腕の見せ所。その3
投稿が遅れてすいませんでした。
小兎姫です。
今回も最後まで読んでいただけると幸いです。
ユウキは腰から1本の真っ黒い剣を抜く。
ユウキの打った中で最高の剣。名を憤怒。
俺は自分の打った武器の最高傑作には大罪の名をつけることにしている。
俺の剣は憤怒。ルシネのレイピアは嫉妬。フィラのサブ武器である短剣には怠惰。
それぞれが構えを取る。
武器がそれに応えるように鼓動する。
彼らの武器には意志がある。
それは圧縮され、高密度になった魔力によるものだ。
本来1つ1つの魔力の粒子には精霊が宿っている。
しかし、1つ1つのそれは小さな意志だ。
魔力を扱う者に従うことしかできない。
しかし、大量の魔力が圧縮され、高密度になることで1つの意志に統一される。
すると、そこに人格が形づくられ、1つの生命となる。
3人が魔力を流し込むと武器の魔力が跳ね上がる。
普段は勝手に動く魔力を無理やり命令して動かしている。
しかし、意志が宿ったことで全ての動きが統一される。そのため威力が数倍になる。
だが、メリットばかりでもない。
扱いが難しい上に、常時大量の魔力を注ぎ込まなければいけないため、消費魔力が大きくなりすぐにガス欠状態になってしまう。
3人がほぼ同時に駆ける。
ルシネがベルファングの足を狙う。
ベルファングがそれに気づいて上に跳ぶ。
「おいおい、その巨体で跳べるのかよ。」
「フッ…遅いな。」
ルシネに気を取られていた隙に後ろに回っていたフィラがベルファングの背中に斬りかかる。
一歩遅れてベルファングが気づくが空中にいるため避けることができない。
ベルファングの身体が地面に叩きつけられる。
「ちっ…切った感覚がないな、あそこから避けられるのか!?」
寸前で腕を振り、無理やり体勢をずらして斬撃を避けていたようだ。
しかし、すかさず走り出していたルシネとユウキが畳み掛けるように斬りかかった。
2人の斬撃をギリギリのところでベルファングが受け止める。
競り合う。
ルシネは力では勝てないと素早く判断し、すぐにもう一撃を入れる。
ユウキはそのまま力任せに剣を振るう。すると、ベルファングの腕に剣が食い込む。
「いまだ!決めてくれフィラ!」
待ってましたと言わんばかりの、悪魔のような笑みで、ベルファングの元に向かう。
「さぁ、覚悟はできているだろうな?…散れ!百花繚乱!!」
あたりに鮮血の花が咲き乱れる。
百花繚乱は、相手を幾度となく斬りつけ、まるで咲き乱れる花の如く、あたりが血に染まることからその名がついた。
ベルファングは抵抗する間もなく、命を落とす。
「ふう…ユウキ、フィラ、終わったね。」
「あぁ、そうだな。だけどフィラ、ちょっとやりすぎだ…」
「ん?そうか、悪い悪い。」
そんな話をしながら、ベルファングの素材とリフレインの花を回収していく。
これで依頼は達成だ。
「んじゃ、帰るか!」
『おう!!!』
俺たちはギルドに戻り、報酬を受け取る。
周りからヒソヒソと話し声が聞こえる。
受付の人もびっくりした顔をしている。
しかし、それも仕方ないだろう。
俺たちはたった3人でAランクの依頼を受け、Sランクはあるであろう異常個体のベルファングも倒している。
だがヒソヒソ話の中には尊敬や敬意以外の嫉妬や恐れの感情も入り混じる。
「ねぇフィラ、ユウキ。早く帰ろう?私ここの雰囲気やだ。」
「もうちょっと待ってくれよ。すぐに終わるから。」
「お待たせしました。こちらが今回のクエストの報酬になります。異常個体の撃破により、報酬が上乗せされておりますので。」
周りの視線が刺さる。
俺らは報酬の入った袋を受け取り、受付にお辞儀をしてギルドを出た。
「なんで、俺らあんなに見られるんだ?」
「仕方ないだろう。たった3人で依頼をこなして、余裕な顔してれば連中は面白く感じないだろうな。」
「そんなのただの八つ当たりです。」
「やつらも人間だ仕方ないさ」
フィラがルシネをなだめる。
他愛もない話をしながら俺たちは家に帰る。
その時、密かに運命の歯車が狂いだしていたことに、俺たちは気づいていなかった。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
みなさんに楽しんでいただけるように頑張りますので、次話もよろしくおねがいします。




