女王ミント
「おお、レイン! 久しぶりですね」
「お久しぶりです、ミント女王」
レインが扉を開けた先には、エルフの国の女王――ミントがいた。
エルフの中でも特に美しい顔立ち。
一目見たら、ミントの顔を忘れることはできないだろう。
ティアラもリリアもアルナも、ほほうとミントの顔に見惚れている。
「レインが何も言わず訪れるなんて、珍しいこともあるのですね。いつもなら、この国に来る時は絶対に連絡してくださっていたのに」
「それには色んな理由があるんですが……気にしないでください」
「理由……? それは聞かない方が良いのでしょうか」
「そういうことではないけど、話せば長くなるというか……」
ミントから始まる他愛のない会話。
レインが唐突に訪れたというのに、ミントが取り乱している様子はない。
訪問者がレインと分かるや否や、すぐにここまで案内させてくれた。
どのような生活をすれば、ここまで冷静になれるのだろうか。
後ろの三人にも見習ってほしいくらいだ。
「そうですか。それならまた時間がある時に聞くとしましょう。今日はガールフレンドも一緒みたいですし」
「ガ、ガールフレンド!?」
「あれ? 違うのですか?」
「違いますから! 変なこと言わないでください……」
ミントは急にとんでもないことを言い出す。
こんなからかうようなセリフを、まさかミントが言うとは思ってもいなかった。
完全に油断していたため、レインもかなりオーバーなリアクションになってしまう。
後ろの三人はどんな反応をしているのか。
……怖くて振り向くことができない。
「レインさん、もう少し意識してくれてもいいのに」
「腰抜けだな」
「うんうん。レイン腰抜け」
……三人の声が聞こえないでもないが、レインは聞こえなかったフリをしておく。
「ところで、今日は何の用があって来たのですか?」
「別に急な用事じゃないですよ。いつもの飴を買いにきたんです」
「ああ、なるほど。それなら引き留めてしまいましたね。レインの顔が見たかったのです。許してください」
「いえいえ。俺も会えて嬉しいです」
いつもの飴。
それは、レインがアルナにあげているものだ。
アルナの大好物であり、せっかくエルフの国に来たのだから補充しておきたい。
きっとアルナも喜ぶであろう。
「後ろの人たちもすみませんね」
「よい。我が許してやろう」
「――ウフフ、ありがとうございます」
ティアラの強気な態度。
レインはヒヤヒヤしていたが、ミントは何だか嬉しそうだ。
やはり彼女たちのことはよく分からない。
「じゃあ行ってきますね」
と、レインたちはミントの部屋を出ることになる。




