眷属召喚
「おい! アイツはレインだ!」
「なんだと!? あの売国者め!」
「アイツを捕まえろ! 首を国王様の元まで持って帰るんだ!」
兵士たちは、レインの姿を見た瞬間に騒ぎ出す。
ここにいる全員が存在を知っている男だ。
まだ生きているという話は聞いていたが、まさかこんなところで出会うとは。
それだけでなく、彼が吸血鬼の騒ぎに関係していることまで判明してしまった。
レインを見逃すことなんてできない。
ドラゴンやアルナは化け物じみた強さであるが、レイン自体ならただの一般人と同レベルの強さである。
せめてレインだけでも殺さなければ。
兵士たちは武器を再び強く握り直す。
「レインさん……何だかマズそうじゃないですか?」
「よく分からないけど狙われてる気がする……」
「レインさんは、ずっとティアラさんの背中にいた方がいいかもしれません」
人間たちの気迫を感じたリリアは、少しでもレインを守るように引っ付く。
人間程度の攻撃であれば、リリアなら容易く反応できる……が。
それでも、レインが完璧に安全であると断言はできない。
ティアラもそれを察しているのか、人間たちの元に降り立とうとはしなかった。
『我はここから動けぬぞ。吸血姫、お前はどうする?』
「私は……」
「リリア、俺のことなら心配しなくていいよ。アルナをフォローしてやってくれ」
「で、でも、レインさんは大丈夫なんですか……!?」
心配そうなリリアに、レインはうんと軽く頷く。
このまま自分のためにリリアを引き留めておくわけにはいかない。
アルナが手助けを求めているという様子はないが、量が量であるだけに全員の相手は厳しいだろう。
人間を強制的に眷属にできるリリアが加われば、かなりアルナの負担も減るはずだ。
『行ってこい、吸血姫。レインは我に任せておくのだ』
「ティアラさん……分かりました! 行ってきます!」
リリアはレインを見ると、覚悟を決めたように立ち上がる。
ティアラの強さを信頼しているからこそできる行動だ。
『早く終わらせてくるのだぞ』
「は、はい!」
そう言って。
リリアは、さっきのアルナと同じようにティアラの背から飛び降りた。
もう既にアルナの手によってかなり崩壊し始めている状態。
そこに追い打ちをかけるのがリリアの仕事だ。
「《眷属召喚》」
これから。
人間たちは地獄のような光景を見ることになる。




