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どちらかと言えば、まとも

ポイント乞食

憐れなポイント乞食

「1:1ポイントで良いからポイントをくだされぇ。ブクマをくだされぇ。」


 田中と言うポイント乞食が葛野川(かどのがわ)の河川敷をねぐらとしたのは一年ほど前からであろうか。ぼろきれを纏った田中は、四条通(しじょうどおり)を往来する武家や僧侶、鮎売り、果ては肥溜め売りまで、とかくありとあらゆる人々にポイントをねだって日々の糧を得ていた。ここ『なろうの都』では、得られたポイントが、そのままその人物の地位に直結しているのだ。田中の様なポイント乞食は、なろうの都の中では最底辺に位置している。ただ洛外にあっては田中の様なポイント乞食は珍しい光景ではなかった。


 一方の洛中では、ポイント長者たちが華やかな生活を送っていた。作品が巻物となり都の外まで有名になったものや、作品が絵巻物となって宮中に登り詰める者までいた。


 田中もポイント長者になりたいと常々思っていた。しかし、田中には才能が無かった。ポイント長者となるために必須である、長編を書く能力が無いのだ。短編作品だけで、ポイント長者になるものが居ないわけでは無い。しかし、それはごく限られた者だけが到達できるものであって、田中の様な凡夫には、そのようなことは望めぬのである。


「わしも、転生ハーレムものや、悪役令嬢もの、追放からのざまぁもので、ポイント長者になるんじゃぁ。絵巻物になるような超大作を仕上げたる……。」


 田中は夕刻になるとそう言って、ねぐらで文章を考え始める。ただ田中自身、自分には才能が無いと良くわかっていた。幼少の頃より、作文で良い評価を受けた試しが無いのだ。しかも、なろうの都に流れ着くまで小説を書こうなどと思った事すら無かった。


 田中は魅力的なキャラクターを創作することや、惹きつけるストーリーを練ることが不得手である。登場人物は”田中”だけになることがままあるし、ただの言葉遊びに終始することもままある。そんな田中の作品には1ポイントすらつかないことも珍しい事ではない。それでも時々、おこぼれのようにポイントがもらえる。だが田中は得たポイントをすぐに散財してしまう。そうして、また、ただのポイント乞食に戻っていくのだった。


 ある日、田中は神頼みをしに葛野川西岸にある松尾大社に向かった。それはただの気まぐれであったようにも思えるし、ある種の導きがあったのかもしれない。鮮やかな朱色の鳥居をくぐり、立派な楼門を抜け境内に入ると、なけなしのポイントを賽銭箱に入れて参拝した。もちろん、『ポイント長者になれますように』との願いを込めた。ただの神頼みで、何かが変わるとは思えなかったが、それでも何か良いことがあるような期待があった。


 参拝を終え、いつもの場所で乞食稼業に勤しんでいると、洛外には珍しい直衣(のうし)を着た長者らしき人物が寄ってきて田中に話しかけてきた。


「そちは長者になりたいのかえ?」


「はい、なりとうございます。長者になりとうございます。貴殿は御長者様でございまするか?」


 田中は平伏して答えた。


「ならば、これを授けたも。これで長者になるがよかろ。」


 そう言うと、直衣を着た長者らしき人物はどこかへ消えてしまったのだった。あとには、ぽつりと一巻の巻物が残されていた。なにやら狐につままれたような気持ちの田中であったが、気を取り直して巻物を拾った。


 その日は、日のあるうちにねぐらに戻った田中は、拾った巻物を読むことにした。巻物はどうやら、ポイント長者になるための方法論が書かれたものらしいことがわかった。毎日更新するであるとか、予約投稿ではなく手動投稿で時間をずらせであるとか、魅力的なヒロインを複数用意しろだとか、主人公補正を強く掛けておくだとか、そう言ったたぐいの事が書かれていた。


 田中は、なるほど、これがポイント長者になる近道なのかと合点がいった様子であった。そして、思った。そんなことできたら最初からやっとるわボケが、と。


 こうして田中は次の日も、通りに出ていつもの様に道行く人に呼び掛けるのであった。


「1:1ポイントで良いからポイントをくだされぇ。ブクマをくだされぇ。」

出落ち感がいなめない。

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