作戦の失敗
「――国王様! 大変です!」
「どうした。何が起こった?」
国王の部屋に、従者がまたもや飛び込んでくる。
大急ぎでの報告であり、流石に国王も持っているペンを置いた。
まずは従者を叱る前に、その内容を聞くしかない。
従者の様子を見ると、良いニュースではなく間違いなく悪いニュースであろう。
この時点で頭が痛く感じてくる。
「竜姫討伐の作戦が失敗いたしました! 帰ってきた兵も数人程度しかいません!」
「なっ!? どういうことだ!」
「全員が竜姫に殺されてしまいました! 我々が想定していたより、竜姫はもっと強大な力を持っていたようです!」
やはりその内容もまた、国王が望んでいたものではない。
作戦の成功を確信していたはずが、現実はその真逆の大失敗に終わってしまった。
竜姫討伐に十分な兵力を用意した気でいたが、どうやら自分たちは見くびり過ぎていたらしい。
過去のデータだと、竜姫は数百人の人間を相手に一人で勝てるような力は持っていなかったはず。
大人しくしていた間に力を蓄えていたのか。
それとも、データを収取した過去に本気を出していなかっただけなのか。
国王は慎重に考える。
「……生き残りの兵がいると言ったな?」
「は、はい!」
「その者たちからよく話を聞きだすんだ。貴重な情報だから一言一句漏らすな」
「そ、そうでした! 生き残りの兵たちから信じられない話を聞きました!」
国王の指示を受けて、従者は思い出したかのように視線を向ける。
国王は、その従者に話を続けるよう促した。
「竜姫の隣に、レインがいたようです!」
「な、なんだと!? レインがか!?」
信じられない話――確かに従者はそう言った。
信じられないというのは、竜姫の強さのことだろうか。
そんなことを考えていた国王だが、従者の口から出てきたのは本当に信じられない話だ。
レイン。
数日前に、売国者として国を追放した商人の名前だ。
今は国の中でも有名人になっている。
そんな人間がどうして竜姫の隣に――。
いや、もっと先に考えるべきことはある。
「レイン……決定的な証拠だな。まさかここまで露骨に化け物の味方をするとは。追放ではなく処刑しておくべきであったか……」
国王は過去の自分に言うように呟く。
売国の罪でレインを裁いたが、その時は処刑よりも軽い永久追放に処した。
永久追放も魔獣の住む危険な場所に放り出すため、実質的には処刑と同じと言われているが、その考えはどうやら甘かったようだ。
まさか竜姫と手を組むことになるとは。
あの時、確実にレインは殺しておくべきだった。
過去のことはどうしようもできないが、やはり悔しく感じてしまう。
「こうなればレインの存在を無視することはできん。指名手配を出せ。懸賞金もかける。今すぐにだ!」
「か、かしこまりました!」
従者はすぐに走り出す。
この後。
レインは人間の国全てに顔写真を張り出され、指名手配をされることになった。
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