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魔王城前



「ぜえ……はぁ……着いたぞ」

「ありがとう、ティアラ……大丈夫か?」


 魔王城前。

 ティアラはくたびれたように着地する。


 今日何回目か分からない飛行だ。

 運ぶ人数が多いことに関しては全く問題ない。

 だが、今回は飛行する距離が桁外れだった。


 普段ティアラがここまで空を飛ぶことはまずありえない。

 久しぶりに息を切らしたティアラの姿を見る。


「もー疲れたのだ! 羽が千切れるかと思ったぞ!」

「流石に飛び過ぎたな……今日はゆっくり休もう。アルナ、もし良かったらなんだけど――」


「今日は泊まっていいよ」

「い、いいのか?」

「もちろん。使ってない部屋はいくらでもある」


 レインのお願いを、アルナは迷うことなく了承した。


 かなり疲弊しているティアラをかわいそうだと思ったのか。

 それともレインの頼み事だから特別に引き受けてくれるのか。


 どちらかは分からないが、とてもありがたい展開だ。


「レインが魔王城に泊まるのは初めてだっけ?」

「そうだな。俺の取引は基本的に日帰りだったから」


「あれ? でも、レインは人間界を追放されたから拠点はなくなった。これからどうするの?」

「うっ……まだ何も決まってないよ」


 アルナの痛いところをつく質問。

 レインは、まだ何とか寝床をリリアやティアラに貸してもらうという形で暮らしているが、その生活がいつまで続けられるかは分からない。


 拠点は商人にとって必要不可欠なものだ。

 拠点がなければ、取引も何もかもが制限されてしまう。


 旅をしながら商人をしていくとしても、レイン一人だといつか魔獣に襲われてしまうだろう。


「もしかして、このままだとレインは商人じゃいられなくなる?」


「それは流石に大丈夫だと思うけど……」

「レインが商人じゃなくなったら困る。レインしかできない仕事なのに」


 何故かレイン以上に危機感を覚えるアルナ。

 レインが商人として活動できなくなると、かなり困ったことになるらしい。


 その理由は、レインにも何となく予想できた。


「確かにレインさん以外の商人なんて聞いたことがありませんね」

「魔族は商人なんてやらんからの。頭も使いそうだし」

「様々な種族を相手にしますから、危険といえば危険ですからね」


 人間界の外――魔界には、そもそも商人という存在がいないのだ。


 何かを取引したいというなら、自分からその種族のところに赴く必要がある。

 レインはその面倒くさい仕事を全て請け負ってくれる存在だった。


 レインがいない生活なんて考えられない。

 そう言っても過言ではないだろう。

 

「レイン、あとでお話しよ」

「あぁ……分かった」


 アルナの熱気を感じたところで。

 レインたちは魔王城の中へと招かれることになるのだった。




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