第5話:3人の気持ち
柳双葉との出会いから一週間がたった。
世間はまだ夏休みでみんな楽しそうな笑顔を振りまいているのに、俺はかなり沈んでいた。
理由は簡単だ。あの日から幼馴染の双葉が口をきいてくれない。電話すらもシカトされる。
好きな人に無視されるのは、どれほどつらいのか身に染みて分かった。
とりあえず、なんとかしなければならない。そうは思っても何も思いつくことができない。
「はぁ・・・」
溜息をつく。考えてしまうのはこれからどれ位の間、シカトされるんだろう。
「はぁ・・・」
また溜息をつく。ここ一週間で何回目だろう?考えたくもなかった。
「もう一度電話してみるか」
俺は決心して携帯電話を手にした。
優斗は分かってくれない。私の気持ちを。
正直言うと、映画に誘われた時、優斗も私の事が好きなんじゃないかと思った。
だから、誘われた時は本当に本当に嬉しかった。
でも、それは私の勘違いでしかなかったらしい。
他の女性と楽しそうに歩く優斗。
そんな姿を見て私はどれ位、傷ついただろう。
優斗は、私の事をどう思ってるんだろう。ただの幼馴染としか思ってないのかな。
そんな事を考えていると、携帯電話が鳴った。
優斗からだと私は確信していた。
早く夏休み明けないかな。もう一度あの人に会いたい。
秋月優斗って名前と同い年と同じ学校ってことしか知りたい。
もっとあの人のことをいろいろ知りたい。
最近考えるのはあの人の事ばかり。自分でも何故かはよく分からない。
こんな気持ち自体が初めてで、何て表していいのか分からない。
夏休みが明けるまで後、約二週間。
学校がこんなに待ち遠しくなったのは久しぶりだ。
電話はつながってる。もうコールも6回目だ。
半ば諦めてはいた。コールが9回目を向かえてきろうとした時
「もしもし」
双葉の声が聞こえた。
嬉しさのあまり変な声を出してしまいそうになった。
「もしもし、優斗だけど、話したい事があるんだ」
「私は別に聞きたくないんだけど」
「あれは誤解だ。ただ道を案内してただけだ」
「本当にそうなのかしら?」
「本当だ。だからいい加減シカトはやめてくれないか?」
「別にシカトなんてしてないけど。優斗の勘違いでしょ」
こういう時の双葉は本当に厄介だ。
「そぅ、分かった。じゃあ、またな」
俺はそう言って電話を切った。
「そぅ、分かった。じゃあ、またな」
優斗がそう言って電話を切った。
本当は止めたかった。もっと話していたかった。
でも冷たく当たってたのもあるからそんな事言えるはずなかった。
完璧に嫌われてる。俺はそう思った。
「これからどうしようかな・・・本当に・・・」
外では何か悪い前兆を示すかのように雨が降り出した。