2日目のあさ
まぁちゃん加入!
旅の仲間 3人→4人
目が覚めたら、枕元に仁王立ちの鬼ジn…もとい、魔王様がいました。
妖し麗し、その尊顔。
それが艶やかな笑みを浮かべるんですけど…
…怒ってるな。
一瞬、大魔神の仮面でも被ってるのかと思った。
でも、私は寝起きです。
寝起きって、状況判断がまともにできないことってない?
私も脳内で情報処理が上手くできてなかったみたい。
怒ってんなーと、気付きながら。
私の考えはそれ以上に発展することなく。
結果。
「あ、おはよぅ…まぁちゃん」
いつもどおり、常と変わらぬ挨拶をしていました。
呑気に右手を挙げて挨拶する私に。
まぁちゃんの怒りが高まります。
「お は よ う じゃ、ねぇだろっ!!」
朝っぱらから、まぁちゃんの雷が落下しました。
私じゃなくて、何故か勇者様の頭に。
あ。ご愁傷様です。
「男と雑魚寝とか、何考えてんだ!?」
「だってテントが一つしかなかったんだよー?」
何考えてんだと言われても。
テントが一つしかなかったので。
まあ、言いたいことは分かりますが。
大丈夫かと思ったので、私達は一つのテントで寝ちゃいました。
遠慮する勇者様も、疲れてたのかすぐ眠っちゃったし。
…女として終わってるかな、私?
だって本当に、大丈夫だと思ったんだもん。
「そこは普通、男共を外で寝せるところだ!」
「だってお外は寒いよ。この辺、氷雪系の魔物も多いし」
「お前、17歳だろ? 慎み持て!! 何かがあってからじゃ遅いんだ!!」
「そこらへんは私も分かってるけど…」
「分かってないだろ!?」
「でもまぁちゃん、あの二人見ても、それ言うの?」
私はピッと、指差しました。
まぁちゃんに殴られた頭を押さえて朦朧としている勇者様と。
うさちゃん枕を抱えて、未だぐぅぐぅ寝っぱなしの副団長さんと。
…って、おい、武人。
一人だけ余所事だと思って安眠貪ってんな?
この騒ぎの中、全く気付きもせずに寝てる副団長さんは大物だと思った。
「……………」
「見るからに安全そうってか、どう考えても安全パイだと思うの」
「………それでも、男女の垣根や慎みは常に意識しろ!!」
「その間は何かな、まぁちゃん。誤魔化しは通用しないよ?」
「…うっ」
「素直に言っちゃおーよ。今、自分でもそう思ったんでしょ?」
そう、勇者様と副団長さんの二人を、安全パイだと!
「くっ…副団長が安全なこと、加えて勇者がヘタレなことは否定しない」
「そこを肯定されるのは男として情けないんだが!?」
あ、勇者様が復活した。
苦虫を噛み潰したような顔のまぁちゃんに食って掛かる、勇者様。
それでもねー…。
既に、その行動が証明した後だし、ねぇ?
「年頃の男女の癖に、雑魚寝で何もなかったんだろ?」
「うん」
まぁちゃんが私に確認を取ってきたので、私は素直にこっくり頷きました。
だって、事実だし。
まぁちゃんに貰ったお守りのお陰で、私には危険な獣が寄りつきません。
なので見張りも立てず、私達は眠ったわけですが。
朝起きた時、私の寝姿は慎みの欠片もありませんでした。
具体的に言うと、枕抱えて眠ってる副団長さんと、丸まって寝てる勇者様の間。
副団長さんの腹を枕に、勇者様の背中に足を乗っけて眠ってました。
三人の寝顔は、それは安らかに子供っぽかったとか。
「どう考えても、結果を見るに。なぁ?」
「うん。そうだよね」
「「どう考えても、ヘタレじゃん」」
「仲良いな、お前達は!! というか、どっちも敵なのか!?」
どっちの敵とか、味方とか。
「だって私達、従兄弟だし」
「仲良いのは当然じゃん?」
「そうとも限らないとこもあるだろーけど」
「でも俺等、仲良いもんな」
「うん」
「お前達…。さっきまで、敵対してなかったか!?」
「お説教はしてたな。リアンカの慎み無さについて」
「お説教されてたね。まぁちゃん、過保護なんだよ」
「リアンカは危機感が無さ過ぎだ」
「まぁちゃんは私と勇者様達を信用して無さ過ぎだよ」
「若い男なんて、信用できない最たるもんだ」
「まぁちゃんも、若い男だよ?」
「俺は、自分は信用してんだよ」
「勇者様は?」
「はっ」
「鼻で笑ったよ!」
「あんなもん、ハイエナを信用する様なもんだ」
「しかもハイエナ呼ばわりか! 俺がそこまで言われる様な何をした!?」
「そうだよ、まぁちゃん。勇者様は何もしてないよ」
「そだなー。男としちゃ情けねぇけど。それでも信用はしねぇ」
「まぁちゃん。勇者様は女の人が怖い、可哀想な人なんだよ?」
「リアンカ…フォローのつもりだろうが、心に刺さるんだが」
「まぁちゃんが心配しなくても、何もしないって」
「それでもな。それでも、危機感を持つことと注意することは必要だ!」
ふんっと鼻を鳴らして、そこだけは譲らないとまぁちゃん。
あーあ。そっぽ向いちゃって。
臍を曲げちゃったまぁちゃんは、時々とってもめんどくさい。
でも。
まぁちゃんが心配するのも、言ってる内容も。
尤もなことで、正しいことだって分かってるよ。
ただ、この安全パイ二人に注意を払うのがめんどくさかっただけで。
私ももう、17歳で、大人と変わんない。
だから、気をつけるべきなんだよね?
自分の行動の、ひとつひとつに。
そこを心配して、気にしてくれる人が一杯いるんだもん。
自分を守るって事以上に、そんな人の気持ちも守んなくちゃいけない。
それを分かってるはずだったのに、怠った。
だから私が悪いんだよね。
でも、めんどくさかったんだ。
「ごめんね、まぁちゃん」
「………」
「そんなぶすくれないでよー」
「ぶすくれてなんて、ない」
「折角の旅行だよ? まぁちゃん、仕事片付けて駆けつけてくれたんだよね?」
「お前は俺の心配を、なんっにも理解してないんだ」
「謝るから、機嫌直そーよぉ。どうせなら、一緒に楽しみたいよ」
「そんなこと言って、お前は反省してねーだろ」
「まぁ殿、俺からも謝ります」
「その呼び名、微妙。殿ってなんだ、殿って」
「…まぁ様?」
「様はもっと微妙だろ!」
「では、なんと呼べば?」
「まぁちゃんで! まぁちゃんで頼む!」
「………まぁ、ちゃん…?」
「うわぁ、呼びにくそうだね。勇者様」
「それより、照れくさそうに頬染めんな! 気色悪ぃ…!!」
「その、誰かをこんなに気安く呼んだことがなくて」
「私なんて、呼び捨てだよ?」
「愛称呼びの方が、時に気安く感じないか? 呼び捨てより」
「「あー…」」
結局、まぁちゃんに対する勇者様の呼び方は、まぁ殿で落ち着いた。
危うく「魔王殿」になりかけたけど、まぁちゃんがそれよりはマシって折れたから。
本名が嫌いって言うんだから、まぁちゃんも仕方ないよね。
溜まった仕事は片付けた。
だけど今日の分の仕事はやってない。
そんな状態で駆けつけてくれた、まぁちゃん。
うん、サボリだね。
帰ったらりっちゃんが怖いと思うけど。
それでもまぁちゃんは私達に付いてくるつもりだそうです。
身支度も、荷物もバッチリだもんね。
でも、ほんの軽い魔境巡りだってのに。
そんな重装備は必要なかったんじゃないかなー…?
なんでそんなに、気合いの入った武装用意してんの?
大量に持ち込まれた武器のアレコレに、私と副団長さんは呆れていました。
勇者様だけは、何故か危機感を過剰に感じているらしく。
青い顔で、そっと武器から目を逸らしていました。
さあ、そんな訳で。
魔境の観光巡り2日目の始まりです!
爽やかとはお世辞にも言えない目覚め(特に勇者様)でしたが。
それもこんな日には相応しいかも。
そんな空模様の中。
私達は2日目の目的地目指して歩を進めます。
新たに加わった、私達の頼もしいお仲間。
肩書きド派手な美青年。私の過保護な従兄のお兄さん。
魔王様が先頭を行きます。
その、まぁちゃんの加入に。
私と副団長さんはこっそりほくそ笑みました。
訂正、悪戯小僧の様に悪賢っぽく笑いました。
わぁい、これで楽になるー!
そんな本音は、とてもとても口に出さないけどね。
魔族最大火力の魔法と武力をお一人で兼ね備える魔王様ですから。
この先、どんな障害もちょちょいのちょいで取っ払ってくれちゃいますよ。多分。
私と副団長さんだけではできない様な面からのフォローも安心です。
より安心安全になった、魔境巡り。
一層、楽で安全になった道行きに。
私達は景色を楽しむ余裕も充分で。
残る懸案事項、不安は一つ。
勇者様の常識が、どれだけ木っ端微塵になって、どれだけ残るのか。
そんな感じで。
勇者様のみに懸念を残し、私達は歩きます。
さてさて、2日目の目的地はもうすぐです。
勇者様が今度はどんな目に遭うのか。
そんなことを期待したり、心配したり。
勇者様の受難(2日目)が、幕を開けようとしています。