第3話 成長~はいはいマスター・マリア~
お読み下さり、ありがとうございます。
マリアちゃんが、すくすく成長するお話です。
お楽しみください。
※疚しいことは何もございませんよ?
転生して、どれくらい経っただろうか。
最初は抱っこをされても、首がグラグラして自分で気持ち悪かった。
ずっと仰向けじゃ腰を痛めやしないかと、頑張って寝返りも練習した。
寝ているとどうしても天井かベビーベッドの柵くらいしか見えなかったから、腕立て伏せ……とまではいかないものの、上半身を持ち上げて、それを支える腕を鍛えた。
もっと良い眺めを我が物とするために、まるでお人形さんみたいに、ちょこなんと座る特技を得た。
そして、遂に……
「ぶぎゃっ!?」
だめか。
はいはい成らず。
くっそー。
両手と両脚を、効率良く動かせない!
俺って前世で、どうやって手足を動かしてたっけ?
まず脚がなよっちいんだよなぁ。
膝で支えていられない。
「おあ……だぁ~……っ!」
ズベッと滑る。
「あだぁ~……ふぎゅっ!」
ベシャッと倒れる。
「ぶあぅ~……ほあっ!?」
フワッと持ち上げられる。
「あびゃあぁ~!? ふぎゃああ!?(なんだ!? 何事だ!?)」
「驚いたな。まだ生後三月だというのに、もう起きようとしているじゃないか。」
くっ!
犯人はアンタか親父ィ!?
急に抱っこすんなよ!
吃驚するじゃんか!!
赤ちゃんの心臓は小さいんだぞ!
心臓麻痺起こしたら、どうしてくれる!?
脳裏にふと、前世での少年時代に飼っていた、ハムスターのチョコさんを思い描く。
エアコンのフィルターカバーが外れ、床に落ちた際の大きな音で、心臓麻痺を起こして、死んでしまったチョコさん。
彼女ももしかして、この世界に来ているのだろうか……
「ははは! 凄いなマリア! ヨナ、この子はもしかしたら、とんでもない大物になるかもしれないぞ!」
「えああっ! ちょああああっ!? あだあああびゃああああっ!!(ええい! 降ろさんかっ!? 俺は絶叫系は苦手なんだよっ!!)」
脇を抱えて縦横斜め。
高い高いやらクルクルやら、俺の身体を振り回す父親。
「アナタ! スティーブ!! マリアが嫌がってるでしょう!?」
父親――【スティーブ】の手から俺を救出してくれる、母親のジョアーナ。
「びえええああああっ!!(お母さまああああっ!!)」
マジで助かった。
うあー、視界がまだグルグルしてるよぉ。
ジョアーナの豊かな双丘に包まれて、途轍もない安心感を得る。
「あううあう。あだああ、ううあああうぉ。(ありがとう。アンタ、命の恩人だよぉ。)」
「ふふっ。なあに? そんなに怖かったのかちら~?」
「うぐぐっ……! どうしてヨナにばかり懐くんだ!? 僕だってこんなに愛しているのに!」
「アナタは乱暴なのよ! もっと優しく、そっと扱ってあげなきゃ!!」
いいぞ、もっと言ってやれ!
うんもう、ホンマそれなんよ。
脅かしたり、振り回したりしなけりゃ、俺だってちょっとは大人の対応見せてやるってのに。
「あぅあう。(まったく。)」
「ほら、マリアも呆れてるわよ?」
「ぬぬぅ……ご、ごめんよぉ、マリア。もう乱暴にしないから、許しておくれぇ~!」
やれやれ。
そう言ってこの前みたいに、舌の根も乾かない内にまた高い高いすんじゃねえぞ?
「あーう。」
「ふふっ。まるで私達の言葉が解ってるみたいね。ほらアナタ、お許しが出たみたいよ?」
「ホントか!? おお~ん! マリア、愛してるぞぉ~!」
「うあ! あだだあああうああっ!?(てめ! 言ったそばからまたっ!?)」
「スティーブ!!!!」
閑話休題だよ。いやん♡
まったく、父親のせいで漏らしちまったじゃねえか。
今は、フローリングに敷かれた絨毯の上に降ろされている。
母親のジョアーナは、俺を見守りながら、編み物をしている。
ちょうどいい。
ベビーベッドのサークルの範囲じゃ、狭くて碌に運動できやしないからな。
ころん、ころん。
寝返りをスムーズに行う練習。
ぽてんっ。
お座りも大分上手になったな。
ぐぐぐぐ……っ。
うつ伏せから上半身を起こし、腕で支える訓練。
そして膝を曲げ、足を引き付けて……
「あばっ!?」
クシャッと突っ伏す。
「あぶあー。あだぶあああう?(くっそー。何が悪いんだろ?)」
あれかな?
赤ちゃんって総じて身体が柔かいけど、関節が緩いのかな。
無理に脇抱きすると肩脱臼するって聞いたことあるし。
んー、でも膝だもんなぁ。
単純に筋力かなぁ。
繰り返し繰り返し、俺ははいはいに挑戦する。
その度に、手が滑り、膝が滑り、顎を打ち、鼻を打ち……
「あぶぶああだあああっ!!(やってられっかああっ!!)」
もう!
なんなんだよこの身体は!?
全然思い通りにならない!
「あらあら? お腹空いたのかしら~? 頑張って起きようとしてたもんね~♪」
ジョアーナが編み物の手を止めて、こっちに近付いて来る。
違うんだよママンっ!
はいはいができないのぉっ!!
「うううああうあうだあっ!(どうすればいいんだあっ!)」
いや、確かにお腹も空いてるけど!
「う~ん……そうだ!」
何やら呟いて、ゴソゴソしだしたジョアーナ。
彼女は俺に素敵な笑顔を向けると、徐に服をはだけ、その豊かな双丘を、惜しげもなく俺の前に曝け出した。
プルルンっと。
「ほああっ!?」
いつ見ても大変お見事な果実で……って違う!
いきなり何してんの!?
ここが室内で良かったよホントに。
「ほ~ら、マリア♪ ママのおっぱいはここですよぉ~♪」
両手を広げて、その見事な張りと柔かさを兼ね備えた胸部装甲を晒し、俺を呼ぶジョアーナ。
「ちょあっ!? あばだああだぶあっ!?(ちょまっ!? エサで釣る気かいっ!?)」
くっ!
だけど行きたい! そこへ!!
勘違いするなよ?
空腹を満たすためにだ。他意はない!
そのために!
行きたい!
おっぱいの下へ!!
「おおあああああいいいっ!!(おっぱああああいいいっ!!)」
「ええっ!? ホントにできちゃったわね!?」
…………ホンマや!?
はいはいが、できたぞぉーっ!!
転生者マリアちゃん、生後3ヶ月ではいはいをマスター!
次回、衝撃の真実が!?
応援よろしくお願いします♪