ティアラの危惧
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「レイン、終わったぞ! 我の力を見たか!」
「嫌と言うほど見せられたよ……ティアラってあんなに強かったんだな」
「クク、もっと褒めるのだ。我はなかなか他人に戦いを見せることはしないからな」
ティアラは自慢げに鼻を高くしながら胸を張る。
レインはただ、その強さを称えることしかできなかった。
思えば、レインがティアラの戦闘を見たのは初めてだ。
竜姫という名前は聞いていたものの、ティアラの明るい女の子な側面だけしか知らない。
魔獣をよく狩っているから強いのは知っていたが……まさかここまでとは。
「まさか本当に追い返せるなんて。ティアラのおかげだよ」
「うむ。あの人間たちの様子だと、我が負けたらレインも間違いなく殺されていただろうな」
「そうだな。まさか俺の名前があそこまで広まっていたなんて」
レインはホッとしながら兵たちの罵倒を思い出す。
少し顔を見られただけで、自分がレインだとバレてしまっていた。
あの様子だと、国の中だともっと広まっているだろう。
(……まあ当然か)
レインの中にあったのは諦めの気持ち。
売国者として晒されたのなら、あそこまで広まるのも無理はない。
売国者は人々から忌避される対象にある。
自分が生まれた国を敵に売った最低なヤツ。
そう彼らには認識されているのだから、
「それよりレイン。何人か兵を殺し損ねてしまったが、追いかけなくても良かったのかのぉ」
「ん? 別にそこまでする必要はないんじゃないか? 別に追い払うだけでもいいと思うけど……あー、でもまた攻めてくるかもしれないのか」
「いやいや。そういうことではない」
「え? ならどういう――」
ティアラは違う違うと訂正する。
どうやら、ティアラが被る不利益の話をしているわけではないようだ。
レインはティアラの口から出てくる言葉を待つ。
「我が言いたいのは、レインの顔を見た兵たちをそのまま国に帰してもいいのか――ということだ」
「それがどうかしたのか?」
「そうだな……レインが生きているだけではなく、我の味方をしている状況を見られたわけであろう?」
「うん――あ!」
「それを国王に報告されたとしたら、レインは指名手配なり懸賞金をかけられるなりすると思うのだが」
レインは、ティアラの冷静な言葉に嫌な汗を流す。
確かにティアラの言う通り、レインの存在は国王に報告されるはずだ。
そうなれば、国王が黙っていないのは火を見るよりも明らかであった。
「困ったな……」
「我が守ってやるから安心しろ……と言いたいのだが、レインだけを狙われたら守り切れる自信はないな」
「そうだよな……どうしよう」
レインは頭を悩ませる。
ティアラの存在が頼もしいのは間違いない。
人間が来ても確実に勝利することができる。
しかし、ティアラがレインを守り切れるかどうかは話が別だ。
暗殺、レインを一人狙い、四方から同時に魔法攻撃――などなど。
レインだけを殺す方法ならいくらでもあった。
「はぁ……仕方ないな。レイン、お前にはまだ我以外の知り合いがいるだろう? ここから近いのはどこだ?」
「えっと……ここからだと吸血姫の館が一番近いかも」
「そいつの元に連れて行ってやるのだ。乗れ」
「い、いいのか!?」
「借りを返してやるのだ。特別だぞ?」
ティアラはレインの手を取る。
そして、空を飛びながらドラゴンの姿にへと変身した。
こうして、レインは人生で二回目の空を経験することになるのだった。
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