宣戦布告
「ここが我の巣だ。なかなか大きいだろ?」
「そうだな……こんなに大きな巣を作る必要があるのか?」
「うむ。一流は巣にこだわるものなのだ」
レインが降り立ったのは、山を綺麗にくり抜いて作ったティアラの巣。
竜姫の巣というだけあって、その大きさは目を見張るものがある。
ティアラとは何回も取引をしたことがあるレインだが、巣に招かれるのは初めての経験だった。
これはかなり信頼されていないとありえないことであるため、レインも少し嬉しさを感じてしまう。
恐らく、竜姫の巣に入った初めての人間になるだろう。
「で、話を聞かせてもらうぞ。どうしてレインはあそこにいたのだ?」
「……俺は、国王から売国者として追放されたんだ。だからあそこに捨てられるはずだった」
「売国者? そんなことをしておったのか?」
「いや、してないよ。商人として色んな種族と関わってたら、俺が人間界の情報を流したって勘違いしたみたいだ」
ふむ――と、ティアラは頷く。
それはいつも見るティアラの表情ではない。
レインの話を真剣に聞いてくれていることが分かった。
「抵抗はしたのか?」
「もちろんしたさ。でも、聞いてもらえることはなかった」
思い出す国王の顔。
少しは収まっていたものの、この恨みは当分消えることはない。
「我、なんかイライラしてきたぞ」
「俺もだよ。ここまで理不尽な思いをしたのは初めてだ」
「え――ということは、レインは帰る場所がないのではないか?」
「まあ……そういうことになる」
ティアラは冷静にレインの立たされている状況を整理する。
そして、一言でレインの問題を表した。
レインにはもう家がない。
いや、それどころか、居場所さえ人間界にない。
たとえ人間界に戻ったとしても、レインの扱いは最低レベルのものになるはずだ。
もしかすると、殺されてしまう可能性だってある。
人間界には戻れないと言わざるを得ないであろう。
ならばどこで生きていくのかと言う話になるが……それについて悩んでいると、ティアラから救いの一言が出る。
「ならばレイン。しばらくは我の巣で暮らすといい」
「え!? そんな迷惑をかけるわけには……」
「何を言うのだ。これまで我は何回も世話になったではないか。お前がいなかったら、我はこんな良い生活はできておらんぞ」
ティアラは軽くレインの背中を叩く。
ティアラが伝えたいのはレインへの感謝。
もしもレインがいなければ、貧しいとは言わずとも今のような生活はできていない。
ティアラが狩った魔獣の毛皮など、普通なら役に立たないものがレインによって服や嗜好品に変わるのだ。
様々な種族と関わりを持つレインの存在は、ティアラにとって必要不可欠と言える。
「つべこべ言わずに頷いておくのだ。分かったか?」
「う、うん」
「それでよい――あ」
「?」
そうだ――と
思い出したかのようにティアラは振り向く。
そしてどこかに向けて手をかざした。
「どうかしたのか?」
「《業火球》」
「うわっ!?」
ティアラが放ったのは、強力な炎をまとった魔法。
凄まじい威力だ。
あの魔法が直撃したら、間違いなくただでは済まない。
「ど、どうしたんだよ! それに、今の魔法はどこに向かって……」
「気にするな、ただの腹いせだ。ちなみに人間界に放っておいたぞ」
「な、なんで人間界に……?」
「国王とやらに灸を据えたくてな。宣戦布告という意味でもある」
ティアラはニヤニヤとしながらレインを見た。
……きっとこれは彼女なりの優しさなのだろう。
何と反応したらいいのか分からないが、とりあえずレインはありがとうと言っておくのだった。
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