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心の中に  作者: ROLL
10/16

第10話:ピクニック

約束の日曜日となり俺は双葉とピクニックにきている。

「今日はいい天気だねぇ。ピクニック日和だね」

「あぁ。本当に気持ちいいぐいらいいい天気だな」

「ねぇ。懐かしいね」

「そうだな。そういえば前にも一度来てたな」

「うん。その時私は家族とだけどね。優斗は」

そこまで言って双葉は口を閉じた。

「ごめんなさい。私」

「別にいいよ。あれはもう過去のことだ」

「でも・・・」

「本当にいいんだ。それに暗い話はやめよう」

「分かった。優斗あっちの方に行こう」

「よし、じゃあ競争するか?」

「それなら少しハンデ頂戴ね」

「どんな?」

俺が聞くと双葉は荷物を差し出してくる。

「え・・・」

「優斗は荷物を全部持って走る」

「・・・まぁいっか」

俺はそう言って荷物を受け取る

「よぉい、ドン」

その声が俺の昔の記憶の扉を開く


「優斗、今週の日曜日?」

「あぁ暇だけど。どうかした」

「ピクニック行こう。ピクニック」

「ピクニックかぁ。天気大丈夫かな?」

「大丈夫。大丈夫。じゃあ決定ね」

「分かった。楽しみにしてる」

「うん、頑張ってお弁当たくさん作るね」

そんな会話をしたのはピクニック当日の4日ぐらいだった。

いつも通り一緒に帰宅していた途中だった。

その後、双葉はずっとウキウキしていた。

ピクニックがそんなに嬉しいのか、とは思ったが

そんな双葉の姿を見て俺も楽しい気分だったの覚えている。


ピクニック前日はいい天気だった。

しかし、天気予報では明日の天気は雨だと言っていた。

確か80%ぐらいの確立だった気がする。

それを見た瞬間、俺は明日は無理だなと思った。

しかし、双葉は明日晴れにしてやると言っててるてる坊主を作っていた。

俺がそれを知ったのは待ち合わせ場所でのことだったけど。


当日はこれ以上にないぐらい快晴だった。

天気予報なんてまったく当てに出来ないなと思った。

待ち合わせ場所に行くと双葉がもう来ていた。

付き合い始めてから双葉は俺より遅く来たことがない。

最初はどうしたんだろうと思っていたが今は慣れてしまった。

「良かったねぇ。こんないい天気になって」

「だな。気持ちいいぐらい天気予報外れたな」

「そりゃ私がてるてる坊主を作ったからね」

「今時、てるてる坊主作ってたの?」

「別にいいじゃない。ピクニック楽しみだったんだから」

俺はその言葉に素直に嬉しいと思った。


天気が良すぎるのも考えもんだと思いながら俺は歩いてた。

隣では双葉が楽しそうに歩いている。

「ねぇ優斗。あそこまで競争しない」

あの時も競争をした。相手は違うし提案したのも俺ではなかったが。

「いいぜ、ハンデはどうしよっか」

「私をなめてるわね。でもせっかくだし・・・」

双葉が俺に荷物を差し出す。

「しょうがない」

俺はそう言って、荷物を受け取った。

勝負はもちろん俺の完敗だった。


「ねぇ、優斗あそこで弁当食べない?」

「そうだな、いい加減お腹すいたな」

「じゃあ行こう」

なんであいつは、まだあんなに元気なんだ。

俺達は木陰に座って弁当を食べていた。

そんな時、後ろから家族連れの声がする。

自分の耳を疑ったがその中には俺の知ってる声があった。

柳双葉だった。家族全員でピクニックにきてたらしい。

「あれ、優斗君と神山さん」

あっちはこちらに気付いたようだ。

「偶然だね。こんな所で会うなんて。驚いたな」

「俺も驚いたよ。柳さんとこんな所で会うなんてさ」

「優斗君達は二人だけできたの?」

「あぁ。俺と双葉の二人だけだ」

「そぅ。じゃあ邪魔しちゃ悪いし私行くね」

「明日学校でな」

「うん。じゃあね」

そう言って家族の所へ戻っていった。

双葉はなんとなく不機嫌な様子だった。

「柳さん、きっと優斗の事好きだよ」

「は?何言い出すんだよ」

「私には分かるの」

「・・・・」

俺にはなんて言っていいのか分からない。

「でも、大丈夫だよね。私は優斗を信じてるから」

俺は優しく双葉を抱きしめた。


よく考えてみれば、あのピクニックが双葉との最後のデートだった。


「優斗、あっちで弁当食べよう」

あの日と似た日常が繰り返されている。

俺はきっとまだ心の中で双葉をさがしているに違いない。

「あぁ、そうだな」

俺達は弁当を食べた。

隣にいる双葉は違う双葉だけど俺は幸せだ。

「双葉、俺はお前との約束守れそうだ」

そう心の中で呟いてみた。



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