第35話 マリアは各部署を視察する!②
いつもお読み下さり、ありがとうございます!
部署視察その②でございます。
今回キリの良い所で区切ったため、少し短いかもですが、どうぞお楽しみくださいませ!
いやぁ〜、【情報部】では眼福でしたなぁ!
やっぱりリアル獣人ケモミミっ娘は良き良きだね!
コスプレも二次元も良いけど、やっぱ生でしょ!?
はぁ〜、モフりたいモフりたいアニータ可愛いモフりたいモフりたいモフりたい無口っ娘もイイよねモフりたいモフりたい……!
「――――ちょう? マリア会長?」
「んひゃいっ!?」
「い、如何なさいましたか……?」
「な、なんでもないよぉ〜っ! あは、あははは……! そそそれで、何だったっけ?」
び、ビックリしたぁ〜!
どうやらあたしってば、アニータのケモ耳とケモ尻尾への欲望に支配されてたみたい……! 恐るべし、ケモっ娘!!
慌てて取り繕って、【侍従部】の研修中の奴隷に用件を訊ねる。
今はお仕事中だぞあたしっ! 各部署の視察回りの最中なんだからっ!
「はい。この後はわたくし共の【侍従部】の視察でございます。各奴隷の資料はこちらでございます。」
「うん、ありがと。今はまだ炊事部門もバネッサが指導してるんだよね?」
「はい。バネッサ部長は現在、マリア会長に従うわたくし共以外の者を教育しております。今頃は丁度、件の“炊事部門”に居るかと存じます。」
「そか。じゃあ先にそっちから見に行こっか。後で面談する“A+”の奴隷にも会っておきたいしね。」
「かしこまりました、マリア会長。」
うーむ……!
いや、解ってるよ? 彼女達がお偉い人に侍っても大丈夫なように、最大限畏まって付き従ってるのはさ。っていうかそういう実地研修だしね。
でもやっぱり慣れないなぁ〜っ!
あたしはそんな大した人間じゃないし、奴隷達とは仲良くやっていけたら良いと思ってるからね。
なんて言うの?
そう畏まられると……お尻がムズムズしちゃうの……!
でもまあ、これも奴隷の付加価値を上げてより良い雇い先を遇するため!
彼女達の将来が良くなるためなら、たとえお尻がムズ痒かろうが二つに割れようが、ドンと構えていなきゃねっ!
さて! 気合いを入れ直して【侍従部】の視察、行ってみよー!
「これはマリア会長。ようこそお出で下さいました。皆さん、ご主人様や上司の方が見えられたら、一旦手を止めてご挨拶申し上げるのですよ。」
「「「「はい! おはようございます、マリア会長!」」」」
「うん、みんなご苦労さま。作業に戻っていいよ。」
「「「「はい!!」」」」
うん、なんて言うか……【戦闘部】や【情報部】で慣れちゃったよね。
凄いなぁ、上流階級の人達は。コレを毎日やられてるんでしょ?
あたしみたいな小市民じゃあ、とても居たたまれなくて逆に肩身が狭くなっちゃいそう……!
「バネッサ、みんなの調子はどう?」
商会の厨房で忙しく動き回る奴隷達を指導している、【侍従部】の部長であるパーフェクトメイドのバネッサに様子を訊ねる。
「はい。皆張り切って作業に励んでおります。特に此処“炊事部門”では、新部署設立の発表に喜んでいる者が多いです。」
「やっぱり、調理は調理で集中したい感じなのかな?」
「左様でございますね。元々使用人としてではなく、料理人が奴隷落ちした者が多く居りますから。」
「そっか……そうだよねぇ。ところでバネッサ、その“奴隷落ち”ってやめない? あたしも偶に使っちゃうけどさ、別に奴隷になったからって、人生そこでお終いなワケじゃないんだし。あ、犯罪奴隷は別だけどね?」
「かしこまりました。当商会の禁則事項に追記しておきます。“自身を卑下する事無く努力を重ねよ”との訓示でございますね。流石はマリア会長でございます。」
「い、いや、別にそこまでじゃなくて、単にあたしが気になるだけなんだけどね……? っていうか禁則事項? そんなの在ったっけ?」
「左様でございます、マリア会長。宜しければ、禁則事項を綴った冊子をお届けいたしますが?」
「ちょっと見るのが怖いけど……気になるしね。後で報告書と一緒にちょうだい。」
「かしこまりました。」
そんなやり取りをしながら、バネッサの案内で厨房を一通り見学する。
うん。衛生面にも気を付けてるみたいだし、お互いに小さくだけど声を掛け合って、テキパキと働いてるね。
あたしがここで真っ先に口を挟んだのが、“手洗い・うがいの徹底”と、“マスク・エプロン・三角巾の着用義務”と、“厨房内で大声を出さない”ことと、“清掃は毎日徹底的に”ってこと。
やっぱり人様の口に入る物を扱う場所だからね、衛生観念だけは徹底して叩き込んできたよ!
今はアルコール除菌液的な物が無いか、アンドレに【情報部】の活動の片手間に探してもらってる。
生活魔法の【清掃】と無属性魔法の【浄化】が使えれば清潔は保てるけど、みんながみんな適性がある訳じゃないからね。
あ、消毒液と並行して、プッシュポンプのボトルや噴霧器も探さなきゃね。…………また必要経費が追加されるなぁ……!
「マリア会長。彼が評価“A+”の奴隷、【ムスタファ】でございます。」
「ど、どうも会長さま……! お、お疲れ様です!」
考え事をしている間に、バネッサが例の高評価奴隷を連れて来てくれた。
へ、へぇ〜……? この筋骨隆々などっちかと言うと明らかに【戦闘部】所属な彼が、ウチで一番の料理人なのね……?
空かさず職業技能の[人物鑑定]を使って視る。
名前:ムスタファ 年齢:25 性別:男(漢女)
職業:マリアの奴隷 適性:料理職人 魔法:水
体調:緊張 能力:A+ 潜在力:SS
「ブッフォオオッッ!!??」
「ま、マリア会長ッ!!??」
ゲホッ、ゴホッゴホッ!?
な、ななななんなのよこの鑑定結果はぁあああッ!!??
またか! またなのかスティーブッ!?
一体何処でどうやってこんな化け物みたいな逸材を見付けて来たのさぁああああッッ!!??
潜在力“SS”って何!? 初めて観たよこんなの!?
今でさえ“A+”なのに、成長しきったら一体どんな料理を作るっていうのよおおおおおッ!?
それに“漢女”って!? “漢女”ってまさかの……ッ!? こんなに男らしくて筋骨隆々なのにッ!!??
「だ、大丈夫でございますか、マリア会長!? 如何なさいましたか!?」
「だ、だいじょぶだいじょぶ……! ちょっと先代会長のとんでもなさを再確認しただけだから……ッ!」
「は、はぁ…………?」
いや、ホントにっ!
お父さんアンタ、[人物鑑定]持ってなかったよね!? 商人としての目利きだけで彼(?)を見出したっていうワケ!?
ヤダもう……! この商会の奴隷達が優秀過ぎて、あたしってばコワヒ……!
職業適性がただの【商人】だったハズの先代会長に戦慄を覚えつつ、突然のあたしの奇行に怯えたような目を向けるムスタファに、改めて向き直る。
「よ、よろしくねムスタファ。今まではあんまりお話した事無かったけど、新部署設立の件、承諾してくれて嬉しいよ。」
この視察の後でまた改めて面談が待っているけど、少しでも彼(?)が前向きになってくれるよう、声を掛ける。
「わ、ワタシなんかに、もも、もったいないお言葉です……!」
「申し訳ございません、マリア会長。彼は少々、内向的な性格でして……」
ふぅん? 内向的……ねぇ……?
いやいや、そうじゃないんじゃないかなー?
あたしはチョイチョイとムスタファを手招きして、姿勢を低くしてもらってから耳元に口を近付ける。
「(別に隠さなくても良いんじゃない? 心が女の子だって、あたしやみんなは避けたりしないよ?)」
ポソリと、他のみんなには聴こえないように耳打ちする。
あっ、バネッサが片眉をピクッてした……!
うっそでしょお……? 今ので聴こえちゃったのぉ……?
さて置き、そんなあたしの言葉に、ムスタファは目を見開いて唖然とした顔をする。
あたしはそんな彼女の肩をポンポンしながら、笑い掛ける。
「それじゃ、面談の時はよろしくね♪ そんなに緊張しなくていいからさ。ありのままのムスタファと、お話させてね!」
そう言ってあたしは、ポカンと口を開けたまま固まるムスタファを仕事に戻らせて、バネッサの案内で“家事部門”と“家計部門”を視察して回った。
ねえ、ムスタファ? あたしだって中身は【八城要】っていう成人済みの男だからね。心と身体の性別の不一致には、これでも一家言あるよ?
あたしの場合はもう開き直っちゃって女の子してるけど。
ムスタファのように、誰よりも男らしい見た目で心が乙女っていうのは中々にギャップが凄いけど、そんなモンは慣れよ、慣れ!
別に恥ずかしがらなくたって良いんだよ。
前世を生きた日本には、オカマさんやオネェさんやニューハーフさんがいくらでも居て、みんな自分の事を誇って、愛してたんだから。
とやかく言う奴なんてほっとけばいい。
そんな輩に拘ってるヒマがあったら、ウチでもっと伸び伸びと、その素晴らしい才能を伸ばしてほしい。
後でムスタファが奴隷じゃなくなって正式に商会の商会員になったとしても、あたしがちゃんと、護ってあげるからね。
「あ、バネッサ? 後でちょっとお願いがあるんだけど……」
「何でございましょうか、マリア会長?」
「えっとね、新品のエプロンとレースを用意して欲しいの。それを――――(ゴニョゴニョ)」
「――――なるほど。承知致しました。ご用意させていただきますね。」
「うん。ゴメンね、変なコト頼んじゃって。」
「お気になさらず。久方振りの“お嬢様のお願い”でございますからね。腕が鳴ります。」
「あはは。ありがと、バネッサ。」
バネッサには聴こえてたみたいだもんね。だからバネッサにも、共犯になってもらっちゃうからね〜♪
「ご歓談中失礼致します、会長。そろそろ御昼食のお時間となりますが……如何なさいますか?」
お、偉い! 上司達が喋ってても、大事な事は遮ってでも伝えてくるとは……! これぞ従者の鑑だね!
後でバネッサに、この女性の評価アップをお願いしなきゃっ!
うん、ご飯は大事だもんね!
それじゃあ一旦お昼休憩にしような!
残る視察場所は【研究部】と【総務部】だったね。
腹拵えをしてから、残りも張り切って視察しよう!
「あっ! せっかくだし彼……ムスタファが作った物中心で食べてみたいな。バネッサ部長の評価だけでなくてあたしも美味しいって伝えれば、彼も喜んでくれるかもっ!」
「かしこまりました、マリア会長。ご用意が整いましたら、またお声掛けに参ります。」
「うんっ! あ、でもあたしが食べたがってるとか言っちゃダメだからね? 後で面談の時に伝えて、ビックリさせてあげたいから!」
「……マリア会長、お戯れは程々にお願い致しますね……?」
「やだなぁバネッサったら。ちょっとしたサプライズだってばぁっ♪」
「……左様でございますか…………」
もうっ! そんな呆れた顔しないでよぉっ!
いいじゃんサプライズ! ムスタファのビックリした顔が目に浮かぶよぉ〜っ! うひひ!
そうして午前中の視察を終えて、あたしは意気揚々と書斎に戻り、読書をしながら昼食の完成を待ったのだった。
ああ、お腹空いたぁ〜〜ッ!!
(今作でも)漢女登場!! でした(笑)
なんなんでしょうね? 作者はそんなに漢女が好きなんですかね?
如何でしたか?
「面白い!」
「続きが気になる!」
「ムスタファ良い人そう!」
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