一旦の別れ
「結局、店にあるキャンディは全部買ってもらいましたね」
「あの男たち、やけに金を持ってたな。ボンボンなのかも」
「情けないというか何というか……だな」
騒動終わりの帰り道。
レインたちは、リュックにパンパンに詰まったキャンディを持ちながら呟く。
店にある分全部というだけあって、かなり重い荷物だ。
これだけあれば、アルナも当分困ることはないだろう。
不幸中の幸いと言うべきか。
……微妙なところである。
「でもティアラたちが暴れなくて良かったよ。もし暴れてたら目も当てられなかったから」
「そうであろう? かーなーり我慢したからな」
「感謝してるよ。アルナにもな」
「アルナはレインに感謝してる。キャンディおいしい」
リュックの中からキャンディを取り出し、口の中に入れながらアルナは答える。
贅沢に十数個のまとめ食い。
まるでリスのように頬が膨らんでいた。
アルナを面倒な出来事に巻き込んだ罪悪感がレインにもあったが、このアルナを見ているともうそんな気持ちは感じなくなる。
何とも幸せそうな表情だ。
「で、レインはこれからどうするのだ? どこに住むか決めているのか?」
「……何も考えてなかった。どこかあればいいんだけど」
「レ、レインさんがよろしければ私の――」
「レインはアルナの城を自由に使っていいよ」
「い、いいのか!? アルナ」
「うん。空き部屋がいっぱいあるからね」
レインが悩んでいるところを、アルナがまるでついでかのように救う。
レインはその優しさに悩むことなく食いついた。
願ってもない話。
悩む要素は一つもない。
「良かったではないか、レイン」
「うん。助かったよ、アルナ」
「いいのいいの」
「その……良かったですね、レインさん」
「ありがとう、リリア。……そういえば、さっき何か言おうとしてなかったか?」
「い、いえいえ! 何でもないです!」
リリアはブンブンと首を振る。
少しだけ顔が赤くなって、何か恥ずかしそうだ。
あまり触れない方がいいのだろうか。
そう考えたレインは、そうかと無理やり納得しておく。
「我はここで巣に帰ろうと思っているのだが、大丈夫そうか?」
「で、では私もティアラさんと一緒に館に帰った方が良さそうですね」
「そうか、二人ともそっちの方が速そうだな。俺は大丈夫だよ」
「まあ、どうせ魔界祭ですぐ会うことになるであろうし、大袈裟な気もするがな」
「確かに……ティアラもリリアも来るんだっけ?」
「私は参加する予定です……!」
魔界祭。
正確な日程は知らないが、やはりそこまで離れていないらしい。
またこの三人が集まるという事実。
今からでも楽しみだ。
じゃあすぐに会うことになりそうだな――と。
レインは一旦のバイバイを伝えたのだった。




