混血種との出会い
「混血種が集落を作って生きてるのか? 俺が知ってる限りだと、普通に暮らしてる混血種ばかりだったけど」
「受け入れられる混血種もいれば、受け入れられない混血種もいるの。ここで暮らしてるのは受け入れられなかった混血種たち」
「受け入れられなかったって……どうして受け入れられなかったんだ?」
「あのね――人間の血が流れてるの」
「あ」
レインはハッと気付かされる。混血というのは、エルフやドワーフなど魔界の種族のみで行われるものだと勝手に思っていた。
言われてみれば、人間だって一つの立派な種族だ。
人間という存在が疎まれる魔界において、人間の血が少しでも混ざっている者がいれば同じように疎まれるに違いない。
だからこそ、ここに住む混血種たちはこうして隠れるようにして生きているのだ。
「なるほどな。そういう背景があったのか」
「うん。混血種は複雑だから」
アルナは「でもでも」と人差し指を立てる。
「混血種は良い人が多いし、美味しい食べ物もたくさんある。質のいいアイテムも作れる。レインの商品も売れると思うし、買いたい商品もたくさんあるはず」
「そんなに凄い場所なのに、誰も関わろうとしないのか?」
「そうなんだよねー。もったいないというか、穴場というか」
呆れたようにため息をつくアルナ。
確かに、素晴らしい技術があるのに少数の者たちにしか伝わらないというのは惜しい。
レインはこの辺りでアルナが自分を連れてきた理由を察していた。
きっとアルナは、この地域に住む混血種に外の世界を見せてあげたいのであろう。そう考えたら、外の世界の物を多く売買している自分は適役だ。レインにとっても、普通だったら世に出ない逸品に触れられるというメリットがある。
とは言っても、実際にどんな物があるのか見てみないと分からない。
レインはアルナにエスコートされるまま、地域の奥へと進んで行く。
「そろそろ混血種が住んでるとこ。レイン、ローブある?」
「え? あぁ、あるぞ」
アルナはレインからローブを受け取ると、フードで顔を隠すようにしてそれを身にまとった。
ちょっとサイズが大きかったようで、袖から手が出ていないし裾も地面に着いてしまいそうだ。
どうしてアルナは正体を隠すようなことをしたのだろうか。
「混血種たちにアルナの存在がバレたらマズいのか?」
「ちょっと騒ぎになって面倒くさい。あと、混血種たちがレインにどんな反応をするか見てみたい。アルナが近くに居たら、純粋な反応が見られないでしょ?」
アルナなりの考えがあるようで、そのために身を隠す必要があるとのこと。
それに、混血種が見ず知らずの者に対してどんな反応をするのか興味があるようだ。確かに混血種を外の世界と繋げるためには、知っておかないといけない情報ではある。
「あ、いたいた。あそこが広場だった気がする。外に出てる混血種も多いね」
「意外と普通の暮らしをしてるんだな」
アルナは混血種たちがいる広場を指差す。綺麗に地面が石畳で整えられており、真ん中には小さめの噴水が置かれている。
子どもから大人まで、想像とは違って外に出ている者が多い。よく日光があたる場所だからだろうか。何の前提知識もなければ、魔界でよく見る光景とあまり見分けられない。
ざっと目に入ったのは、人間の血が混ざったことで爪や牙が小さくなった男の獣人、耳が丸くなっている女のエルフなど。
レインは少し緊張しながらその広場に近付いて行く。こういった場所で仕事をするのは久しぶりだ。
「――! おい、誰か来たぞ。武器は持っていないが油断するな」
「誰? 人間? 人間がどうしてここに?」
「隣にいる小さいのは何だ? 見るからに怪しそうだけど……」




