第13話:伝えられない言葉
「双葉」
ベッドで横になっている双葉にそう声をかけた。
「ねぇ、もうちょっと近くにきて」
俺は双葉の方へと近付き椅子に腰をおろした。
「ねぇ、優斗。私思うの」
「・・・・・」
俺は黙って話を聞く。
「私ね・・・」
双葉の言葉が止まった。涙が出ていた。
俺も涙が出てきた。止まらなかった。
「私ね、私、優斗と幼馴染で嬉しい」
「俺もだよ・・・双葉」
「だって、優斗と幼馴染だったから私達付き合えたでしょ」
「・・・・・・」
俺は言葉を出せなかった。胸が詰まりそうだった。
「ずっとね、ずっと好きだった。小さい頃から」
「あぁ、俺も小さい頃からずっと双葉を見てた」
「優斗はね、私なの」
「・・・・・・・」
「優斗がいて私が成り立ってるの。
優斗がいなきゃ、私はここにいないと同じ」
「俺にとっても、お前はそんな存在だよ」
「嬉しい、そう言ってもらえると」
「本気だよ、本当にそう思ってる」
言葉が出てるかなんて分からなかった。
「優斗、ごめんね」
「謝るなよ。お前は悪くない」
「でも・・・ごめんね」
俺達二人は思いっきり泣いた。
自分達の感情を思い切りさらけ出して。
「ねぇ、優斗」
「何だ?」
「最後にね、伝えたい事があるんだ」
「最後なんて言うなよ。ずっと側にいろよ」
「この先、私がいなくても幸せになってね」
「・・・・・」
俺は何も答えなかった。
双葉と以外幸せになりたくないと思った。
「きっと、私のように優斗を愛してくれる人がいるから」
なんて言えばいいのか俺には分からなかった。
「だから・・・だからね」
「あぁ」
「絶対幸せになってよね。それが私との最後の約束」
「分かった、約束する」
したくなかった。本当はしたくなかった。
でもするしかなかった。
俺にはそれが痛いほどよく分かった。
俺は双葉の手を握った。そして、
「双葉、俺も双葉に伝えたい事があるんだ」
双葉は返事をしてくれなかった。
「双葉、双葉返事してくれ」
俺の声があまりにも大きかったのか、
両親やおじさん、おばさんが中に入ってきた。
俺は泣きながら双葉と叫んでいる
「双葉、双葉」
双葉が返事をしてくれる事はなかった。
部屋にいる全員が泣いていた。
俺は長い間、双葉の名前を叫んでいた。
俺は眠らないまま、朝を迎えた。
その時には、何かを考えられるほどには、なっていた。
双葉に伝えたかった事を結局伝えられなかったな。
俺の中にあるのは後悔や悲しみばっかりだった。
「双葉どうして死んでしまうんだよ。
俺まだお前に伝えたい事だってあったのに」
そんな思いは涙に変わっていくばかりだった。