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第14話 奴隷を獲得する少女・マリア

いつもお読み下さり、ありがとうございます!

 

 ピクニックという名の盗賊討伐(なんでこうなるの!)を終えて。


 結局のところあたしたちが得たものは、最初に襲撃してきた10人の身柄と、ソイツらが持っていたお粗末な装備品、そしてアジトにあったごく僅かな金品と、お腹を壊しそうな食料の備蓄だけだったね。


 まあ、囚われていた人が居なくて、良かったけどさ。


 盗賊達のアジトだった洞穴は、ミリアーナが魔法で崩して、二度と使えないようにしてきたらしい。


 また盗賊や魔物が住み込んでも困るかららしいね。

 特に産出品も無さそうなただの洞穴だったので、魔法を使って崩落させてきたんだって。


「お嬢様。この者達は如何なさいますか?」


 メイドのバネッサが、未だに拘束されている盗賊達を眺めるあたしに、そう訊いてきた。


「うん。全員犯罪者だし、この場で、仮で犯罪奴隷として契約しちゃうよ。そうすれば命令には従うようになるし、逃げられる心配も無くなるからね。


 街に連れて行って、賞金首が居るようなら解除して差し出して、そうじゃないならそのまま会長に届けようかな。犯罪奴隷の取り扱いも教えてもらいたいし。」


「かしこまりました。では、お荷物から道具をお持ちしますね。」


 バネッサにそう答えると、彼女はあたしたちの馬車へと歩いて行って、大きなカバンを抱えて戻って来た。


 あたしは受け取ったそのカバンの中から、丁寧に梱包されている革製の包みを取り出して、シートの上で開く。


「本契約じゃないから、【魔力筆】と【魔力インク】と、それと小皿とナイフと針……っと。小皿は10枚も無いけど、洗って使えばいいか。」


 今回は【魔力印】の出番は無いね。


 これらは、全て奴隷契約に必要な道具なんだよ。


 魔力筆は、専用の魔力インクを使って初めて効果を発揮する。魔力を込めながら文字を書いたり、絵を描いたりすることで、それらに“効力”を持たせることができる。

 筆じゃなくて魔力ペンを使って、魔法の強制力を持った契約書を書くことなんかもできるよ。


 魔力印は、より強い“効力”を与える【魔力紋】を押すことができる、魔法のハンコだね。

 奴隷との本契約の時に使うもので、我が【ワーグナー商会】の紋章(シンボル)が、魔力で刻まれる。

 奴隷としての契約を満了しない限りは消すことのできない、強力なものだ。


 ちなみにこのシンボルはちゃんと国に登録されていて、どこの商会の奴隷かが、照合できるようになっている。


 勿論、これらは貴重で危険な【魔導具】に当たるので、取り扱いには国の認可が要るよ。

 人の行動を制限したり、強制させることができるんだもんね。


 国に認可を受けた()()()奴隷商だからこそ、こうした貴重な魔導具を扱うことが許されるわけ。


 モグリの魔導具を使った違法奴隷商人も居るけど、あたしたち【ワーグナー商会】は、法律もキチンと遵守する、優良奴隷商なのだ(ドヤッ)。


「よし、問題無さそうだね。」


 ひとつひとつの道具を確認してから、あたしはミリアーナに顔を向ける。


「10人も居ると時間が掛かるから、急いでやっちゃおう。ミリアーナ、先ずは頭領からだね。この小皿に、血を1滴採ってちょうだい。」


「はい、お嬢様。」


 ミリアーナはあたしからナイフと小皿を受け取って、後ろ手にぐるぐる巻きに拘束されている盗賊の頭領……ハゲに近付いて行く。


 あたしもそんなミリアーナの後ろについて行き、ハゲに声を掛ける。


「頭領さん。今からあなた達を、あたしの奴隷として仮登録します。そうすれば賞金首でない限りは、即座に殺されることは無いでしょう。


 まあ犯罪者なのに変わりは無いので、過酷な労役が待っているのは確定だけどね。もし拒むのであれば、此処に拘束したまま放置するか、殺します。死にたいのであれば、どうぞご自由に。」


 そう説明している間にミリアーナが、小皿にハゲの血を少量、採取してきてくれた。


 あたしはその小皿に魔力インクを適量注いで、血と混ぜる。


 そして針で自分の指を刺して、付着した自分の血も、小皿のインクに混ぜる。針とナイフはバネッサに洗ってもらって、その後ミリアーナの火の魔法で消毒だ。


 魔力を込めながらインクを混ぜると、一瞬だけ光を放つ。

 これで契約の準備は完了だ。


 魔力筆を浸してインクを染み込ませると、ミリアーナに押さえてもらってから、頭領に近付く。


 んー、場所は額で良いかな。どうせ仮登録だし、シンボルも適当で良いか。【肉】とでも書いて(勿論漢字でね)おこう。


 魔力を込めながら……よし、と。

 これでハゲの額に【肉】マークが完成だ。


 あたしはその額の肉マークに手を翳して、魔力をちょっとだけ注ぎながら、言葉を口にする。


(なんじ)【ハーゲン】は、私のことを暫定的に主人と認め、その命令に従う契約を、此処に交わす。


 契約満了条件①、汝ハーゲンに懸賞金が掛かっており、治安当局から身柄を求められた場合。


 ②、仮登録から本登録への変更時もしくは、主人である私が解放を宣言した場合。


 ③、その身体や生命活動に、重大な損失を招いた場合。ただし、不従順に対する懲罰や、犯罪者に対する対応は、これに含まれない。


 以上の条項に従うのであれば、“契約成立”と唱えよ。」


 契約の条項を、ハゲ――ハーゲンに語って聴かせる。

 ゆっくりと、理解できるように。


 するとハーゲンは、押さえ付けられ身動ぎもできない状態で忌々しそうにあたしを睨む。


 それでも放置されて獣のエサや、この場で即座に殺されるよりは、生きていたかったらしい。


「…………契約、成立……」


 不承不承に、溜め息と共に吐き出されたその言葉に、額の肉マークが光って反応し、やがて薄れて見えなくなる。


 よし、これでハーゲンは、仮にだけどあたしの奴隷になったよ。


 肉マークがちゃんと消えた事を確認してから、あたしはミリアーナに頷いて見せる。


 彼女はそれを確認してから、ゆっくりと拘束の手を緩め、荒縄での捕縛からも解放する。

 ハーゲンはミリアーナが睨みを効かせている中で、よろよろと立ち上がって、毒を零した。


「くそっ……! まさかこのオレが、奴隷に落ちるなんてな……」


「無駄口は叩かないで。馬車から10歩離れた位置で待機していなさい。」


 別に意思を歪めたり、縛ったりはしていないので、言動は自由なんだけどね。


 でも喧しくされるのも嫌だし、近くに居てほしくもないので、離れた場所に待機するように“命令”する。


「ぐっ!? な、なるほど、こりゃ逆らえねぇや。へいへい、っと。」


 一瞬、命令に逆らおうとでもしたみたいだね。


 こめかみを押さえて痛みに耐えるような顔をした後は、ノロノロと命令通りに動き、馬車から離れた位置で突っ立ち始めた。


 よしよし。

 この調子だね。


 あたしが残る9人の盗賊達に振り返ると、盗賊達は一様に、怯えた顔を向けてくる。


 まったく! こんな可憐な11歳の乙女に、なんて目を向けるのよ!?


「さあ、ミリアーナにバネッサ。遅くなるとお母さんが心配しちゃうから、手早く済ませようね。」


「はい、お嬢様。」


「かしこまりました、お嬢様。」


 そうしてあたしは、残り9人の盗賊達も、奴隷として仮登録をしてから、全員駆け足で馬車について来させて、街への帰路に着いたのだった。




 あたし、見習い奴隷商人のマリア、11歳。


 大好きなミリアーナとバネッサと一緒にピクニックに出掛けたら、犯罪奴隷を10人手に入れました。


 今回はこんな雑魚だったから良かったけど、せめて1パーティー、最低4人くらいは、護衛の戦力があった方が良いかもしれないね。


 いざとなればバネッサも戦えるのは知ってるけど、軽傷とはいえミリアーナに怪我させちゃったしね……


 帰ったら会長――お父さんに相談してみようかな?




盗賊討伐(ピクニック)は如何でしたか?


まあ、マリアちゃん本人は戦闘力皆無ですから、戦闘をお届け出来ないのが心苦しいですが(ˆ꒳ˆ; )


「面白い」「これからどうなる」と思われましたら、高評価やブックマークをお願いします。


感想も、いつでもお待ちしております。

お気軽にどうぞ!


m(*_ _)m


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― 新着の感想 ―
[良い点] この辺のシステム、なかなか興味深いですね。
[良い点] 更新ありがとうございます [一言] 登録後従わないと、どうなるんだろ? 意思と発言は縛られないから、行動? 孫悟空の緊箍呪みたいなものかな?(笑)
感想一覧
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