第11話:前兆
双葉とのピクニックの次の日。
双葉は疲れが溜まって、熱を出した。
俺は心配になって会社を休み看病する事にした。
たかが熱ぐらいでと思う人もいるだろう。
でも、俺には恐かった。
また大切な人を失うかもしれない・・・
そんな事を考えたら働いてなんていられない。
ピクニックの次の日から双葉は体調を崩した。
俺は学校へ行き、昼休みの時間などに電話した。
「ありがとう、心配してくれて」
「だいぶ楽になったから、大丈夫だよ」
双葉はそんな返事ばっかしかしなかった。
それが俺の不安をさらに募らせた。
双葉が学校を休み始めて3日になった時だった。
俺は柳双葉に声をかけられた。
学校で声をかけられるのはそれが初めてだった。
「優斗君、神山さん大丈夫なの?」
「多分、大丈夫だと思うけど。一応今日お見舞い行くつもり」
「そう、お大事にと伝えといてね」
「あぁ。心配してくれてサンキューな」
「じゃあね」
放課後になると俺はすぐに双葉の家へ向かった。
家のインターホンを鳴らすと双葉のお母さんが出てきた。
「あら、優ちゃん。久しぶりね」
「久しぶり、おばさん。双葉はどうしてる?」
「まだ熱が下がらないの。部屋で寝てるわ」
「そう・・・」
「優ちゃん上がって。双葉も喜ぶから」
「じゃあ、おじゃまします」
そう言って俺は神山家に上がる。
「双葉は自分の部屋にいるから」
「ありがとう、おばさん」
二階に上がって双葉の部屋のドアを叩く。
「入ってもいいよ」
双葉の声が聞こえる。
「よぉ。元気か」
「あれ、優斗。来てくれたんだ」
双葉はおばさんが来たと思っていたらしい。
「あぁ。さすがに心配でな」
「わざわざ、ありがとう。でも本当にもう平気」
「そうか?」
「優斗もきてくれたしね」
そんな事をストレートに言われると顔が赤くなる。
「皆、心配してるから早く元気になれよ」
「うん」
俺達はその後、1時間ほど話をした。
「じゃあ、俺行くな」
「うん。今日は本当にありがとう」
俺は手を振りながら部屋の外に出て一階へ行った。
料理の準備をしているおばさんに挨拶をして家を出た。
そして、この3日後に・・・
「優斗、仕事大丈夫なの?」
双葉がそんな事を聞いてきた。
「あぁ。今日は休みをとってある」
「ごめんね。私のために」
「気にしないで休め。おかゆ作ってやるから」
「うん。ありがとう」
同じ思いなんてもうしたくない。
俺は涙が出そうになった。
あの日を思い出した。
辛い辛い過去の扉が開いてしまいそうだ。