エルフの国
「あ、レインさん! おはようございます!」
「おはようなのだ、レイン」
「おはよう……二人とも」
レインが準備を終えて部屋を出ると、アルナの言っていた通りティアラとリリアが待機していた。
二人とも朝にはそこまで強くないタイプのはずだが、眠そうにしている気配は全くない。
それどころか、これからのことを楽しみにしている雰囲気さえ感じる。
「一応聞いておくけど、二人とも本当に付いてくるのか?」
「ダメ……でしたか?」
「いや、そういうわけじゃないんだけどさ。珍しいなぁって」
レインは改めて二人に確認する。
が、やはり結果は変わらずにティアラが頷くだけだった。
急にこんなことを言い出すなんて、何があったのだろうか。
気まぐれだと言われればそこまでだが、ちょっとだけ興味が湧いてしまう。
「ティアラとかリリアは、すぐに帰ると思ってたよ」
「おいおい、レイン。我がそんなに水臭い奴だと思っていたのか?」
「そうですよ、レインさん。ひどいです」
「ご、ごめん」
何故か責められる立場になってしまったレイン。
悪いことを言った自覚はないが、とりあえず面倒くさいことになる前に謝っておく。
ティアラを不機嫌にさせた後は特に大変だ。
なかなか機嫌を直してもらえず、服の端っこを燃やす嫌がらせをされた経験もある。
リリアに関しては、そもそも不機嫌になった姿を見たことがない。
だからこそ、どうなってしまうかの予想ができずに恐怖だった。
「そうそう。分かればいいのだ」
「レインさんなら分かってくれるって思っていました」
「う、うん」
分かってくれた――というよりは、強引に分からせたと言うべきなのだが、レインはその言葉を何とか飲み込んだ。
「そういえば、レインがどこに行くのかは聞いておらんかったな」
「確かにそうですね。レインさん、どこに行くつもりなんですか?」
「エルフの国だよ。別に変なところじゃないから安心してくれ」
レインが選択したのは、慣れ親しんだエルフの国。
人間界にいた時から、よく取り引きをしている間柄だ。
取引できる物が特に珍しいというわけではないが、何より危険性が圧倒的に低い。
エルフは侵入者を強く拒む種族である。
人間たちがレインを待ち伏せしていることもないだろう。
「エルフの国……行くのは初めてです」
「ふむ。面白そうだな」
「気に入ってくれたなら何よりだよ。ただ、暴れたりはしないようにな」
レインはしっかりと注意をすると。
アルナの元へ、二人と一緒に向かうことになった。




