表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
心の中に  作者: ROLL
7/16

第7話:初デートと

「古谷、お前今日どうしたんだ?」

「どうしたって?何がだよ」

「なんかいつもより機嫌がいいなと思ってさ」

「やっぱ分かっちゃう」

古谷はすごい笑顔だ。ちょっと気持ち悪いな。

「まぁな。それぐらい笑顔だとな」

「今日さ、彼女とデートなんだよ」

デートが嬉しいのは分かるけど、ここまで喜ぶことなのか?

「俺にとって初デートなんだよねぇ」

それなら納得できた。

お世辞にも古谷はかっこいいとは言えない。

性格はいい奴だから彼女とかいるとか思っていたがそうでもなかったらしい。

「はやく、仕事終わらねぇかなぁ」

「少しは落ち着けって」

気持ちが分からないわけでもない。

俺も初デートの時はこれに近い感じだったはずだから。


「分かった。場所は中央公園噴水前で時間は10時だな」

「うん。初デートなんだから遅刻とかなしだからね」

「分かってるって。じゃあな、また明日」

「うん。バイバイ」

告白してから一時間後の電話だった。

明日の初デートの内容を二人で電話で決めていた。

俺は予想通りこの後、あまり寝付けず次の日遅刻しそうになった。


「上手くいくといいな」

「ありがとよ。そう言ってもらえると嬉しいぜ」

古谷はそう言って俺の肩をポンポンと叩いた。

俺達二人はそろって仕事に戻る。

初デートの話をしたからか、あの日の事が鮮明に頭の中に蘇る。


「はぁはぁ・・・やべぇ遅刻する」

俺は一所懸命待ち合わせ場所に向かって走っていた。

待ち合わせ場所にはもう双葉は来ていた。

「ふぅ。危ねぇ・・・」

「もう。いきなり遅刻しそうになるなんて」

「悪い、悪い。昨日あんまり寝れなくてさ」

「間に合ったんだから別にいいわ。それより早く行こう」

「ちょっとだけ待って」

「もう、だらしがないんだから」

そう言いながらも双葉は俺に合わせてくれた。

「もう大丈夫でしょ?行こう」

「分かった。待たせて悪かったな」

「別にいいわよ。いつもは私が待たせてるし」

「そういえばそうだったな」

「何よ。悪い?」

「別にそんなこと言ってねぇよ。ほら、行こうぜ」

俺は双葉の手を握って歩き出した。

双葉は顔を少し赤くしながら俺の隣を歩いた。

20分程歩いてついたのは遊園地だった。

一日フリーパスを買って中に入る。

この遊園地は初めて来たがなかなか大きい様子だった。

「ねぇ。どれから乗ろうか?」

「う〜ん。じゃ、あれから乗らねぇか」

俺はそう言って指を差した。その指の先にはジェットコースターがあった。

「え・・・」

双葉は絶叫系が苦手だった。

俺はそれを知っていたがあえて選んでみた。

「嫌か?」

「優斗と一緒なら平気。さぁ行こう」

まさかこんなに早く決心するとは思ってなかった。

その日は夏休みではあったが平日だったので思ったより人は少なかった。

「結構、早く乗れそうだな」

「うん、そうだね」

10分も経たない内に俺達はジェットコースターの席に座った。

隣を見ると双葉が少し震えている感じだった。

「おぃ。大丈夫か双葉?」

「少し恐いだけだから平気・・・」

「そうか」

俺は提案した事を少し後悔し始めた。

「ねぇ。優斗」

「何だ?」

「手を握ってくれない」

そう言って双葉は俺に手を差し出してきた。

俺は何も言わずに双葉の手を握った。

「ありがとう」

双葉はそう言って前を見た。

ジェットコースターがスタートする。

どんどん高くなっていくのはさすがに少し恐怖を覚える。

一番高いところまでジェットコースターがのぼると、

いきなりとてつもないスピードで下り始める。

「キャー」

周りからそんな悲鳴が聞こえる。

双葉は俺の手を強く握っている。

結構短いコースだったため終わるのは早かった。

ジェットコースターから降りると双葉は本当に安心したようだった。

「悪かったな。あれに乗りたいって言って」

「大丈夫だよ。じゃあ次は私が決めていい?」

「あぁ」

「じゃあ、あれに入ろう」

一瞬、嫌な感じがした。俺の予感は的中だった。

双葉が入ろうといったのはお化け屋敷だった。

俺は情けない話だがホラーとかそういう物が大の苦手だった。

5歳ぐらいの時に母が見ていたホラーの番組を、

たまたま見てしまい泣いたことがあった。

それがトラウマとなって今でもホラーが苦手となっている。

勿論、双葉はその事を知っている。

俺はやられた、と思いながらしぶしぶと双葉についていった。


入った途端に冷や汗が出始めた気がする。

自分では精一杯普通に振舞っていたつもりだが双葉は隣で笑っていた。

だからといってありのままの自分をさらけ出す事が出来るはずがなかった。

お化け屋敷にいた時間は10分もなかったと思う。

だけどあの時の俺にとってはあの時間は1時間以上にすら感じられた。

これからは人をからかうのは、やめようと反省した。


その後、俺達はいくつか乗り物にのって昼食にすることにした。

昼食は、双葉の手作りだった。

双葉は見かけによらず料理が上手だった。

幼馴染ということもあって、味付けも俺のつぼにはまってた。

「どう優斗、おいしい?」

「あぁ、おいしいよ」

「そぅ、それなら良かった。作るのに2時間もかけたのよ」

だからこんなに量が多いのか。

「へぇ。わざわざありがとな」

俺は礼を言ってから凄いスピードで食べ始めた。

寝坊して朝食を食べてなかったからしょうがない事だった。

「そんなに急がなくても、なくならないわよ」

俺は途中で何度も喉に詰まらせてむせていた。

その度に双葉がお茶を差し出してくれた。

食べた後は一時間ほどお喋りしながら休憩してた。


休憩した後は、乗っていないアトラクションに乗ったりして遊んだ。

時間が6時ごろになった頃俺達は、遊園地を出た。

「楽しかったねぇ」

「あぁ。あんなに遊んだのは久しぶりだ」

そんな会話をしながら俺達は歩いていた。

歩いている途中に、双葉がこんな提案をした。

「ねぇ、優斗。公園寄って行かない」

「別にいいけど。何処の?」

「そんなの決まってるでしょ。優斗が私に告白した公園」

「そこしかないか。いいよ、行こう」

俺達二人は目的地を公園にしてそこへ歩を進めた。

公園についた頃はもう7時をまわっていて、人はいなかった。

時々公園の前を通る人は少しだがいた。

俺達はベンチに座って、星を眺めた。

「綺麗だな」

「そうね」

しばらく沈黙になったが悪い雰囲気ではなかった。

俺は手をベンチの上に置こうとして動かすと双葉の手にぶつかった。

その拍子に双葉がこっちを向き俺と目が合った。

俺達はそのまま2、3秒ほど見詰め合った。

そして、そのままキスをした。

二人とも緊張してぎこちないキスだった。

「しちゃったね」

「そうだな」

俺達の間にはまた沈黙が流れた。

周りが静か過ぎて自分の鼓動の音が大きく聞こえた気がした。


気付けば、仕事の終了時間が近付いている。

古谷はもう片付けの準備をしている。

気のせいか、さっきよりもウキウキしているように見える。

俺も片付けの準備を始める。

二人とも片づけが終わって一緒に会社を出た。

「じゃあな、これから待ち合わせだから」

「おぅ。ガンバレよ」

「分かってるって」

そう言って寺谷は走っていった。


俺の最初の恋は報われなかった。

あいつの恋は報われるといいな、と素直に思った


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ