第2話:手をつないで
映画館の中は結構すいていた。俺達が見ている映画はそろそろ公開終了だからこんなもんだろうなと思っていた。
隣では双葉が真剣な表情で映画を見ていた。
一方の俺は考え事ばかりしていたため殆ど内容をつかめていない。分かるのは主人公が適と戦ってピンチになっていることだけだ。
あの日もちょうどここで映画を見ていた。
今でも強く覚えているのは、俺と双葉は泣いていて知らず知らずね内に手を握っていたことだ。本当に無意識だったから双葉の手が暖かったのか冷たかったのかすら覚えていない。
「いい話だったね」
帰り道で双葉がそんなことを言った。
「あぁ。そうだな」
俺はそんな素っ気ない返事をした。
「あんな恋ができたらいいのにね」
「そうだな」
正直いうとそんな事思っていなかった。大切な人はいつまでも側にいてほしいから。
確かに映画の恋もいいなぁとは思ったりした。でも、もしもいつか誰かと愛し合って幸せの途中にその人がなくなるなんて考えられない。
俺達はその後無言で歩いた。歩いていると二人の手がぶつかった。最初は戸惑ったけどそのまま二人手をつないで歩いた。
あの時のはしっかりと覚えている。双葉の手は暖かかった。
少しだけ過去を思い出してる内に映画も大詰めをむかえていた。
今気付いたけど双葉は俺の手を握っていた。俺がそれを優しくにぎりかえすと双葉はこっちを見て優しく微笑んだ。
映画が終わって今はレストランの中にいる。どこにでもあるようなファミレスだ。
双葉は興奮した様子で映画について一生懸命語っている。俺は内容がほとんど分かんないから相槌をうつしかない。ちゃんと見るべきだったと後悔した。
2時間ほどして俺達は帰路を歩いていた。
まるであの日のように。
手をつないで。