危機?
「おはよう、ティアラ」
「おはよう、レイン。もうこの生活に慣れたか?」
「うん。意外と慣れるものなんだな」
レインがティアラの巣での生活を始めて数日。
特に困るようなことはなく、逆に楽しいと思えるような生活をしていた。
食事は主にティアラが捕った魔獣の肉であるが、人間界で食べるものとそこまで変わりはない。
調理法は豪快に丸焼きしかないため味に変化はないが、それでも飽きることなく生活を続けられた。
「我も誰かと共に暮らすのは久しぶりだからどうしようかと思っておったが……何も問題はなかったのだ」
「……ティアラって今まで一人で暮らしてたんだよな」
「まあな。別に寂しいと感じたことはないぞ」
ティアラは昔を思い出すような顔をする。
レインがティアラと出会って数年は経つが、その時から彼女はずっと一人だった。
誰と関わることもなく、レインが初めて顔を合わせた時はかなり警戒されたことを覚えている。
今でこそ身寄りのないレインを一時的に保護してくれるまでの仲になったが、これはかなり特別なケースだろう。
どうしてここまで信頼関係を築けたのか、自分でもイマイチ分かってはいない。
段々と取引を重ねていくうちに、ティアラがやけにレインを気に入ってくれたというのが真実だ。
「でも、一人だと不便じゃなかったのか?」
「……正直不便だったのだ。だからレインには感謝しているのだぞ」
「俺もティアラには感謝してるよ。レアな魔獣の素材をいっぱい取引してくれるから」
「あんなものいくらでもくれてやるのだ。我が持ってても宝の持ち腐れだからな」
これまでわざわざ伝えるようなことはしていなかった感謝。
ティアラからしたら、レインはゴミに等しい魔獣の食えない部分を宝に変えてくれる存在である。
レインからしたら、ティアラはなかなか手に入らない魔獣の希少な素材を提供してくれる唯一無二の存在だ。
ここまでお互いを必要としている者は珍しい。
「あ――レインは人間界から追放されてしまったが、商人としての活動はできるのか?」
「もちろん。むしろ、取引を制限する法がなくなったからやりやすいくらいだよ」
「そうか! それは怪我の功名だな! これからも頼むぞ!」
ティアラはレインの言葉を聞いて、朝からとびっきりの笑顔を見せた。
どうやら、レインの商人としての活動を心配していたらしい。
しかしそれも杞憂に終わる。
むしろ、レインが追放されたことによって、ティアラからしたら最高とも言える状況になっていた。
これからは、国によって制限されていた物まで手に入れることができるのだ。
今からでもワクワクとした気持ちになる。
「さて、朗報を聞いたところで我は狩りに向かうのだ。」
「そうか。じゃあ俺はここで待ってるよ」
「ああ、留守番は任せた――ん?」
「ティアラ? どうしたんだ?」
ティアラが巣から出ようとした瞬間。
耳をピクリと動かして、その動きを止めた。
レインは何が起こったのか分からない。
「……今日は狩りに行けなさそうだな」
「ど、どうしてだ?」
「外を見てみろ」
レインはティアラに促されるままに外を見る。
そこには。
巣を完璧に取り囲んでいる数百人の人間たちがいたのだった。
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