ORIGINAL
僕は本当の自分が分からない。今までの人生、窮屈なばかりで、そのくせ何も得ることはなくて何もない・・。 僕は目を閉じる。
「本当にそうか?」
声が聞こえる。低くくて、高圧的で、でもどこか聞き覚えがある。
「君は誰?」僕は尋ねる。
「俺が誰か?そんなことはどうでもいい。今はお前の話をしている。」声の主は即座に、やや僕を嘲る調子で答えた。
声の主は続けた。
「お前は自分が分からないとほざいたが、本当にそうなのか?自分を知るという作業に何年も費やしてきたのか?」
こいつは何を言っているんだ?僕は今までそのために、幸せになるために努力してきた。自分が生まれてきた意味を、使命を見つけるために・・。
「お前は自分が分からないんじゃない・・。」
ジブンヲシルノガコワインダ・・。
「何を言ってるんだ、僕はこれまで空っぽだった人生を少しでも埋めるために色々な場所へ行ったり、色々な人と出会ったり、色々なことを学んできた!」
「だが、何も生まなかっただろう?」
「違う!まだ努力が足りなかっただけだ!いつか僕が理想へ辿り着くその日まで。」
声の主はより低い、冷たい声で続ける。
「ありもしない現実、未来。遠く、かなわない桃源郷を目指す。かなわなければ、遠い場所から美化した過去を懐かしむ・・。お前はそれを永久に続ける気か?」
「・・・・・。」
「図星のようだな。お前のような人間にはガラス越しにみる宝石を羨ましく見ているような人生が似つかわしい・・。」
僕の心は張り裂けそうだ。何も分からない、考えられない。 今の僕にはこうするより他はない。
「君は、君は誰なんだい?」
「分かっているはずだ。」
声の主は無機質な声で答えた。
「お前は幸せな人生、使命を見いだすため外に目を向け、無意識に外部の人間の影響を受け、コピーをしてきた。外に目を向ける前にすることがあったはずだ。」
「僕には、もう分からない・・。」
「人は生まれながらの役割がある。その役割から上を行くことも、下を行くこともない。」
「お前はそれが怖いのだ。人生という、運命という大きな流れにいくつく先が。自分の限界が。」
「もうお前を外に出しておくのも潮時のようだな・・。いささか疲れてきた。」
「僕はどうしたらいい?」
「分かっているはずだ。コピーは人生にいらない。必要なのは個人が持つオリジナルだ。」
「僕は君を外に出していいだろうか?」
「お前が出て満足できる人生を送れたか? 」
「それもそうだね。どうか、どうか僕をよろしく。」
僕は目を開ける。
僕は自分が分からなかった。
だが、今は違う俺は外部のコピーではない。 世界でただ一つの固有のオリジナルだ。