第1話:映画
あれからもう七年の時が流れた。
今思い出しても不思議な出来事でしかない。時々ふと神様が与えてくれたチャンスだったと思う。でもそれが正しい答えかどうかは分からないし、何が正しいかなんて分かる日も来ないだろぅ。
俺はあの日に感謝している。自分の気持ちを伝えることができたのだから。
後ろから俺を呼ぶ声が聞こえる。振り返ると双葉が手を降ってこっちに走ってくる。どこか懐かしい感じだな。俺はふとそう思った。
七年前の夏。俺は今いる場所にいた。この日も俺は双葉を待っていた。名前は一緒だが別人の双葉を。
少し時間がたつと双葉がやってきた。少しだけいつもよりオシャレをしているようでそれが俺を嬉しくさせた。
「優斗。遅れてごめん」
「別にいいよ。いつものことだし」
「別にいつもはしてないもん」
俺、秋月優斗と神山双葉は幼なじみだった。そして俺は双葉に恋をしていた。
この頃はまだ今の彼女の柳双葉とは出会ってすらいなかった。
「それにしてもいきなり映画なんて。どうしたの」
本当の理由なんて言えるはずなくて、俺は適当に言っといた。
日曜日ということもあって映画館にはがたくさんの人がいた。
「優斗どれ見る?」
「双葉が見たいものでいいぜ」
「本当?じゃあ、あれにしよう」
双葉が指を指してそう言った。その方向をみると大きなポスターがあった。タイトルを読んでみた。
「君はいつまでも僕の心の中に」
ちょうど話題になってる映画で俺も知っていた。双葉は話題になっているものは何でも興味をもつ。この映画を選ぶのも頷ける。
そんなことを思った瞬間嫌な予感が俺の頭をよぎった。その時の俺は何でもないと思っていたが。
「優斗早く入ろう」
そう言う双葉に手をひかれ中に入っていった。