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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

救い (超短編)

作者: るざる

初めての投稿です。

長期休暇で暇だったので頭にパッと思い浮かんだ物を文にしてみました。


目が覚めると死んでいた。





意味が分からない。

昨日普通に布団に入って普通に目を閉じただけなのに。

普段と違ったことといえば両親から出された得体の知れない薬を飲んだことぐらいか。あれは何だったんだろう。



いや、正確には死んでいるのかも分からない。

意識はあるし、目もぱっちりと空いている。

なのに辺りが真っ暗なんだ。



真っ暗と言っても真夜中に街灯の無い場所を歩いている時のそれとは違う、本当に真っ暗なんだ。

寧ろ真っ暗というよりは"真っ黒"かもしれない。



どういう状況なんだ?

これが地獄か?私は生前何か悪いことをした覚えがないぞ。

いやそもそも地獄って真っ暗(真っ黒)なのか?



考えても無駄な気がしてきた、とりあえずもう一度寝よう。

まあ目を開けていようが閉じていようが真っ黒の世界が広がっているだけだし然程変わらないんだけど。




……微かに変な機械音が聞こえる気がするな






目が覚めるとそこは見慣れた高校の教室だった。

顔を上げると先生が数学の授業を行っていた。

時計は14時前を差している。


ああそっか、あれは夢だったんだ。

授業中に寝ちゃってただけだったのか。

お昼休みの後の5限ってお腹もいっぱいで眠くなっちゃうし無理もないな、気を引き締めないと。

まあ何故か全く満腹感ないんだけどね。



……にしても、なんで寝る前の記憶が全くないんだろう…まあいっか。




学校が終わり、友人と別れを告げ、帰路に着く。

何だか視界がぼやけるなあ、疲れてるのかな。

家に帰ったらもう一度寝ようっと。




…意識がどんどん遠のいていく


おかしいな







目が覚めると死んでいた。




ああ、また夢か。見渡す限り真っ黒の気持ち悪い夢。


家に帰ってゆっくり休みたかっただけなのにこんな夢見てしまったら寝ても寝た気がしない。

何故か学校が終わってからの記憶が殆どないけど。現実の自分は本当にちゃんと家着いたのかな?



…しかし、変な夢だなあ

それにここは夢の中のはずなのにやけに意識がはっきりしているな。

本当はこれが現実で向こうの世界が夢なんじゃないか?と、錯覚するぐらいに。



ま、そんなはずないんだけどさ。これがいわゆる明晰夢ってやつかな?



とりあえずもう一度寝よう。

いや夢の中なのに寝ようってのもおかしな話だな、目を閉じよう。









……さっきの微かな機械音に加えて話し声と泣き声がする

泣きながら私の名前を呼ぶ声が聞こえるような…

それに、「治療」だとか何とか聞こえるような…?



そういえば身体が思うように動かないしそれに口も動かない気がする、外からの情報が微かに耳に入ってくる程度で他が全てシャットダウンされているような…





……やっぱり変な夢だなあ。








目が覚めるとそこは焼け野原だった。

前に女性らしき人がいた。

いや、人とは形容しがたい"人のような物"があった。



其れには口がない、剥がれ落ちた形跡がある。

目もない。いや、"あった"形跡がある。

耳は辛うじて残っているが潰れていて殆ど意味を為さなそうだ。微かに音を拾いそうな気もする。

手足もボロボロで使い物にならさそうだ。





…どういうこと?これは現実ではないのか?

それにこの化け物よく見ると禾厶…あ、追いかけてきた。これはまずい。






逃げる。






逃げる。






ただひたすら、逃げる。






現実だとか夢だとかそういう事を考えるのは後回しにしてとりあえず逃げよう。

こいつに捕まったらまずい気がする。






走っても走っても、人が見当たらない。

それどころか建物のような物も見当たらない。


まるでこの世界に私と後ろの化け物しかいないかのような。




とか何とか考えつつ必死に逃げ回ってたらとうとう行き止まりだ。

前は崖、後ろは化け物。絶体絶命だ。




もうどうなってもいいや、飛び降りちゃえ。



まあどうせこれも夢なんだろうが…夢ぐらいいいもの見させてくれよ。




底が見えてきた。

頭からぶち当たればその衝撃できっと目が覚めるだろう。





じゃあね。









目が覚めると、やはり死んでいた。





いや、違うか







これから死ぬんだ。






見渡す限り真っ黒、そりゃそうだ。目が無いんだから。

はっきり聞こえるはずの話し声やら機械音が微かにしか聞こえない。

耳が潰れていて殆ど機能していないからだ。

口?そんなもの無いよ。手足?ボロボロだよ。







夢で見たあの化け物は""私自身""だったんだ。




お昼休みの後の数学の授業で満腹感がないのなんか当たり前だ。

夢なんだから。


お昼休み以前の記憶が無いのなんか当たり前だ。

夢なんだから。


帰路の途中で視界がぼやけたのなんか簡単な話だ。

そこで夢から覚めただけだ。





最初にこの真っ黒の世界に辿り着く前日は普通に布団に入って目を閉じた、と言ったか。


間違いではなかったんだよ、""前日""という部分以外は。潰れた耳に入ってくる微かな情報によるとどうやらそれは1週間前の出来事らしい。





誰の仕業なのかは知らないけど、私の家は放火に合ったんだ。

両親は私になんか目もくれず一目散にその場から逃げ去ったそう。

私は当然爆睡してたからしっかりと火に巻き込まれてこんな姿になったってわけ。

身体が燃えているのに起きないなんてどれほど眠りが深かったんだか。



微かに聞こえる泣き声はどうやら両親から放たれているようだ。

私を見捨てて逃げた癖にね。少し笑い声にも聞こえるような気がするが、思い違いだろう。




辛うじて一命は取り留めたみたいだけど、もうどんな手を施そうが助からないんだってさ。持って数日だとか。

被害から1週間経って、こうやって意識を取り戻せたことすら奇跡なんだろう。







最悪な人生だった。






本当に私って、救われないな








さようなら






読んでくださりありがとうございました!

気が向けばもう少し明るめのストーリーも書こうと思っています。

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