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第6話 成長〜自由な幼女・マリア〜

更新遅くなり、申し訳ない!


マリアはスクスク成長中です!


どうぞ、お楽しみください!

( ✧Д✧) カッ

 

 最近ずっと考えていることがある。


 性同一性障害は、男の身体に女の心、若しくはその逆だろ?


 それによって、自分の意思で性転換を果たしたりして、男になったり女になったりする人が居るんだよね?


 じゃあさ、『前世は男だったけど転生したら何故か女の子に産まれてて、でも前世の男の人格が入っている』場合は、どうすればいいのだろう?


 その本質は、男と女の、一体どちらなのだろう?


 ぶっちゃけ、今まさにあたし……俺がその状態なんだが!


 俺はあたしで、あたしは俺で。


 一体どう振る舞えばいいのだろうか。


 名実共に女の子に産まれたんだから、内面も女の子になるべきなのだろうか。


 そんなことを、ずっと考えているんだ。


 お気に入りのクマさんのぬいぐるみを抱きながら。


「マリア〜、ご飯ですよぉ〜♪」


「はーい、ママ〜♪」


 今世の母親であるジョアーナが、開け放たれた扉の向こうから声を響かせる。


 クマさんのぬいぐるみを抱っこして、そちらへと向かう。


 奴隷商の娘、マリア3歳。


 趣味は運動と、絵本を読むことと、おままごと。


 特技は肩たたきと足踏みマッサージ。


 好きな物はキレイな色のリボンとクマさんのぬいぐるみ。


 嫌いな物は脚が8本以上ある蟲とパパのおヒゲ。


 最近のお気に入りは、家で働いている奴隷さん達に色んなお話を聞くことです!


「って、マジで女の子になってるじゃん!?」


 今日もセルフツッコミが冴えわたる。


 そんなあたし……もうあたしでいいや。


 あたしは、3歳になった。


 自分が奴隷商人の家族の娘と知ったあの日から、無理に外に出せとは、もう言っていない。


 父親のスティーブや母親のジョアーナは、奴隷を扱う商売柄他人の恨みを買いやすいから、いつも屋敷の中に居たんだ。


 実際にスティーブは、街を歩いていて襲われたこともあったらしい。


 いつかの食事中に聴いた話だったが、借金のせいで奴隷になった娘の家族に、路地に連れ込まれて逆恨みに暴行されたそうだ。


 命に別状は無かったものの、大怪我を負ったスティーブは、それから常に、外に出る時は戦闘奴隷を護衛に付けているらしい。


 そして買い出しや郵便などの簡単な用事は、使用人として教育した奴隷に行かせるようになったんだとか。


 そんな話聞かされたら、もう怖くてお外に行けません!


 その日の晩には、奴隷となった娘と引き換えに誘拐されて、身の毛もよだつようなあんなことやこんなことをされる、恐ろしい夢を見てしまい、おねしょした。


 おのれ、スティーブめ……!

 いたいけな幼女にする話じゃないだろうが!


 そんなことを考えて歩いていたら、気付くとダイニングルームに到着していた。


 あたしはクマさんのぬいぐるみ――クマどんを、専用の椅子に座らせてから、ジョアーナの居るキッチンへと向かう。


 足台をズリズリと押し進め水瓶の傍に置くと、よじ登って瓶の蓋を開け、柄杓で水を1杯掬う。


 蓋を戻したら、柄杓の水を零さないように、勝手口近くの水捨て用のタライの上で、手を洗った。

 残った水でうがいもちゃんとする。


「あら、マリア。お手手洗ってたの? 偉いわねぇ!」


 あたしの動きに気付いたジョアーナが、そう言って褒めてくれる。


 ふっ。

 食事前の手洗いうがいは、常識ですよ、奥さん。


 ジョアーナが渡してくれた布巾で手を拭う。


「ママ、なんかお手伝い、ある?」


 褒められて良い気になったあたしは、更に良いところを見せようと、手伝いを進言する。


「そうねぇ。それじゃあ、このボウルを運んでちょうだい。」


 そう言って渡されたのは、木製のボウル。

 ボウルと言うか、お椀と深皿の中間くらいかな?


 どうやら陶器の類いは流行っていないらしく、お皿も、スプーンもフォークも、大体木製だ。


 金属製の、所謂シルバーも有るんだけど、基本的には来客の接待用で普段使いはしていないね。


 多分あたしの安全に気を遣っているんだろうけど、ナイフを必要とするステーキなどの料理は、予め切り分けられているし。


 ジョアーナからボウルを受け取ったあたしは、割る心配はないとはいえ、落とさないように慎重にダイニングへと運んだ。


 身体が小さいから運び難いんだよ!


「ママ! できたよー!」


 任務完了を大声で報告すると、台所から返事が届く。


「ありがとーマリア! それじゃあ座っててね!」


 はーい。


 あたしはウキウキしながら、自分の席――クマどんの隣りへとよじ登って、ちょこんと座る。


 おっとりした印象の強いジョアーナだけど、料理は絶品だ。


 聞いた話では、使用人奴隷への料理の教育も、彼女がしているらしい。


 使用人を雇うってことは貴族とか、大商人とかの金持ちでしょ?


 その使用人に教えるってことは、つまりジョアーナの料理は、そんな人達に通用するほどの物ってことなのだ。


 我が母親ながらなんとも素晴らしい!


 美味しいは正義!


 そしてあどけなく可愛い顔してるくせに、たわわに実った2つの凶器も、また正義!


 おっと、思考が逸れた。


「マリアー? ごめーん、パパ呼んできてくれるー? 声掛けるの忘れちゃったー!」


 慌てて邪念を振り払っていたところに、ジョアーナから任務が通達された。


「はーい! クマどん、いい子で待っててね!」


 あたしは同席者(クマどん)に声を掛けてから、椅子から飛び降りて、廊下へと向かう。


 やれやれ。

 声を掛け忘れるなんて、ママはおっちょこちょいだなぁ。


 パパさんよ。

 普段からママへの愛の囁きが、足りてないんじゃあないかね?


 そんな風にニヤけつつ、パタパタと廊下を走って行く。


 勝手知ったるなんとやら。

 いや、自分の家だけど。


 パパ――スティーブの書斎へと辿り着く。


 中身は大人で、身体もだいぶ成長したと言っても、まだ3歳の女の子。


 力は弱いため、結構強めに扉を叩く。


『誰だい?』


 扉越しでくぐもっているけど、中からスティーブの声で、誰何される。


「パパー! あたしー! 開けてー!」


『マリア!? 今行くよー!!』


 この反応の速さよ。


 声を掛けて5秒もしない間に、ガチャリと扉が内側に開く。


「マリア! 僕の天使様! どうしたんだい!?」


 急に動いたせいで多少息を乱しながら、あたしを見下ろすスティーブ。


「ママがご飯だから呼んできてって。お仕事終わり? 大丈夫?」


 気遣いの出来る幼女、マリアです。


 いやこの男、なかなかの仕事人間だからね。

 仕事の邪魔して不機嫌になられても困るのよ。


 実際ジョアーナは、声を掛けて不機嫌になられたことが有るらしいし。


 そういうとこだぞ、スティーブ。


 仕事も大事だけど、家族も大事にしないと。

 そんなだから、後回しにされた挙句に、声を掛け忘れられるんだよ?


「そっかあ! わざわざ呼びに来てくれたんだねえ! ありがとねー♪ マリアのお呼びなら、仕事なんて後回しに決まってるさー!」


 ヒョイっと、不意打ちで抱き上げられる。


 まあ、もう慣れたよ。

 この男、事ある毎に抱き上げてくるからね。


「マリアは優しい良い子だなぁー!!」


 はいはい……って、テメコラ! 髭はやめろって何度言えば理解するんだよっ!? 猿かテメェは!?


「お髭嫌ぁっ! 放して! 降りるーっ!!」


 コノヤロウ……!

 ちゃんと髭剃りやがれ畜生め!


「ああっ、つい!? ごめんよマリア!! もうしない! もうしないからあ!!」


 うぬぬぬ……!

 ホントだな? ホントにだな!?


 まったく。

 ならば抱いていてよろしい!


「ごめんよぉ! ご機嫌直して、天使様!」


 やれやれ。


 いつもの事と言えばいつもの事なので、大人しく抱かれたまま、ダイニングへと戻った。








 食事を終えると、あたしはいつもここへ来る。


 奴隷達の部屋。


 みんな同じ首枷を着けて、簡単なシャツとズボンに身を包んでいる。


 一応奴隷であり商品でもあるから、逃亡防止のために格子付きの扉で閉じ込められているけど、簡単ながらベッドも有るし、食事だってちゃんと与えられている。


 掃除もそこそこされているし、そもそも奴隷のイメージである虐げられている人っていうのは、この屋敷には居ない。


 家が取り扱っているのは、基本的には借金奴隷達。


 家族や自分の借金で首が回らなくなって、最後の手段として奴隷となる人達だ。


 そんな人達の借金を肩代わりして払い、奴隷という労働力として、家で仕事を斡旋する。


 賃金は積立てられて、借金分の働きを熟したら解放されるっていう仕組み。


 勿論、斡旋された仕事場で目を掛けられれば、そのまま継続して雇ってもらえたり、チャンスもそれなりに有る。


 奴隷には、他にも労働奴隷や犯罪奴隷、傷病奴隷なんてのも居る。


 労働奴隷は、他所の土地から移住とかで移ってきて、職を持たない人が奴隷として仕事を斡旋してもらうもの。

 借金が無いだけで、基本的な仕組みは借金奴隷と似ている。


 犯罪奴隷は、文字通り犯罪を侵した悪人が、奴隷身分に落とされるもの。

 だいたいは過酷な肉体労働をさせられて、期限が有ればそれだけ勤めれば解放されるけど、終身刑なんかだと死ぬまで扱き使われる。

 前世で言うと、受刑者の労役だね。


 傷病奴隷は、戦争で大怪我を負ったり、大病を患ったりして、普通の仕事に就けなくて、どうしようもなくなった人がなる。

 大きな工場とかに送られて、簡単な流れ作業とかの人工になることが多い。

 でも、他と違って欠陥があるから、なかなか買い手がつかない。


 最初は奴隷商人の娘なんて、バッドエンドしか見えない!って絶望してたんだ。


 あたしやラノベみたいに、イケイケな勇者とかが転移とか転生してきて、『奴隷商人なんてクズだー!!』って排除されたらどうしよう!? って、気が気じゃなかった。


 けど、ちゃんと仕組みを聞いてみたら、そんなに酷い物ではなかった。


 少なくとも、家は奴隷達を不当に扱ったりしていないし、そもそも奴隷は法律で守られている。


 奴隷を所持する人は、その奴隷の分の税金を払う義務が有るし、契約書に書かれている以上の事を求めてはいけない。


 例えば、護衛としてしか契約していない戦闘奴隷に、夜のお相手なんかはさせてはいけない、など。


 奴隷の契約は魔法による拘束力が働くから、奴隷は勿論主人に逆らうことは出来ないけど、主人も契約違反が有った時には、契約の紋章とやらにそれを証明する刻印が、追加で浮き上がるんだとか。


 それを以て証拠として、罰則金や違約金を徴収できるんだって。


 と、ここまでの話だけど、勿論パパンやママンに聞いたわけではない。


 それらを教えてくれたのは。


「あ、居た居た! ミリアーナ、こんにちは!」


「あら、また来られたんですね、お嬢様。こんにちは。」


 木製のタライで洗濯をしている女性に挨拶をする。


 彼女はミリアーナ。


 借金奴隷の身分で、冒険者だったから戦闘技能が高く、主に戦闘奴隷として働いている。


 あの初めてお庭に出た日に、あたしとママを護衛してくれていた、凛々し美人のお姉さんだ。


「だって、ミリアーナのお話楽しいんだもん。お外の色んな所のお話、今日も聞かせて?」


 彼女は非常に腕の立つ冒険者なのだが、受けた依頼を仲間の裏切りによって失敗し、莫大な違約金を押し付けられたそうだ。


 その裏切った仲間は無事に捕縛され、現在は犯罪奴隷として鉱山で労役中らしいが、違約金は依頼を受けた彼女が払う必要があった。


 そのため、借金奴隷に身をやつして、日々こうして働いているのだ。


「お嬢様もお好きですね。旦那様や奥様に、叱られませんか?」


「平気だよ! ママはミリアーナなら良いって言ってくれたし、パパが文句言ったら嫌いって言っちゃうもん!」


 はい。

 実は一度言っちゃいました。


 だってさぁ。

 外は危なくて出られないし、屋敷のあたしが読める本はほとんど読破しちゃったし。


 他に外のことを知る方法なんて、人に聞くしか無いじゃない?


 なのに、『奴隷とあまり仲良くしてはいけない』って、頭ごなしに切り捨てられちゃったから、つい……ね?


「それは……旦那様がお可哀想ですよ。そんなことをお父上に言っては、いけませんよ?」


 ニッコリと、綺麗に微笑みながら諭してくるミリアーナ。


 眩しい! 美し尊い! これは、逆らえない……!


「…………はぁい。ごめんなさい。」


「はい。お嬢様は賢い、良い子ですね。それでは、何のお話にしましょうか?」


 うぅっ……ミリアーナみたいな綺麗な女性(ひと)にそんな風に言われちゃうと、凄く照れる。


 でも、何だかんだ言って、今日もお話してくれるみたいだ。


「冒険のお話聞かせて!」


 冒険者として行ったことのある街の話や、モンスターと戦う話、色んな種類の依頼の話や、他の種族の話……なんでも聞きたい!


「お嬢様は本当に、冒険のお話がお好きですね。外の世界に、憧れているのですか?」


 クスクスと微笑み(わらい)ながら、そう訊ねてくるミリアーナに、あたしは胸を張って答える。


「うん! いつか大きくなったら、ミリアーナに護衛してもらってお外を旅するの! いっぱい色んな物を観たり、聞いたり、食べたりしたいの!」


 この世界で、いつか叶えたい夢。


 世界を、見て回りたい。

 外の世界は危険で、戦うのは怖いし無理だけど、パパにお給金を弾んでもらって、信頼しているミリアーナを護衛に雇って、旅をしてみたい。


「それは、とっても素敵な夢ですね。その時は、私も頑張ってお護りしますね。世界を旅して回る……本当に、素敵な夢。」


 ミリアーナも賛同してくれたことが、とても嬉しい。


 彼女と一緒なら安心だし、何よりこんな素敵な女性と旅が出来たら、とてもとても、楽しいに違いない。


「ホントね!? 約束だよ!!」


「はい。約束します、私の自由なお嬢様。それでは、今日は私が初めて依頼に失敗した時のお話にしましょうか。これが面白くてですね……」


 そうして、彼女の色んな側面を新たに知りながら、あたしは彼女の仕事が終わるまで、会話を楽しんだ。




お読み下さり、ありがとうございます!


「ママンのご飯食べたい!」

「スティーブ髭剃れ!」

「ミリアーナと一緒に旅に出たい!」


と思いましたら、☆評価をお願いします!


感想、ブクマもお待ちしております!



もっと更新しろ?


が、がんばります…………

:( ;´꒳`;):ガタガタガタガタ


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