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心の中に  作者: ROLL
14/16

第14話:奇跡の再会

今日は、双葉が亡くなってちょうど七年目だった。

俺は双葉の墓の前にいた。

「双葉、お前との約束通り俺は幸せにやってるよ」

俺はそう語りかける。もちろん返事はない。

後ろから足音が聞こえてくる。

「あら、久しぶりね。優ちゃん」

おじさんとおばさんだった。

おばさんは、俺の事をまだ優ちゃんと呼ぶ。

俺も、もう24歳なのにな。

「お久しぶりです。おじさん、おばさん」

去年のこの日にあって以来だからちょうど一年ぶりだ。

「毎年ありがとうね」

おばさんが言った。

「当然の事です。双葉は俺にとっても大切だったから」

俺は空を見上げた。

「双葉、元気にやってるか。俺は元気にやってる。

出来ればあの日みたいにお前に会いたい」

俺は心の中でそう言った。

そして、あの奇跡の日を思い出した。


双葉が亡くなってもう3週間が過ぎたころだった。

俺は普通に学校に通っていた。

勿論、明るく振舞う事はできなかった。

皆、俺に心配して声をかけてくれた。

特に柳双葉は俺によく声をかけてくれた。

双葉が亡くなってから、部活には一度もいなかった。

ギター自体ほとんど触っていなかった。


学校が終わってから俺は一人で帰っていた。

友達と一緒に帰れる気分じゃなかった。

その日は家に帰らずブラブラしていた。

気付くと時間は7時をまわっている。

帰ろうかなと思った瞬間俺は気付いた事があった。

俺のいた場所は、双葉に告白した公園の近くだった。

「知らない内に、ここにきてたのか」

俺はすぐ帰ろうとした。

しかし足は公園の方へ向かって歩き出す。

自分でも何故かは分からなかった。

公園まで来るとそこには一人の影があった。

俺の学校の女子の制服というのが少し遠くからも分かった。

どんどん、近くなるごとに、少しずつ顔も明らかになる。

「あ・・・」

俺は驚きを隠せなかった。

なぜならそれは、俺の一番大切な神山双葉だったから。


「優斗、遅いよ」

声もまったく双葉だった。

「どうして、お前がそこにいるんだ」

「いろいろ、あってね。神様が最後にチャンスをくれたの」

「神様?」

正直、信じられなかった。でも信じるしかなかった。

死んだはずの双葉が目の前にいるのだから。

「最後に優斗と話をできるチャンスをね」

頭が良くまわらなかった。涙が出た。

そして、何も言わずに強く双葉を抱きしめた。


「私が死んで一週間ぐらいしてから、

私は毎日、夜7時から10時までここにいたの」

「・・・・・・」

俺は黙って話を聞いていた。

「優斗意外にはね私の姿は見えないの」

「そうなのか」

「うん、なんでだと思う?」

「分かんない?」

「私が一番会いたい人にしか見えないからなの」

「それが、俺なのか」

「うん、そりゃお母さん達にも会いたいけど、

私は誰よりも優斗に会いたかった」

「ありがとう」

俺は素直に礼を言った。

「でもさ、何で双葉は制服なんだ?」

「こっちにくる条件はね、いろいろあるの」

「そうなのか?」

「うん。さっきの時間もそうだし。会える人もそう。

そしてこれが一番大切なんだけど」

「・・・・・」

「自分と同じ名前の人の体を借りなきゃいけないの」

最初、言ってる事があまり理解できなかった。

「つまり、その体は柳さんのか?」

「うん、そういう事。この時間だけは私になるの」

その間、柳双葉がどうなるのか聞こうと思ったが、やめた。

時間は8時半を示していた。

双葉がもう一人の双葉でいる時間は残り1時間半だった。

「なぁ、双葉。明日もいるのか?」

「いない・・・。これは最後のチャンスだから」

「そうか・・・・」

「うん・・・」

俺は涙を堪えていた。

「優斗、私との約束覚えてる?」

「あぁ、しっかり覚えてるよ」

「ちゃんと守ってよね?」

「分かってる。俺を信じろ」

「うん」

双葉は笑顔でそう言った。

俺はそんな双葉の笑顔を見つめた。

二人が初めてキスした日のように俺達は見つめあった。

そしてあの日のようにキスをした。

あの日とは違って、長いキスをした。

2回目のキスは、悲しい味がした。

分からないけど、きっと涙の味なんだろうと思った。

俺達はその後、話をした。

小さい頃の話。ずっとずっと小さかった頃の話を。


気付けば時間は9時半を過ぎていた。

もう双葉との時間も30分をきっていた。

俺はあの時、伝えることの出来なかった言葉を伝えることにした。


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