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こル・ココる  作者:
第三章 『恩』
17/62

話した、そして戸惑った。

加筆しました。




 ◆




 結局。

 曜さんはバイトを休むことになり、あれだけ勇ましい登場と男性三人を倒した立ちふるまいからは想像できないほどの落ち込みを見せていた彼女にお詫びとお礼の意味で近くのファミレスで一緒にご飯を食べることにした。

 もちろん、僕の奢りで。


 今日会って別れたばかりの女の人と顔を合わせて食事をするというのはなんとも奇妙かもしれないが、初対面が下着姿なのを思うとそれもさして抵抗もない。

 久しぶりにファミレスに来て、変な懐かしさを感じているうちに曜さんが勝手に僕の分と自分の分の注文を済ませていた。

 確かにお詫びとお礼のつもりで食事に誘ったけれど、せめて自分が食べるものくらいは選ばせて欲しかったものだ。


「なにを頼んだんですか?」


「ミックスグリル」

 まぁ、確かにおいしいけれどね。

 ミックスグリルが一般的か定かではないので一応説明させてもらうと、鉄板の上にハンバーグにウインナー、そしてお肉に付け合わせがのっていて一皿で大満足のメニューだ。

 なかなかボリュームがあって代のように血気盛んな男などが食べそうなイメージで女性があまり頼んでいるのは見たことがない。

 よほど曜さんはお腹が空いていたんだろうか?


「私はミックスグリルしか認めない」


「………………」

 普段からだった。


「ところでよアンタ………名前は一円つったっけ?それは苗字でいいのか?」


「そう、だね。そういえばフルネームで紹介してなかったな、改めて僕は一円向介といいます」


「そうか、やっとすっきりしたぜ。最初、一円って聞いたときは私の聞き間違いかと思ったからな。……しっかし一円なんて変な名前だな」


「あはは。そういう普通のリアクションをする人は最近いなかったからなんだか新鮮だよ」

 最後に話題にのぼったのは四月にアスカと初めて会ったときくらいか。


「話逸れちまった……、向介はなんでさっき襲われてたんだよ。あの男ら見る限り学生でもないみたいだし」


「ただのカツアゲだよ」

 まさか恨み晴らしサイト『ヘルヘイム』や横縞くんのことを説明するわけにもいくまい。

 僕の誤魔化しが効いたのかそれで納得したようで、曜さんは運ばれてきた水をずずっと飲んだ。


「まぁー確かにアンタって見るからに貧弱そうだからな、良いカモに奴らには見えたんだろう」

 痩せ型ではある僕だが貧弱と称されるほどひょろっちいつもりもないんだけど……、鍛えた方がいいのかな。

 中学時代は僕のことは代があらかた守ってくれていて、僕が身体的に強くなることは必要に迫られるほどではなかった。

 けど、今となってはアイツとも別行動が増えてきて、案の定僕のことだから横縞巧くんという危険人物に目をつけられる今日この頃だ。

 僕も曜さんのように空手だか合気道だかわからない格闘技を身につけるべきかも。

 実質、もしかしたら白城さんを巻き込んで力不足で守れないってことになりかねなかった先刻もある。

 とかなんとか考えても本気ではないが。


「それにしても……曜さんって強いんだね。空手だって言ってたけど……」


「ああ、子供のときに父に習わされててな………っていうか私の話はもういいんだよ。今度はアンタの話を聞きたいね」


「僕の話なんて聞くに堪えないと思うよ?」


「どんだけ卑屈なんだよ……。まーそうだな、アンタのクラスの奴らに興味があるな」

 なんだかんだで自分の今のクラスメイトのことは気になるのかそんな話題を振られてしまった。

 僕は別に無理して曜さんに学校に来て欲しくないけど、白城さんがそうしたいのであれば協力すると決めた以上、少しでも曜さんのなかにある興味を高められるよう尽力しようではないか。


「じゃあまずは曜さんも知ってる僕と一緒にいた白城さんという女の子から。下の名前は輪花といって僕らのクラス委員を務めてて、曜さんへの訪問もその責任からきたものだと思うけど、それがなくたって多分彼女はそうしたと思う。そんな女の子だよ」

 僕も最近知り合ったばっかりで知り始めている最中だけどそれでも言い方は悪いがずっと値踏みしていたからわかる。

 彼女はきっと誰よりも優しいのだ。

 人を見切る力があるアスカだって白城さんのことを『良い子』だと言っていたのだ間違いない。

 少々大袈裟かもしれないが先日の横縞くんの例もあるから許して欲しい。


「次に僕とは中学からの腐れ縁とも言うべき倉河代っていうやつで。代はボクシング部で割と有望らしく今度の大会にむけて今は頑張っているようだけど、性格も顔も無愛想の一言に尽きてしまう。……未だに僕が不思議に思っているのがそんな無愛想なアイツが女子にはちゃっかりモテていることだね。遺憾なことに恋愛事に疎いか知らないけどアイツはそのことを嬉しがっていない」

 アイツのせいで何人の女の子が涙を呑んできたか………いや、知らないけど。

 でもそのうち逆恨みだなんだで背後から刺されそうな勢いではある。

 なんなら僕と同じように『ヘルヘイム』に賞金首として載っていてもおかしくないくらいだ。

 幸いなことにアイツは強いから大事にはならないだろう。


「あとはまぁ僕の隣の席である飛鳥田祀梨かな。その子は見た目の黒くて長い髪型も相まって和風美人ではあるんだけど、その実妙に機械に詳しかったり慎ましくないと言えば語弊があるけど、まぁ明るくてとっつきやすい人だよ。ああ、あと人の名前を読めない」

 アスカの不思議な雰囲気はクラス替えのときから感じていた。

 彼女といるとなんでも見透かされている気分になることがたまにあるくらいの不思議さだ。

 横縞くんの相談のことで相談したときも僕からの伝聞であったにも関わらず彼のウソについては感じ取っていたのだからまだまだ測り知れない。


「以上でクラスメイトの紹介を終わります」


「人数少なすぎるだろ!」

 僕が話している間相槌ばかり打っていた曜さんが遂にコメントもといツッコミをしてきた。


「あ、間違えた。僕の知っているクラスメイトの紹介だった」


「それでも少ないんだが………、アンタを含め四人分しかクラスの実態が掴めていないんだが………」

 離島の学校かよ、と極めつけには言われてしまった。


 僕の交友関係などたかが知れているのは承知だし、今更凹む心も持っていない。

 恐ろしいことに『ココロ相談室』をやっていなければ学校の知人は紹介した三人と大差ないのだから、僕は今流行りのコミュ障というやつかもしれない。

 僕こと一円向介がどうしようもない人間だと再認識したところでお待ちかね今夜の晩餐、曜さんおすすめミックスグリルが運ばれてきた。

 店員さんの決まり文句に応対しながらさっそくおいしそうな料理に手をつけた。


「そういえばということでもないけど曜さんってなんか手慣れてる感じがあったよね」


「なにがだよ?」

 ナイフで大きめに切り揃えたハンバーグをフォークかと思いきやテーブルに常備されている割り箸で食べていた曜さんは質問がよくわからないという顔をした。

 どうでもいいけど曜さんは先に料理を食べやすい大きさに切ってまとめて箸で食べる派みたいだった。

 どうやら面倒なことは先にやる性格のようだ、とそんな心理を読んだ気になってみる。


「僕を助けたときだよ。これでもかってくらい良いタイミングだったからさ」


「家でも話した私が当時のクラスメイトに恐れられてた理由がそれだよ。私は所謂ヤンキーでな?ケンカ慣れしてるってわけだ」

 ヤンキーはヤンキーでもみんなが恐れるほどのヤンキーなのだからその『ケンカ慣れ』はなかなか恐ろしいものがあった。

 僕の周りってこういう人が多いよね。


「人間て言うのは怒りだすとひとつのことに集中してしまうんだよ、すると途端に隙ができて簡単にやられる。あん時はアンタが敵を怒らせたおかげで一撃で済んだんだ」


「やっぱり手慣れてるよ」

 どれだけの経験値を有しているんだよ。

 だが、そこで気になることができた。

 いや違う、気になったいたことを思い出した、だ。


 昔はヤンキーだと称している曜さん。

 どうやらケンカに明け暮れていたみたいで、そして恐れられていたせいで誰も近付かず担任の先生ですら疎むほどの問題児。

 そんな人がどうして進学校である露草高校に?


「曜さん」

 そろそろ完食してしまいそうなところで僕はまた改めて尋ねる。


「曜さんはなんでクラスメイトに話しかけられることもなく父親と弟がいなくっても教師に暴力を振るうまで学校に―――草高に通っていたの?」

 いわばこれは"どうして学校に来ていないのか"の逆の質問だ。

 今日の、曜さんの家で聞いた曜さんの話と話し方から是が非でも学校には行くという印象だった。

 そこを突き詰めれば白城さんの言っていた曜さんが未だに学校を辞めていない諦めきれていない理由がわかるのではないか。

 そう思った。


「…………。えーっとな、あまり言うのも気恥ずかしいし、身内ぐらいにしか言えなかったことではあるんだが………。誰にも言うなよ?言ったら殴るからな」

 言ったら殴られるのか。


「私には夢があるんだよ」


「……夢」


「なにがなんでも叶えたかった夢が私にはあった。ま、今となっちゃあ叶わぬ夢なんだがよ………」


 何かを誤魔化すように笑って言う曜さんは必死に懇願する白城さんを追い出すときと同じ顔をしていた。

 僕はそんな彼女にかけてやれる言葉はやっぱり浮かんではこなかった。


 空腹を満たした僕たちはその場で別れ、あんな話を聞いたせいなのか曜さんの背中はなんだか寂しそうに感じた。

 話によると一年前、彼女はどんな思いで夢を手離したのか。

 クラスメイトからは恐れられ誰とも親交を深めないまま一年次を過ごしても夢を抱き、担任教師から疎まれていることを知っていても夢を抱き、父親と弟がいなくなっても夢を抱き。

 母親が倒れ、教師を殴って遂に曜さんは夢を諦めた。

 諦めて、諦めて、諦めて。

 何度も、何度も自分を抑えつけて。

 大事に大事に育ててきた開花を待つ花を曜さんは"仕方なく"むしりとった。

 しかしそれでもまだ種は残っていると今日一日の彼女の話からわかる。

 未練があると確信する。

 諦めてはいるけど諦め切れていない。

 でも、そこから何をすればいいのか皆目見当もつかない。

 突け入る隙は十分に分かっているのにどう行動すれば曜さんが学校にまた来ようとするのか分からない。

 後味の悪い、僕と白城さんのお節介は悪戯に曜さんを傷を抉っているだけではないのか、そんなことを思いながら。

 僕は家に帰った。


 ◇


 家に帰って晩ご飯の支度をしてくれていたハルに怒られ次の日。

 部活で疲れているにもかかわらず甲斐甲斐しくも用意しているのに外で食べてきたとあっけらかんと言う僕に怒るのは当然だと言えた。

 今度からは連絡しようと心から思った通学路だった。


 昨日のファミレスでのことを一応白城さんに話しておこうかと思って一日機会を得ようとしていたのだが、僕が話かけようとすると白城さんは顔を赤くし目を逸らして僕から逃げるからどうしてだろうと考えていると昨日の別れ際で勘違いされていることを思い出し、その勘違いを解こうかどうか迷っているとあっという間に放課後になった。

 なぜ僕が迷ったのは置いておいておよそ一日振りに『ココロ相談室』発足してから初めて僕が部活を休み医月単体で活動していたであろう生徒会室のとなりにある部室にやってきた。

 医月がサボるとは思えないから一人で相談事にあたることになってやや心配だけど元々そんなに相談者が来るわけでもない(ほとんどは草むしりなどの雑用が主)し、まぁ大丈夫だとは思うが。

 まさか僕がいない日に相談が来たなんてことがあるわけないだろうとそう思い部室に入ると医月はもちろんだとして他にもう一人いた。

 代と同じようにでかい図体に見る人によっては恐がるような強面。

 この部活の最初の相談者にして、悪く言えば先日『ココロ相談室』が廃部の危機に陥った原因。

 世知原姓一朗くんだった。


「あれ……どうしたの?世知原くん」

 何気に医月と世知原くんのツーショットは初めてなので戸惑わないように気をつけよう。


「ああ、向介先輩。ちーっす」

 久しぶりと言えば久しぶりに会ったけど、最初の頃より棘がなくなっている感じがする。

 そもそも僕のことを先輩扱いしてくれているし、挨拶だってしている。

 っていうか挨拶できたんだ………。


「あのー………これってどういう状況なの?」

 気をつけていたところで戸惑ってしまう僕はいつもの席でいつものように本を読んでいる医月に説明を求めた。


「………………」

 却下された。

 というより無視された。

 なんでだよ。


「………世知原くん、あの後須磨くんとはうまくいっているんだっけ?」

 とりあえずは落ち着こうと自分の指定席に座り、初めて世知原くんが来た時と同じように向かい合う構図になる。

 同じとは言っても制服は夏服に変わっているし医月もいるしそこまででもないかもしれない。


「まぁ、な。須磨とはきちんとケジメつけたし、約束通りアイツの兄貴にも謝りに行った。それからは一応ダチってことになってる」

 それは良かったよかったと言うべきなんだけど、須磨くんのお兄さんというとつまりその、須磨くんの言うところの変わり果てたお兄さんなのだからその人と世知原くんがどんな風に決着をつけたか気になるところだ。

 気になるだけで訊かないけれど。


「それで?今日はなんでここに来たの?まさか近況報告ってわけでもないんだよね?」


「ああ、実はまた相談にのって欲しいっつーか、協力して欲しいことがあるんだ」

 よっぽど大切なことなのか、悪態をつきながら相談してきた人とは思えない素直さだった。

 世知原くんがここまで必死に頼み込むような人だとは思っていなかった。


 その昔、たった一人だけで暴れまわっていたと言う彼。

 当時のことを全く知らない僕が言うのも変だけど、随分と丸くなったものだ。

 須磨くんとの決着のときもそうだったように彼がここまで改心した原因とは一体なんなのか。

 ?

 須磨くんとの決着のとき?

 あのとき世知原くんは何か言っていたような………、なんだったっけ?


「………憧れの人」


「それなんだ!」

 世知原くんは興奮気味に僕が思わず漏らした呟きに反応するもんだから吃驚する。

 僕はただあの日の世知原くんと須磨くんのやり取りを辿りながら、世知原くんが改心した原因は憧れの人ができたからだと言ったいたのを思い出しただけだというのに。

 話の流れからするとその『憧れの人』にまつわる相談事なのかな。


「俺が昔暴れまわっていたことは知ってると思うが、その頃に出会った『あの人』を探して欲しいんだ」


 そして世知原くんは前回の相談のときには話さなかった"自分のこと"を語る。


 ◇


 世知原くんの家庭は悲惨だった。

 父親はたびたび暴力をふるい、母親は泣き、子供は震えるばかりだった。


 世知原くんには姉がいた。

 歳はひとまわり近くも離れた姉だった。

 姉は世知原くんが中学に上がる頃にはすでに自立しており、世知原くんにとっては両親とだけ暮らす日々の方が日常だった。

 さっきは悲惨と言ったが始めから世知原くんの家庭が悲惨だったわけではない。

 彼の姉が自立してまもなく父親の勤め先の会社が倒産してから父親は母親もしくは世知原くんに暴力をふるい始めたらしい。

 倒産の原因はライバル社への敗北。

 詳しいことは世知原くんにも分からないらしく、ただ職を失ってからは人間の強さというものに執着したようだった。


『弱い奴からくたばっていく。そういう世界なんだよ、所詮は』


 父親はことあるごとに漏らしていた言葉が世知原くんの脳裏に焼きついた。

 毎日のように酒を飲み落ちぶれていく父親の憂さのはけ口になっている世知原くんは次第に父親と同じように強さに執着していった。


 今、殴られているのは俺が弱いからだ。


 今、蹴られているのは俺が父親コイツよりも弱いからだ。


 世知原くんが自分の『狂気』、何もかもぶっ壊したい衝動に気づいたのはそう思うようになってからだった。

 自分がここでやり返せばこの理不尽な暴力から解放されるのだろうか。

 そんなことを考えつつも十何年間育ててくれた実の親をぶん殴る気にはどうしてもなれなかった。

 母親や自分のことを傷つけるような父親でも。

 世知原くんにとっては立派な親だった。


 自分の『狂気』を必死に抑え続ける内に限界が来るのを感じた。

 やばい、と。

 このままでは制御も手加減もできずこの父親を殺してしまいかねない。

 耐えろ、と。

 世知原くんはただひたすら自分自身に精神的な鎖を科した。

 しかし、その鎖は呆気なく崩れた。

 いつものように父親からの暴力を浴びる世知原くんと同様に耐えていた母親がうっかり言ってしまった。


「助けて」


 これを聞いてしまった世知原くんは自らを『狂気』に染めた。

 今まではやられるだけだった人間の初めての抵抗だった。

 殴って殴って殴って殴って。

 蹴って蹴って蹴って蹴って。

 ふと気づけば暴力を振るっていた父親はボロボロに横たわり、泣き叫んでばかりだった母親はオロオロと怯えて、震えて我慢していた自分はただただ冷静だった。


 父親コイツはまた負けたんだ。


 弱いから。


 弱かったら負ける。


 父親コイツみたいに。


 強くならないと。


 強くならないと。


 その後はどうしようもない。

 両親は離婚し、何も知らなかった姉はただ戸惑い現実に着いていけていなかった。

 世知原くんはその日からご存知の通りたった一人で強さを求め、たとえ相手が集団であろうと強そうなら関係なくケンカを吹っかけては暴れていた。

 それはその地域の学生を恐れさせるほどに。

 彼の荒れた時代は彼が中学三年生になるまで続いた。

『あの人』に会うまで。


 今まで狂ったように暴れていた世知原くんはそれまで倒してきた人たちから報復を受けることになる。

 数は十人余り。

 もちろん一人である世知原くんは四面楚歌どころの話の話ではなかった。

 どこを向いても自分の敵。

 いくら一人で戦ってきた世知原くんでもこれには敵わなかった。

 別に彼は武道の心得があったわけでもない、ただ容赦のなさ生まれつきの頑丈な体のおかげで強さに勝って来た彼なのだから当たり前だった。

 もう終わりだ、自分も父親アイツのように弱かったから負けるのか。

 そう思った世知原くんを助ける人がいた。

 それも一人だけ。

 その人は世知原くんを夢中に襲っていた世知原くんにとっての敵たちをすばやく的確に倒していった。

 助けられた世知原くんはこともあろうに命の恩人であるその人に襲いかかった。

 強さを目の敵にし強さを求めていた彼にとってその人は倒すべき相手であり、超えるべき壁だった。

 結果は一蹴されまたしても惨敗。

 倒れ込んだ彼に本当の強さを説き、彼を説き伏せ改心させた。


 それ以来、世知原くんは別人のように変わり、憧れと化した助けてくれた『あの人』を探すようになったのだった。




 ◆





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