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三人の期待


「大きなお風呂ですねー。流石魔王城です」

「……はぁ。今日は疲れたのだ」

「二人ともゆっくり休むべき」


 魔王城――大浴場。


 そこには、体を休めている魔王、竜姫、吸血姫の姿があった。

 この三人が同じ場所で入浴するなど、一体誰が予想できただろうか。


 普通ならありえない光景に、魔王城に仕えている魔族の方がドキドキしている。


「そういえば、昼はいきなり攻撃してごめんね」

「ん? ああ、腕のことか」


 アルナは、思い出したかのように昼の出来事を謝った。

 まさかこのタイミングで謝られると思っていなかったティアラは、少し意外そうな表情をしている。


 そもそも、ティアラ自身でさえ忘れかけていたことだ。

 特にダメージも残っていないため、正直に言うとどうでもいい。


 魔王の力が垣間見えた、貴重な体験とすら言える。


「あんなの別に構わぬぞ。避けない我の方が悪いからな」

「でも、急に攻撃したのはアルナだよ?」

「そんなこと関係ない。油断している我に非がある」


 ティアラの独特な考え方。

 アルナを庇っているというわけではなく、本当に避けなかった自分が悪いと思っているらしい。


 あまりにも野性的過ぎる思考回路である。


 それをアルナが完全に理解している様子はないが、気にしていないということは伝わっているようだ。


「まあでも、お互いに距離は縮まりましたよね……!」

「そうかもしれぬな」

「うん」


 と、リリアが慌ててまとめたところで。

 アルナはティアラにもたれかかる。


「これからアルナたちが集まることはなさそうだしね」

「いや、そうとは言い切れないかもしれぬぞ」


「え、ほんと?」

「レインのこともあるからな。この先のことは予想できぬ」


 ティアラはレインの存在を口にした。


 確かに――と、リリアも頷いている。

 レインが現れたことによって、自分たちの行動は大きく変わった。


 無視していたはずの人間界にも、今や完全に敵対してしまっている。

 それもたった一人の人間が原因で、だ。


 魔王まで動かせる男なら、今後何をしようとしてもおかしくない。


「その……何というか、楽しみですね」

「確かに退屈はせぬな」

「アルナもこっちの方がいいなー」


 しかし。

 三人の反応は、どれも肯定的なものだ。


 レインを悪く言うどころか、面白い存在として捉えている。


 退屈なことが嫌い――この気持ちは、種族を超えて三人に共通していた。


 これからレインが何をするのか。

 レインは知らない間に三人分の期待を背負うことになる。



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