国王の苦悩
「昨日の吸血鬼による死亡者は一万人となっております」
「多いな……一体どういうことだ? どうして吸血鬼が一斉に暴れ始めたのだ?」
「分かりません……ある日を境に犠牲者が急増し始めました」
国王は頭を悩ませる。
朝から従者に見せつけられたのは、吸血鬼によって殺された人間の数とその地域。
本来なら見たくもないデータであるが、そんなことも言っていられないため半ば強制的に確認させられていた。
どういうわけか、ここ最近は吸血鬼による被害が多い。
……いや、多すぎる。
従者の言った通り、この事件はある日を境に爆発したように始まった。
一体何が起こったというのか。
どれだけ頭を捻ろうとも、その答えには辿り着けなさそうだ。
嫌な話ばかりを聞かされ続ける毎日。
心がまだ病んでいないだけ、自分を褒めてあげたい。
今は竜姫とレインを探さないといけないのに、そんな余裕もなくなってしまった。
「どうするべきか……せめて何か情報があればいいのだが」
心当たりが何もない中、どうにか対策を練らなければならない辛さ。
国王はついつい悪態をつく。
何かきっかけとなる出来事があったのは間違いないのであろうが、肝心のきっかけというものが分からない。
偶然? 気まぐれ? それとも報復?
予想だけなら出てくるものの、どれも確信できるほどのものではなかった。
「国王様、とにかく今はこの事件を止めるべきだと思います。何か行動を始めないと、手遅れになってしまうような気がしてなりません」
「……そうだな。まずはこの事件の原因を調べることにしよう」
国王は悩みに悩みぬいた末――調査を始めることを命じた。
ここでいう調査は、吸血鬼たちにどのような変化があったのかを探るもの。
まずはここを解明しなくては話にならない。
「かしこまりました……が、どこの地域を調査いたしましょう」
「吸血鬼による被害が出ている地域は?」
「……全体としか言えません。満遍なく、まるで割り振っているかのように被害地域が均等に分かれているのです」
はぁ……と国王のため息。
情報を聞けば聞くほど頭が混乱してくる。
それは、自分をかく乱するために騒ぎを起こしているのではないかと思えるほど。
もはやイライラした気持ちになってきた。
「それじゃあ、最初に被害が出た地域はどこだ?」
「それは――この地域で間違いありません」
「ならそこから調査を始めろ。いいな?」
「はっ!」
投げやり気味な国王の命令に。
従者は強く返事をして部屋を駆け出す。
国王はその背中を見ながら……もう一度深いため息をついたのだった。
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