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こル・ココる  作者:
第七章 『悲』
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談後やっつめ 旅の終わり、バスの中。

 



 ◆




 ハルからの不意打ちを受ける少し前。

 行きと同じように新幹線を乗り継いで、駅から自分たちの町へと帰るバスの中。


「代、起きてる?」


 旅の疲れのためかバスの中を見回しても、ほとんどの人が気持ち良さそうに寝ている。

 しかし、通路を挟んで隣に座る代は起きているようだった。

 僕の横にいる北方くんはいびきまでかいているというのに。


「……なんだよ」


 いつもよりぶっきらぼうに聞こえるのはコイツも睡魔に襲われているからなんだろうな。


「聞きたいことがいくつかあるんだよ。……ハルのことで」


「………………」


 ハルと仲直りしたことは当然代にはすでに伝えていた。

 でもそのときには聞きそびれていたことをここで聞いておこうとそう思ったのだ。


「僕はずっとハルはお前のことが好きなんだと思ってた」


「……そうか、晴夏はちゃんと言えたんだな」

 僕の一言によって代は橋の下でのハルとのやり取りを察したようだった。


「それで? 聞きたいことってのは何なんだよ?」


「その……代は中学の頃から知ってたんだよな? ハルが僕を好きだってこと」


「まぁな。中学のとき……まだお前とつるんで間もないときだよ」


「お前にハルを紹介したんだっけ。だとすると会ってそんなに時間が経ってないのにハルはお前に頼みごとをしたってことなのか」

 頼みごと―――自分は代のことが好きだということにしてほしい。

 ハルが代のことを隠れ蓑にしてたって言っていた。


 でも、あのハルが会ったばかりの相手にそんなことを頼むものなのか?

 考えもしないと思うんだけど。


「それは違う」


「え、なにが?」


「晴夏が提案したんじゃない、俺が晴夏に提案したんだ」


「そ、それってつまり………」


「ああ。晴夏がお前のことを好きってことはすぐに気づいたぜ」


「そんな馬鹿な。ずっと一緒にいる僕が気づかなかったのになんで会ったばかりのお前にはわかったんだよ。ハルだって隠そうと頑張ってたらしいのに」


「あんなんわかるに決まってるだろ」

 ……そんなにわかりやすかったのか?


「だってよ、明らかにお前と話すときのアイツは顔がだらしなかった」


「もっと他の表現はなかったのか」

 顔がだらしないってどんな状態なんだよ。


「にこにこにやにやにまにまって顔だった」


「そんなに僕は笑われてたの!?」


「俺も内心でお前のことはってるけどな」


「絶対ハルとは違う笑い方だろ」

 滑稽に思っているだけだろ、お前は。


「ま、なんだろうな。だからよぉ……ハルが今回のように暴走したのは俺の責任なんだよ」


「………それは」


「違う、とは言い切れない。あのとき晴夏の間違いに協力したのは紛れもなく俺なんだよ。アイツに……苦しい道を歩かせて、悲しい思いをさせたのは」


 初めてだった。

 ここまで代が自分を悔いているところを見るのは。


 ―――いや違うな、二度目だ。


 僕と代がつるむようになったきっかけ―――あの事件以来か。



「お前らが仲直りしてくれて一番ほっとしてるのは俺なんだよ」



 その言葉を最後に代は口を開くことはなかった。

 クラスのみんなと同じように寝てしまったのか、あるいは。


 だから、これから僕が何を言っても黙って反応を示すことはこのときなかった。


「僕は代がどんな人間なのか知ってる。悔やむんなら勝手に悔やめばいいよ。どうせお前のことだからすぐに立ち直るんだろうな。………それで」


「………………」


「それで立ち直ったんならハルと話してみれば? ハルがどう思ってるのかを聞いてから自分なりの許し方を見つけなよ」


 本来ならここまで言わずとも代は自分で自分を乗り越えていく。

 代はそんな人間だ。

 そんな人間だと僕は知っている。


 世話を焼いたついでもう一つだけ言っておこう。

 今度は小声で周りに間違っても聞こえないように。

 だから代にももしかしたら聞こえないかもしれない。


 でも、言おう。


 僕なりに彼女たちに報わないといけないとそう思うから。




「僕は――――――――――――――――」




 聞こえているのか、聞こえていないのか

 やっぱり、代は黙ったままだった。




 ◆





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