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こル・ココる  作者:
第三章 『恩』
19/62

談後みっつめ 人の勘違いというのはやっかいなもの。

 



 ◆




 医月に珍しくも励まされた僕はとある課題にぶち当たっていた。

 白城さんの誤解を解くこと。

 彼女はおそらく僕のことを女性下着を集める変態として認識している。

 このままでは曜さんの問題どころではないので、早急に解決しなければならない。

 変態扱いを受けるのは医月だけで十分だ。


「ちょっと白城さ………」


「ひゃあっ」


「………普通に傷ついた。って逃げないで逃げないで。お願いだから」


「いやぁ」


「『いや』って………、『いや』って………」


「あの………、趣味は人それぞれだと思いますから……。それで、向介くんの何かが変わるわけでもないですし………、だから……大丈夫………ですよ?」


「たっぷり逃げた挙句屋上まで来て、顔も合わさないままそんなこと言われてもなぁ」


「わたし、向介くんがどんなになっても受け入れますからぁ」


「あれ?ちょっと待って、涙ぐんでないですか……?」


「だから犯罪者さんにだけはならないでくださいね………、どうしても我慢できなくなったらわたしのを………」


「それ以上言ったらダメだ!取り返しがつかなくなる!…………ねぇ聞いてよ、白城さん。僕は別に女性の下着には興味ないんだ」


「え!?じゃあ向介くんは男性の下着に興味が!?」


「とにかく僕は下着には興味あるやつになっているんだね」


「そんな………、だったらわたしにはどうしようも………」


「どうもしなくていいから。全部なにからなにまで白城さんの勘違いだから」


「えっ!?だって……!だって……!!」


「お、落ち着いて!まずは深呼吸だ。はい、ヒーヒーフー」


「それだとラマーズ法になってしまいます」


「………意外と冷静なんだね」


「勘違いってことはつまり………、向介くんはその、下着には全く興味がないってことですか?」


「そうそう」


「女性用も?」


「もちろん!」


「男性用も?」


「うん!」


「………………え?」


「え?」


「じゃあ向介くんは……えっと、なんて言ったらいいか………、その、下着を身につけない人だったってことに………」


「そうなっちゃう!?そうなっちゃうの!?白城さんはどうしても僕を変態にしないといけない病気にでもかかっているんじゃないの?!」


「たとえ向介くんが下着を穿かない人でも、わたしは………わたしは………っ!」


「僕とつきあっていくのに断腸の思いで覚悟を決めなくてもいいよ?確かに僕は異常だ異常だとは言われるけれどそっちの意味ではないからね?そっちの意味では僕は普通だから」


「そんな向介くんと付き合っていくだなんて……」


「そこ!?」


「気持ちはうれしいですが………、正直、照れくさいですけど、その……こ、恋人になるにはまだお互いのことをよく知ってからと言いますか………。でも、わたし、向介くんのことなら必ず好きになれますから!よろしくお願いします!」


「話がどんどん飛躍していく……。白城さんがこんなに天然で一度思い込むとこんなにやっかいだなんて………」


「高校を卒業したら二人で暮らしたいですね。結婚はお互いちゃんと自立してからで、子供は………」


「話の飛躍に歯止めが効かないっ」


「お墓は………」


 この時が放課後でよかった。

 僕が白城さんの誤解からの誤解、勘違いに重なる勘違いを解いたのはたっぷり下校時間を過ぎたころだった。

 そのあと、流石に曜さんについてどうこうしようという話ができず(僕が『受け入れ』られる疲れを超えたから)その日は別れた。

 後日、天灯先生と相談して土曜日の作戦に至ったのだが、今回一番僕が労を感じたのがこの白城さんとの会話だったことを考えると、白城さん相手に迂闊なことはできないなと思ったそんな六月のある日だった。


 はぁ………。





 ◆




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