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1日目/勇者オンライン開始/09:00

初めまして。気に入って頂けるような物語を書いていきたいと思います。

よろしくお願いします。

 『ピンポーン!』

 

 

 玄関チャイムの甲高い音が聞こえて、俺はすぐさま部屋を飛び出した。勢いよく走り出たものなので、廊下で足を滑らせながら、慌てて玄関に進んだ。玄関の扉を開けると、宅配員の兄ちゃんが待っていて、明るくハキハキとした口調で手続きを求めてくる。


 「どうも~。ありがとうございまーす」


 宅配員の兄ちゃんに軽く会釈し、玄関の扉を閉める。右手には段ボールで梱包された荷物を握り締めている。俺はその荷物を見ながら、ワクワクした気持ちを必死に抑えつつ部屋へと戻った。


 部屋には既にセットアップ済みのVRゲームコンソール『TERA』――ヘッドギア式の高性能ゲームハードウェア――の姿があり、クロステーブルの上でビール缶やつまみ達とともに鎮座していた。俺は畳の上に腰を下ろし、持ち込んだ段ボールの荷物を分解する作業に取り掛かった。必要なものはハサミ。きっちり梱包したそれを、焦る気持ちを抑えながら開封した。

 

 TERA専用ММОRPGソフト――『勇者オンライン』


 「うおぉぉぉぉぉッ――!」


 段ボールの中から現れたそのソフトパッケージを見て、俺は思わず唸ってしまった。喜びのあまり、というやつだ。何しろこのソフト、何度も延期を繰り返しており、それ故に待ち望む時間も長くなった。喜びも一入につのる。


 パッケージのビニール梱包も開けた所で、ようやくソフト本体のお披露目となった。ソフト形態はカートリッジ式、TERAのソフト挿入口は後頭部に位置している。まずはその挿入口にソフトを入れ、続いてTERAをすっぽりと頭に被る。前面をカバーするパネル画面では、『勇者オンライン』のデータダウンロードが進められている。そこまで長く時間は掛からない筈だ。



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 さて、プレイ動画配信の準備も兼ねて、このゲームソフトの概要をおさらいしたいと思う。


 『勇者オンライン』は先ほども言ったように、TERA専用のММОVRRPGソフトだ。ゲーム内容としては″勇者陣営″、つまり人類側に立ち、ユーザーやCPUによって操作される″魔王陣営″――このソフトとは別に『魔王オンライン』というソフトが同日発売されている――と戦う。これをネットのオンライン世界で、およそ数十万のユーザー間で進めていく、というのがこのゲームの肝になる。


 ゲームの勝利条件は複数の要因が左右するのだが、『勇者オンライン』では勇者が魔王を打倒することによって達成される。逆に『魔王オンライン』だと勇者の打倒になるのだが、勇者に関しては一般の魔物によって打倒することも可能――人間・亜人による殺害は″女神の加護″というシステム的に出来ないらしい――魔王自らが手を下さなくても良い。しかし魔王は自陣営側の魔族によって打倒されると、それでもゲームオーバーになってしまうらしい。


 勇者ないし魔王については、完全にCPUが操作を行うようで、その他にもストーリーを進めていく上で重要な役割を担うNPC――例えば人類側では″王様″、魔族側では″四天王″等――についてもプレイヤーは操作出来ない。このゲームでプレイヤーは、そういった主役や準主役達を支える立場の役職に就いてゲームを進めていくのだ。


 ちなみに勇者・魔王のどちらかが打倒されると、そのシーズンは終了。その後については、運営によれば、全てがリセットされた状態で再スタートされるらしい。


 『勇者オンライン』は人間・亜人によって支配された″王国″を主軸に進められる。『魔王オンライン』側は魔族によって支配された″魔界″が舞台となる。


 王国は肥沃な大地と豊富な資源に恵まれており、高度なコミュニティの形成が可能。国内の全人口は10万人。

 

 魔界は荒涼とした大地と険しい地形、不安定な天候と恵まれない要素が多い。だが、各魔族がそんな過酷な環境に適応したこともあって強く、繁殖力も人類側を圧倒している。

 

 簡単に両陣営の特徴をまとめると、『王国:資源豊富/組織的に活動し易い/人間単体だと弱い』『魔界:資源に限りがある/連携しにくい/魔物単体でも強い(種族による)』ということになる。

 

 ゲームはシーズン毎にテーマが決められ、その目標達成に向けて進められるらしい。第1シーズンは予告によると、『Build and craft』――″建築″と″開拓″を中心として、両陣営が基礎固めを行っていく。具体的には既存の村や町を拡張したり、未開の地域の開拓を目的とする。


オンラインサービス開始は、日本では2065年3月18日0時。つまり本日というわけだ。今は午前9時なので、既にゲームは開始されている。


 『勇者オンライン』は『魔王オンライン』とのクロスサーバーで、国内では5つ用意されているらしい。1サーバーにつき、20~30万のユーザーが参加、ゲームを進行させていく。




 「……おっ。ロード完了したか」


 そうこう言っている内に、データのダウンロードが終了したらしい。


 ――さて、ゲーム開始だ。


 


 

 

 

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