」


 混血種の一人が並べている宝石の中から一つを手に取る。


「これは確かヒスイっていう硬い宝石だろ? これを叩いて割れなければ本物だっていう証拠になるんじゃないか?」

「た、叩く⁉」


 名案を思い付いた、と言わんばかりの顔でレインの顔を見る混血種。

 確かにヒスイは割れにくい宝石として有名だ。叩くパワーによるだろうが、恐らく大丈夫。ただ、割れないからといって傷が付かないわけではない。


 自分が本物だけ取り扱っているということも証明したいが、それ以上に商品を傷物にしたくないという気持ちの方が強かった。


「どうなんだ? 自信がないのか?」

「そ、それは…………」


 レインは葛藤する。これは商人としてどちらを取るのが正しいのか。

 返事まで時間が経てば経つほど怪しまれるため、早くどちらかの答えを出さないといけないし、もしくは叩く以外の確認方法を代替案として提示しないといけない。


 レインとしては代替案を出す方に持って行きたいが、すぐには良さそうなものが思いつかず……。

 汗を流しながら沈黙の時間が過ぎていく。


「はぁ……仕方ない。ちょっと予定とは違うけど――」


 そんな困っているレインを見兼ねてか。

 アルナはフードをパサリと取り、自分の顔を混血種たちに見せた。

 これ以上レインが困る姿は見たくないし、レインの商品が傷付くというのもアルナからしたら避けたい。


「ちょ、アルナ!」


 ぷにっとしていて、どこか抜けた表情で――一見無害そうな風貌。だが、混血種からしてみればどんな神よりも尊い姿だ。

 ここにいる誰もが、彼女を魔王アルナであると気付いた。それはもう感覚的なもの。遺伝子にさえ刻まれているかもしれない。


 彼女が混血種たちにとっての恩人であり英雄なのだ。

 周囲の混血種たちが全員口を大きく開けて見事なリアクションを見せる。


「ア、アルナ様⁉」

「なんてこと……⁉ ご挨拶が遅れましたことをお詫びいたします!」

「お会いできて光栄です!」


 さっきまで普通にしていた混血種たちは、アルナの登場によって全員が膝を付き頭も下げる。

 人間界だと国王の前でもこんな風にはならない。しかも、恐怖で従えているというわけでもなさそうだ。全員がアルナに対して敬意と忠義を抱いていることがレインにも分かった。


「頭を上げていいよ」

「はっ!」


 アルナの一言で混血種たちの頭が一気に上がる。


「レインの言っていることは本当だから。偽物はありえない。それはアルナが証明する」

「は、はい! 大変失礼いたしました!」


 上がった混血種たちの頭は、再びレインに向けて下げられる。

 レインとしては誤解が解けるだけでもう十分なのだが……ここまでしてもらう必要は無い。逆にこちらまで謝ってしまいそうだ。

 アルナの気持ちは嬉しいが、これはこれでちょっとやりにくいと思うのは気のせいだろうか。


「まさか全員がレインのことを知らないとは思わなかった」

「不思議なことじゃないよ。俺も基本的に中心部での仕事が多かったし、こういう閉鎖的な場所は誰かの紹介とかがない限り見つけるのは難しいからな」

「今後もこんなことがあったら困るよね」


 アルナは自分にうんうんと納得すると、ポケットの中から何かを取り出す。

 そして、それをレインに手渡した。


「レイン、今度からはこのバッジを付けておくといい」

「ん? 何だこれは?」

「――⁉ ア、アルナ様! よろしいのですか⁉」


 レインが受け取ったのは、鬼(?)をモチーフにした絵が描かれたバッジ。

 それを見るや否や、混血種たちが一気にざわついた。

 通常ならありえないことが起こった――そう言わんばかりの反応だ。


「問題ない。どうせいつかは渡すつもりだったから」

「さ、左様ですか……」

「アルナ、このバッジって何なんだ? そんなに凄い物なのか?」


 アルナと混血種たちの中で会話が進んでいくが、当のレインは蚊帳の外。

 話を聞くに、このバッジが混血種たちを混乱させているようだが、どんな意味があるのかは分からない。


 ただ、とんでもない価値があるというのは感覚で理解できる。

 どうしても知りたがるレインに、アルナはゆっくりと答えた。


「それは魔王印のバッジ。鬼が描かれているのは一番等級が高いもの。これを付けておけば、レインが疑われるようなことはない」


「分かりやすく言うと魔王公認……っていうことか」

「そんなレベルじゃないですよ! そのバッジを所有しているのは世界で二人! 貴方が三人目です!」


「……え」


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