第16話 お説教される少女・マリア
やっと上手い具合にまとめられましたー♪
いつもお読み下さり、ありがとうございます!
お楽しみください!
くそう、この間は酷い目に遭ったよ……!
犯罪奴隷の10人の中には賞金首は居なかったので、結局全員家でお引き取りとなった。
それでまあ、お土産と言うにはだいぶ物騒だったけど、引き連れて帰ったのよね。
そんなあたしを待っていたのは、怒涛のお説教だった……!
◆
『マリア、ちょっとそこに座りなさい。』
『な、なんでしょうか、お父さん……?』
『お父さんはね、キミのことを信用してるんだ。もちろん、お母さんもね。』
『は、はい……ありがとうございます。』
『で、どういうことかな?』
『な、何がでしょう……?』
『警備隊と揉めたらしいね?』
『…………はい。』
『犯罪者の取り扱いで。』
『左様です……』
『隊長さんを脅したとか。』
『と、当然の権利を主張したんです。』
『脅したんだね?』
『は、はい……』
『代官様に抗議するとか。』
『はい……』
『後ろ盾も無いのに?』
『うっ……!』
『はぁ……マリア。キミの憤りも主張も、尤もなものだ。警備隊の過失は明らかだし、奴隷達を守ろうとしたことも解る。
だけど、キミはまだ子供なんだよ? 11歳の女の子だ。職に就いているとはいえ、まだ独立もしていない。どうして僕を呼ばなかったのかな?』
『……ご、ごめんなさい。』
『大人を……しかも戦闘職の人間を挑発するような発言をして、相手が逆上してきたら、どうするつもりだったのかな? 武器の類いは取り上げられていたんだよね?』
『仰る通りです……』
『ミリアーナやバネッサが、いくら腕利きとは言ってもね? 警備隊の詰所なんて相手の虎口の中で、ちょっと……いや、だいぶ軽率が過ぎたんじゃないかな?』
『返す言葉もございません……』
『物怖じしないその胆力は認めよう。商人としても重要な資質だからね。けど時と場合、そして相手を見極めることも必要だと、僕は思うんだけれどね?』
『肝に銘じます……』
◆
ははっ。お父さんめっちゃ怖かったよ……!
普段温厚な人がキレると怖いっていうのは、どうやら異世界でも同じみたいだね……!
ううっ……! 怖かったよぉ……!
もちろんお説教がお父さんだけで終わるはずもなく、その後はお母さんにも、こってり絞られました……!
あははは…………はぁ……
あれは、ダメだ。ある意味お父さんより怒らせちゃいけない人だったよ、お母さんは。
泣かせちゃったしなぁ……
このままじゃいけない。
子供の身体に精神まで引っ張られてるのか、前世よりだいぶ沸点が下がってるように思える。
商人として、感情を表に出すのは愚かの極みだと思うし、このままだと、両親の前でもやらかしそう……!
ダメだあたし、早くなんとかしないと……!
ああ、それでだけど。結局あの後、あたしではなくお父さんが代官様に抗議に行ったの。
あたしの代わりに、バネッサを連れて。
あたしはお父さんのお説教のついでに事情聴取されて、全てを事細かに説明したから、それだけで充分だったみたいなんだよね。
結果としては、元盗賊の犯罪奴隷達は全員、家の商品として正規登録を許され、今回の不始末の賠償代わりとして、相場より割高で代官様が購入したことで、手打ちとなったよ。
あたしたちに冤罪を吹っ掛けてきたクズ門番は懲戒免職、隊長さんは3ヶ月間の減俸処分に処された。
これはバネッサからなんとか聞き出したの。
お父さんは頑なに首を振って、教えてくれなかったからね。
まあ、示談の落とし所としては、妥当なんじゃないかな?
アイツらの、処分を受けて悔しがる顔を観てやりたかった――――おっといけない。気を付けなきゃと思った傍からコレだよ。
なんか精神修養に適した方法は無いものかなぁ。
パッと思い付くのは、坐禅に滝行、もしくは武道?
ダメだ。そもそもこの世界には仏道も神道も無いから、そんな修行を指南してくれる人が居ない。
武道は……ミリアーナに、護身術でも習おうかな……?
試しに訊いてみようかな。
◇
「いけません、マリアちゃん。剣術ダメ。ゼッタイ。」
「お、お母さん……!」
まさかのママンが立ちはだかった。
いやそんな、覚醒剤撲滅ポスターみたいな言い回ししなくても……
そのお母さんの傍らには、バネッサが控えている。
どうやらあたしの行動が読まれてて、先回りしてお母さんに告げ口したみたい……!
くっ……! あたしの奴隷のハズなのにっ!?
お母さんとバネッサの、2人の背に庇われるかのように、ミリアーナが困り顔をしている。
何が起きているのか分かってないみたいだね。
「ど、どうしても、ダメですか?」
「どうしても、ダメです。」
取り付く島もないよぉ……! あの顔はまだ怒ってるよぉ……!
頬っぺた膨らませて、眉根をキュッと寄せて、腰に手を当てて口で「プンプンっ!」って言ってるし。かわいいなオイ。
くっそぉ〜っ。何か他に無いかな?
とにかく今は、精神力を鍛えないと。感情をコントロール出来てこそ、一人前の商人だもん――――お? 待てよ?
「じゃあ、お母さん。魔法を習いたいです。あたしの魔法の適性は【無属性】と【浄化】ですし、戦う訳じゃないですから。それにもっと、自制心を鍛えたいんです。」
「魔法を? 確かにそのふたつの適性なら、あんまり戦いには向いていないと思うけど……家に教えられる奴隷が居たかしら?」
奴隷契約や登録には魔力が必要だけど、魔法を使うわけじゃないんだよね。
だからあたしは、魔力を高めたり注いだり、それしかできない。
魔法書で独学でもいいけど、高っかいんだよね、魔法書って。
だったら専門家に手解きを受けた方が、効率的だよね。
ミリアーナやバネッサ、あとはお母さんも魔法は使えるけど、使えるのと教えられるのは、また別の話なんだよねぇ。
で、あたしの前世のラノベ知識によれば、魔法の修行は、精神力を鍛えるのにもってこいだと思うんだ。
集中したり、魔力を制御したりさ。
「確かにマリアちゃんは、普段は良い子なのに時々我慢が効かない時があるわよねぇ。うん。それじゃ、とりあえずお父さんに訊いてみましょう。」
うっ……バレテーラ。
いやでも、男の本性にまでは気付かれていない……はず……!
そんなこんなで、お父さんの所へお母さんと突撃です。
お父さん、もう怒ってないよね……?
「魔法を指南できる人かぁ……流石にそこまでの人材は、家の奴隷には居ないなぁ。」
ダメかぁ〜!
そうすると、外部から家庭教師みたいな感じで雇うしかないかな。
いくら掛かるんだろう……?
「魔法の家庭教師みたいな人は、居ないんですか? 報酬が日当なのか月謝なのかは兎も角として、あたしでも払えると良いんですが……」
「うーん。そういう人で信用の有る人は、大体が貴族様のお抱えだからなぁ。このムッツァート伯爵領でも、高名な魔法使いはみんな伯爵家にお仕えしているし……」
「冒険者の方々では、居ませんか? 指名依頼で教えを乞うことはできないでしょうか?」
「それも、ひとつの手ではあるね。僕の方から、冒険者ギルドに問い合わせてみよう。」
「え? そ、そんなの、お父さんに悪いですよ。あたしが自分で調べてみますからっ――――」
うっ……お父さんに手でセリフを止められた。
な、なにかな……?
「マリア。まず自分で何とかしてみようっていう、その心構えは立派だし、素晴らしいと思うよ。」
あ、ありがとうございます……?
「でもね、マリア。この間も言ったけど、キミはまだ、11歳の女の子なんだ。そして、僕とヨナ……ジョアーナの、大切な娘なんだよ?」
はい。
お父さんとお母さんには、いつも感謝しております。
バレていないとはいえこんな、中身が元社畜の野郎であるあたしにたっぷりと愛情を注いでくれて、本当に感謝してもし足りないほどでございます。
「この前もそうだったけど、もうちょっと、僕たちを頼ってくれないかな? キミの成長に関わることは、僕たちにとっても嬉しいことなんだからさ。」
「そうよ、マリア。あなたは才能溢れる見習い奴隷商人で、奴隷たちの主人で、ワーグナー商会の従業員だけれど、それ以前に、私たちの大事な、大切な娘なの。偶には、親らしいことをさせてちょうだい?」
そう言われると、ぐうの音も出ないです……
前世では、碌に親孝行もしない内に両親と若くして死別して、ひとりっ子だった俺には、和気藹々とした家族らしい光景は、遥か記憶の彼方で。
この世界に転生して、性別は変わっちゃったけど、確かに愛されて育んでもらえて。
嬉しかったんだよね。
だから面倒を掛けちゃいけないって、必死に勉強もしてきたし、良い子として振る舞ってきた。
中身がこんな俺だから、子供らしく振る舞うってのは、気恥しいし難しかったけどさ。
そんな俺に……あたしに、この両親は、もっと甘えても良いと言ってくれている。
親っていうモノは、本当に偉大な存在だよねぇ……
「あ、ありがとう、お父さん、お母さん。お願いします。あたしに、魔法の先生を探してくださいっ!」
やべっ。思わず涙腺が緩んじゃったよ。
両親の優しさに、温かさに、あたしの心がポカポカしている。
ああ……これだけでも、転生して良かったと思えるなぁ。
神様だかなんだか分からないけど、こんな温かな家庭に生まれ変わらせてくれて、本当にありがとう。
「任せておきなさい。愛する娘のためだからね。最高の先生を、探し当ててみせるよっ!」
「アナタ、絶・対・に! 女性限定でお願いしますね? マリアちゃんは天使なんだから、悪い虫が寄ってきたら困りますからね!?」
「当たり前じゃないか、ヨナ! ウチの天使様には、男なんかは指一本触れさせないよっ!!」
……それって、あたしは独身決定ってことですかね?
いやまあ、中身が俺である以上、男なんてコッチから願い下げなんですけどね?
普通に無理でしょ。
男よりも、ミリアーナやバネッサとキャッキャウフフしていたいです、ハイ。
「よし! そうと決まれば、僕の人脈の全てを駆使して、最高の魔法の講師を探してくるよ! あ、マリア! この間の騒ぎの罰として、2週間外出禁止だからね! もし破ったらこの話は無しだからね!?」
うげっ!? このタイミングで罰ですかい!?
いや、まあ仕方ないか。
素直に受けておきましょう。
じゃあその間は、ミリアーナに護身術でも――――
「マリアちゃん? 剣術ダメ。ゼッタイ。」
そりゃないよママン!? あ、ダメだこりゃ。また腰に手を当ててプンプン言い出しちゃった。
はぁ……仕方ない。
2週間は大人しく、お仕事とお勉強に精を出しますか。
「お嬢様。丁度お暇なお時間が出来て僥倖でございましたね。それでは私と、礼儀作法のお勉強を致しましょう。」
ちょ、バネッサ!?
いやうん、居たのは分かってたけど、気配の断ち方が完璧過ぎて忘れてたよ!!
って、マジでやるの!?
普段は良い子な女の子なんだから、良しにならないかな!?
ならない? ダメ? ゼッタイ?
ちょ、バネッサさんのお顔が本気で怖いよおおおおッ!!??
家族団欒回でした!
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当作品
【奴隷商異世界を往く〜奴隷商人の娘に転生したんだけど、ホワイトに努めていたら奴隷みんなに慕われ過ぎて売れなくなったので、人材派遣サービスで一旗揚げようと思います〜】
を、第9回ネット小説大賞に、この度エントリーさせてみました!
何処まで行けるかは分かりませんが、良ければ応援を、よろしくお願い致します!!
これからも頑張りますので、どうぞお付き合いくださいませ!
2021年3月2日
テケリ・リ