対立?
「ティ、ティアラ!? 大丈夫か!?」
レインはティアラの吹き飛ばされた腕を見て駆け寄る。
想定していた中でも最悪といえる事態が起こってしまった。
まさかアルナがこんなにも簡単に攻撃をしてしまうなんて。
もっとティアラにも注意するよう言っておくべきだったかもしれない。
焦燥感に罪悪感。
とにかく自分のせいであるというのは確かだ。
「心配するな。この程度の傷なら問題ない」
「ほ、本当か……?」
「本当なのだ。見ていろ」
ティアラはそう言うと、吹き飛ばされた方の腕を再生させる。
そして――まるで何事もなかったかのようにピクピクと動かしていた。
驚くべき再生能力だ。
内臓などならこうも簡単にはいかないだろうが、腕や足ならここまで簡単に回復できるらしい。
さすが竜姫。
……と、感心している場合ではない。
「レイン……その人だれ。アルナの知らない人」
「我は竜姫ティアラだ。初めましてだな」
「竜姫……聞いたことがある」
アルナの正面にティアラが立つ。
その距離は、自己紹介というにはあまりにも近い。
何かよくないことが起ころうとしている。
それだけは、レインにも何となく理解できた。
「小娘の姿で惑わされていたが、実力は確かなようだな。さっきの攻撃――目で追えなかったのだ」
「そっちこそ。馬鹿みたいな再生能力」
ティアラとアルナ。
身長差こそあるが、二人は同レベルの覇気を出しながら睨み合う。
今にも張り裂けてしまいそうな緊張感。
何かきっかけがあれば弾けてしまうだろう。
「ティ、ティアラ? アルナ? まさか変なこと考えてないよな……?」
「黙っていろ、レイン」
「レイン、ちょっと静かにしてて」
レインは口をポカンと開けながら黙らされる。
これはもうどうしようもできない。
アルナは退屈だった日常の中でちょうどいい相手が現れ。
ティアラはさっき腕を吹き飛ばされたことによって。
お互いが臨戦態勢になっていた。
自分の腕が吹き飛ばされたりしたら、普通は弱気になりそうなものだが、ティアラは全くの逆だ。
むしろアルナの強さを見て興奮している。
「レ、レインさん……止めた方がいいんじゃ」
「俺も止めたいけど……何でこんなことに」
レインは自分の不幸を嘆く。
アルナに協力してもらうためここに来たというのに、どうして今目の前で戦いが起ころうとしているのか。
どこで自分たちは間違えてしまったのだろう、と。
今さらながらに思う。
「竜姫と魔王――力比べといこうではないか」
「分かった」
こうして。
レインの望みとは裏腹に。
竜姫対魔王の勝負が始まってしまったのだった。




