第15話:最後の言葉
「双葉、お前に会えて本当によかったよ」
「・・・・・・」
双葉は何も言わず静かに聞いていた。
「前にお前が言ったように、お前も俺だ」
双葉の目には涙が流れていた。
「本当は最後の日に伝えるつもりだった。
だけどお前は目を閉じて返事をしてくれなくて・・・」
俺の目にも涙が溢れていた。
「お前さ、俺に幸せになれって言ったよな。
その約束だけは何が会っても守るよ」
双葉は涙を流しながら頷いていた。
「でも、1つだけ忘れないで欲しいことがあるんだ。
俺がこの先、誰かを愛して結婚しても、
俺の中で一番大切なのはお前だ。
それは永遠に変わらない。俺が死んでもだ。
それだけは忘れないでくれ」
俺達二人は涙を流していた。
もう言葉を発する事も出来ないほど苦しかった。
時間が経つにつれ、双葉の体が薄くなっていった。
「優斗、本当のさよならだね」
「あぁ」
「優斗、泣くのはやめて。最後は笑顔で別れよう」
「そうだな。分かった」
俺は無理やり笑顔を作った。
「じゃあね、優斗。愛してるよ。ずっとずっと」
「俺も、愛してる。誰よりも双葉、お前のことを」
「最後にその言葉が聞けてよかった」
双葉はそう言って消えた。
我慢していた涙が一斉に溢れてきた。
止まらなかった。止まるはずがなかった。
「大丈夫?」
前からそんな声が聞こえた。
前にそっと視線をやると柳双葉がいた。
俺がどうして泣いてるのか分からず困惑気味のようだった。
「優斗君、どうかしたの?」
「いや、なんでもないよ」
「そう、それならいいんだけど」
「あぁ。驚かせて悪かったな」
俺と柳双葉が付き合い始めたのは、
あの日から3年もの月日が流れてからだった。
勿論、あの日の事は双葉に話していない。
双葉は気になるようだが聞いてはこない。
そしてまた3年の月日が流れた・・・