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こル・ココる  作者:
第八章 『忘』
64/65

追いつめた、そして信じた。

 



 ◆




『「空森鳴芽。……忘れてもいいよ」』


 蝉の声が喧しく、日差しが突き刺すように強い、夏のあの日。

 病院の庭で彼女と初めて会ったときにそう言われたことを僕は決して忘れないだろう。

 彼女の表情を、彼女の諦めたような寂しい目を、忘れることはないだろう。


 それから。


 友達になって一緒に遊ぶようになった。

 祈梨ちゃんとともに病室で漫画を読み漁っては感想を言い合って、語り合って、戦い合った。

 曜さんとともにボウリングやカラオケ、ゲームセンターに行っては、笑い合って、からかい合って、ふざけ合った。

 楽しかった思い出を作るにつれて、彼女の顔は明るくなっていった。

 寂しそうな様子はなくならないけれど、少なくとも希望のある顔つきに見えた。


 しかし、それも記憶がある間の、束の間の希望だった。

 発作が起きれば、また最初の目に戻っていた。

 必死になって積み上げてきたものが、築き上げてきたものが、理不尽にも崩れるでもなく、壊れるでもなく”リセット”されて、なかったことになっている。


 それは気が狂いそうになるのだろう。

 よくぞ医月は、7回もそれを繰り返したものだ。

 賞賛されるべきことだ。

 僕にされても嫌だろうけれど。


 ただ、そんななかったことになってしまったことも取り戻せる。

 記憶を思い出させれば、あの楽しかった頃の、少しは満ち足りた彼女になると僕と医月は信じていた。

 だけど、違った。

 違った。

 そんな希望的観測は間違いだった。


 記憶を思い出させても、思い出を取り戻しても変わらない。

 しぼんだまま、変わらない。


 これだと忘れているのか思い出しているのか、泉美さんが気づかないのも当然だ。

 それくらい、今目の前にいる彼女の様子はあの忘れられない第一印象となんにも変わらなかった。



 ◇



「………だから……『忘れてもいいよ』って言ったん……じゃん」


 この台詞からわかること。

 鳴芽は忘れる前に僕に対して言ったことを覚えている。

 つまり、


「思い出したんだね」

 と、いうことになる。


「ほんとに……思い出したの………?」

 医月は受け入れがたい現実を目の当たりしているように狼狽えながらも、鳴芽に尋ねる。


「うん………沙織」

 その答えに医月は確信を得たのか、鳴芽のほうへと駆け寄り抱きしめる。

 すすり泣きながら、何度も言う。


「うう、鳴芽、……っ、なる、めぇ………うぅ、ん、鳴芽………!」


「ごめんね……沙織………何度も……忘れて。………いっぱい、いやな思いさせちゃって」


「う、ううん……私の方こそ、ごめん。ごめんなさい。諦めちゃって、逃げちゃってごめん……!!」


 記憶を思い出した鳴芽が謝って、医月も自分の過ちを謝ることができた。

 医月がどうしても成し遂げたかったことが達成できたのだ。

 なんとも感動的でハッピーエンドだ。一見すると。

 でも、どうしても僕にはそうは思えなかった。

 感極まって抱きついている医月はまだ気づいていない。

 いや、気づけないだろう。

 鳴芽が全然、記憶が戻ったことに喜んでいないことを。


「ねぇ、鳴芽」

 だから、僕がやるしかない。



「また僕たちのこと忘れたいって思ってるだろう?」



「………!!」

 鳴芽は僕を見て、驚いたように目を見開く。


「え」

 医月は鳴芽から体を離し、僕へと振り返る。

 目を真っ赤にした彼女は、鳴芽の肩を抱き寄せ戸惑いながらも僕に問いかけた。


「な、なにを言ってるんですか、先輩。せっかく思い出せたのに、そんなわけないじゃないですか!」


「そうだね。僕もそう思いたいよ。でもさ、もう一度考えてくれ。どうして鳴芽は、僕たちのことを忘れたんだい?」


「どうしてって……それは………」

 そこで医月は、はっとなった。

 流石、頭の回りが速い。どうやら気づいたようだ。


「そう。君が言ったんだ。鳴芽は、父親を亡くした辛い気持ち、それと親しい人をまた亡くしてしまう可能性から、自分の心を守るために記憶を失くす。そんな『忘れたい』と思う原因がなくなったわけじゃないんだから。それから、これが大事なことだけど―――――」

 僕は言いかけて、医月ではなく鳴芽に向かって言う。


「―――――自分でわざと記憶を消せるよね?」


 僕のそんな言葉に鳴芽はバツが悪そうな顔で俯く。

 それは肯定ととってもよいのだろう、その様子を見てまた医月は狼狽える。


「そんな、わけ……ないでしょう」

 言いながらも医月は、頭で理解したくなくてもわかってしまう。

 ”親しい人のことを忘れる”の”親しい人”というのは他でもない鳴芽が決めること。

 それを忘れたいという気持ちがあること。

 そして、泉美さんがさっき言った”説得”という言葉。

 これらのことが信じがたい真実へと繋がってしまう。


「そんな………。嫌……、私のこと忘れたくて忘れたって………。そんな………」

『受け入れ』難いだろう。

 大切に思っていたから鳴芽のために悲しいのも寂しいのも傷つくのだって我慢しながら頑張って、でも耐えきれずに逃げて。

 逃げても、罪悪感に後ろ髪引かれる思いをもって過ごし、向き合えなくても、どうにかできないかとずっと病気について調べていた。

 それで、やっとの思いで逃げてしまう自分を乗り越えて、ここまで来たというのに。


 ”忘れたいから忘れた”


 やむを得ず自然とではなく、明らかに故意に忘れた。

 そんな真実だけが医月には残った。

 残酷な真実だけが。


「本当は嫌いだったの? 私と一緒にいるのが嫌、だったの?」


 この前の大雨の公園のときとは、また違う。

 本当に消えてしまいそうで、あと少しで壊れてしまいそうな細い声で囁く。


「それはちがう………よ。沙織がわたしのためにいっぱい……がんばってくれたこと………今は覚えてる」


「―――――っ。じゃあ、なんで!?」


「全部わたしが悪いの………。わたしが……弱いのが………。だから……沙織こそ、わたしのことは忘れて………? もう………もう苦しまないで………!」

 現実を受け入れきれない医月とは対照的に、鳴芽はもう何もかも受け入れているようだった。

 いや、違う。

『受け入れて』いない。 

 これは、諦めだ。


 僕たちのことを忘れないようにすることは不可能だと言わんばかりの態度だ。

 僕はそれを見て、少しだけ()()()()()


「ちょっとごめん、医月。鳴芽と二人で話させてもらってもいいかな?」


「先輩………」

 医月は名残惜しそうにしていたが、もはや自分ではどうにもできないと悟ったのか素直に鳴芽から離れた。

 入れ替わるように僕は鳴芽に少し近づく。


「鳴芽。確認だけど、君が僕たちのこと忘れたくなるのは、僕たちを失ったときのことを考えるから?」


「…………。うん、………そうだよ」

 失う、つまり僕たちが死ぬときのことを想像するということ。

 いくらなんでも、そんなの考えすぎだと思う人もいるだろう。


 しかし、鳴芽はまさに突然の交通事故で死にかけたし、愛する父親を亡くしている。

 つまるところ、鳴芽はその事故から全く立ち直っていないのだ。

 だから、親しい人が死ぬことを考えてしまう。

 考えては父親のことを思い出してしまう。

 そして、わざと忘れるのだ。

 そんな辛いことなど最初からなかったことにしてしまおう、と。

 自分が忘れることで友だちが悲しむとしても。

 楽しかった思い出もろとも失くなってしまうとしても。


 忘れる。


 その発作に抗う力が鳴芽にはないんだ。


『全部わたしが悪いの………。わたしが……弱いのが………』


 鳴芽はすべてわかっている。

 自分が辛い過去を『受け入れ』れば、友だちを悲しませずにすむことを。

 でも、『受け入れ』られない。

 他でもない、鳴芽の『心』がそうさせるのだ。


 ならば、友だちである僕たちが助けるしかない。


「僕はもう覚えていないんだけど、今の君なら分かると思う。僕は君に何回自己紹介したかな?」


「………………え?」

 そんなことを訊かれるとは思っていなかったのだろう。

 鳴芽は調子外れな声で訊き返す。


「よく思い出してほしいんだ。鳴芽が忘れて初めて会う度に僕は必ず自己紹介をしたと思う。それは覚えてる。例えば直接会ったりとか、電話でしたこともあったし、泉美さんが一緒にいたときもあったね―――――」


 初めて会った8月。

 入院していた僕の目の前で忘れてみせた。

 多分、あのタイミングで忘れたのは父親のことを思い出したからだろう。

 それから僕は祈梨ちゃんと約束をした。

 体が快方するまで時間も余っていたし、鳴芽も同じ病院で検査をするから比較的会いやすかった。


 まだまだ入院生活をしていた9月。

 退院に向けて過酷なリハビリをしていた時期だ。

 その頃も鳴芽とは何度も会っていた。

 そういえば泉美さんと知り合ったのもこのときだ。

 泉美さんのおかげで、鳴芽と会いやすくなった。


 文化祭が始まる10月。

 ひょんなことから文化祭実行委員になった。

 入院で遅れた勉強を人一倍やった。

 そんな中でも鳴芽とは時間を見つけては会った。

 高校生活で一番忙しかったと思う。

 だから、茜音さんのことで嫌がらせをしてきていた瀬戸津さんのことは放っておいてしまった。


 ハルとケンカした11月。

 なおも鳴芽と会った。

 しかし、会っては忘れられてをずっと繰り返していたので、変化を見るために曜さんと会わせた。

 結果は良くなかったけれど。


 そして、祈梨ちゃんと意気込んだ12月。

 今月は一回も忘れらていないし、親しくもなっていない。

 だが、一番進展した月だった。


 この四か月のことで僕が思いつく限りのヒントを出す。

 なぜ、そんなことをさせるのか意図を汲めず、困惑しながらも指折り数える鳴芽。


「どう? 何回かわかった?」


「………十回、だと思う」


「あれ、そんなもんか。まぁ、そんなもんだろうね。それで、どうする鳴芽?」


「どうするって………?」


「君がまた忘れるとしよう。これからも僕や医月のことをキレイさっぱりに忘れたとしよう。でも、何も変わらないからね。僕は忘れてしまった君と友だちになり続ける。何度もだ。君が忘れずにいられるまで、何度も何度も」


「そんなの………できるわけ、ない」


「できるよ」

 僕はあっさりと即答する。

 それに鳴芽は驚愕する。

 あれだけ会ってきたというのに、どうやら僕についてよくわかっていないらしい。


「僕は医月や祈梨ちゃんみたいに君に忘れられたからって傷ついてないからね。『またやり直せばいいか』くらいにしか思ってない」


「………………。でも、それが………なんだっていうの?」


「忘れても無駄ってことだよ。君は一生、友だちを忘れ去ることはできない。僕がさせない。君を一人ぼっちにさせるもんか」


「なんで……なんでそこまで、するの? 向介も……沙織も………どうしてわたしなんか、のために………」


「君が『楽しくない』って言ったんじゃないか」


「っ!!」

 そう。

 あれは曜さんを紹介した喫茶店で話していた。

 そのときの鳴芽は記憶を失くしている状態なので、今とは違う考え方なのかもしれない。

 それでも、それが本音なんだ。

 忘れても現実が良くなったわけじゃない。

 寂しいって、そう思っているんだ。

 あの日、めいっぱい遊んだからわかる。


「君は忘れない方が幸せだよ?」


 これが僕の絶対的な結論だ。

 誰にも、鳴芽にだって覆させない、僕の想いだ。


「………………」


 鳴芽は立ち尽くし、項垂れている。

 心の中で戦っているのだろうか。

 自分の弱さと。衝動と。病気と。


 冷静沈着で、感情よりも理性が強そうな医月だって、苦い過去から一心不乱に逃げた。

 それは逃げることができたから逃げたんだ。

 もし、もっと僕が相談室の扉の側に立っていたら、医月は”逃げる”を選ばず、別の行動にとっていただろう。

 不快を避けるのは人間として当たり前だ。

 逃げる術があるのなら、迷わずとるのが本能だ。

 鳴芽は、『忘れる』という簡単に逃げる術を常にもっている。

 もっているのに、使わないように生活しなければならない。

 人としての本能に抗い続けなければいけない。

 それが、どんなに大変なことか。


 どれだけの精神力を必要とするのか。

『性質』をもつ僕にはきっと共感してあげられない。同情すらできない。

 そんな僕だから、さらに鳴芽を追いつめることをわざと言う。


「鳴芽、君はきっと忘れずにいられるはずだ。できるはずだ。逃げるんじゃない。大好きなはずの父親との記憶を手放すな。僕のことを、曜さんのことを、祈梨ちゃんのことを、そして医月のことを”なかった”ことにするな。僕たちは友だちだ。友だちのことを忘れるんじゃない!!」


 僕の言葉を聞きながら、鳴芽は苦しむように頭を抱え込えて蹲る。

 それは今にも”発作”を起こし、激しい頭痛に襲われる予兆のようだった。

 それでも僕は止めない。


「君はもっと周りを――――――」


「―――――先輩もうやめてください!!」

 彼女の様子を見た医月がたまらず僕を制止しようと、腕を引っ張った。

 そのときだった。


「う、ううう、……う、うるさい」


「鳴芽…………?」

 医月は、信じられないものでも見るかのように固まる。

 僕だって、そうだ。

 鳴芽が今まで乱暴な物言いをしているのを見たことがない。

 喋ることが苦手そうに、つっかえたり、間をたっぷりとったりする話し方だ。

 決して『うるさい』などという言葉遣いがしていなかった。

 しかし、紛れもなく鳴芽の声で聞こえた。


「なんで……! なんでなんでなんでぇ!! 向介に……そんなことぉ、言われなきゃいけないの!? ………向介はぁ、し、知らないでしょ!? お父さんのことも、わたしがどんな事故にあ、……あったかもぉ! なんにも…………!! なんにも…………!!」


 鳴芽の感情が発露する。

 これは、そう、”怒り”だ。

 無神経に、自分のことを追いつめてくる僕への怒り。

 これが鳴芽の本音。


「じゃあ教えてよ」

 僕は気圧されない。

 彼女の怒りを『受け入れて』、僕は向き合う。


「痛かった。怖かった。急に車がつっこんできて。死んじゃうのかなって。でも、生きてて。助かってて。よかったぁってなって。でも、お父さんは死んでて。いなくなってて。葬式もいけなくて。お別れも言えなかった。わたしはお父さんともっと一緒にいたかった。もっともっといたかった。わたしが大人になっていくのをお母さんと一緒に見てほしかった。親孝行したかった。幸せな時間を過ごしたかった。一緒に生きてて、ほしかった。ほしかったよぉ――――――――――」


 泣きながら、つっかえながら、しゃくりあげながら、目をこすり真っ赤に腫らし、人目も憚らず、思い思いの心の内を、長い時間をかけて鳴芽はそう叫んだ。

 後ろにいるお墓にもきっと届くくらいに大きく、大きく。


 医月と泉美さんが鳴芽へと駆け寄り、抱きしめる。

 みんな涙を流していた。

 僕を除いて。


「それだけの想いが、君にはあるんじゃないか、鳴芽。鳴芽。鳴芽! だったら忘れたらダメだ! 絶対に! その”想い”こそが『君』なんじゃないのか!? 捨ててしまっていいのかよ!!」


「う、うう……ぅん、………ううん、よく、ないよぉ。忘れたく…………ないよぉ!!」


「なら今ここで、刻み付けろ! 自分の心に、頭に、脳みそに! しっかりと焼き付けろ!」


「でき、ない……よ。………む、むりだよ…………っ」


「できるよ」

 僕はしゃがみ、くしゃくしゃな顔と目を合わす。

 見つめる。

 想いをもって、まっすぐに。


「う……ぐ………ぅ」

 迷い。

 葛藤。

 不安。

 悩み。

 揺らぎ。

 顔を上げ。

 心に芽生えた。

 淡い萌芽を言葉に。

 紡ぎ出そうとしていく。


「できるのかなぁ。………わたしに、でき、る………かなぁ」


「できるさ。だって君はどうしたって忘れていないものがあるだろう」

 僕は”その人”を指差す。


「おかあ、さん………?」


「そうさ。友だちよりも、まず君は泉美さんのことを忘れてなきゃおかしい。誰よりも君のお父さんのことを思い出させる人物だからね。でも、君は泉美さんのことを忘れたことなんてないだろう?」


「…………ない」


「じゃあ、君は泉美さんのことは忘れるまでもないくらい好きじゃないのかな?」


「大好きだよ」

 迷いなく答える鳴芽を見て、泉美さんは抱きしめる力をさらにこめる。


「僕たちはそこが疑問だった。”親しいと忘れる”のに、”大好きなのに忘れない”。この矛盾がなんなのか。君なら答えられるんじゃない?」


「……鳴芽」

 先ほどより落ち着いたと判断したのか、医月と泉美さんは鳴芽から離れ、手を引っ張り、一緒になって立ち上がる。

 繋がった手は残したまま、鳴芽ははっきりとこう言った。


「お母さんには、わたししかいないから」


 夫に先立たれ、その上、娘は自分のことを忘れてしまったとなれば、さすがの泉美さんも正気ではいられないだろう。

 つまり、鳴芽は泉美さんのために忘れたくても忘れられなかったのだ。

 泉美さんが壊れないように。

 だったら、


「君は人のために忘れないでいられる人じゃないか」


「…………あ」


「だから、できるよ。きっとできる。僕は信じるよ、鳴芽を。ね、医月」


「………はい。私も信じるから。大丈夫よ、鳴芽。思い出せるってわかったんだもの。もし、忘れてしまっても、またやり直せばいいだけだわ」


 その通り。

 今回、鳴芽を意図的に思い出させた時点で僕たちの目的はほとんど果たしている。

 医月が言うように、やり直せばいいだけなんだ。

 たったそれだけ。

 死に別れたわけじゃない。

 友だちじゃなくなったわけじゃない。

 僕たちが諦めない限り、この関係に終わりはないんだ。

 どこまでも僕たち次第でしかない。

 そんなの。


「当たり前のことだな」


「何かいいましたか?」


「………ははっ。いや、なんでもない」


 かくして、何か月も長きに渡った鳴芽の記憶の問題は万事解決とはならなかった。

 それは、これから先の僕たちと鳴芽の心の在り方次第となるだろう。

 でも、そんなのは普通の人間関係となんら変わりなく。

 ケンカすれば離れ、また近づきたいなら仲直りする。

 そんな平凡な日常を送るだけ。


 だけど、そんな平凡こそが医月にとって望んでやまなかったことだった。


「…………わたし、みんなのために……がんばる。だから………これからも―――――」


 そう言う彼女。


 忘れたくても、忘れられない。


 そんな表情だった。



「―――――友だちでいてください」




 ◆





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