表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ここは人類最前線3 ~リアンカ嬢の観光案内~  作者: 小林晴幸
旅行も終わりに近づいたようです
56/65

7日目 帰る場所1 ~オニオンチーズグラタン~

今回はちょっと短め?


とうとう旅行は終わりを迎え、リアンカ嬢達は村に帰ってきました!

 真竜王さんのお城に泊まり、明けて翌日。

 私達は、朝から真っ直ぐハテノ村へと帰ります。




  7日目 人類最前線



 肉体的にはまあ、そこまで疲労していません。若いっていいね!

 本来なら、これから日暮れまで勇者様の修行(という名のしごき)は続く筈だったけど…

 だけどもう、揃いも揃って精神面がみんなもうボロボロで。特に勇者様。

 もう良いよね? 帰っちゃっても良いよね?

 むしろ帰らなきゃマズイよね?

 …ってことで。


 私達は一路、ハテノ村及び魔王城のある魔境の中心を目指しました。

 奪還したせっちゃんを連れ、虫篭に封じられたナシェレットさんを従えて。


 帰りは真竜さんが送ってくれたので空の上を楽々です。

 それに加え、今回は子竜達が「一時帰郷!」と騒ぎ立てます。

 まだまだ修行の途中ですが、懐かしい面々に次々と会って里心がついたみたい。

 2人が「久々にマーベルママのオニオンチーズグラタンが食べたい!」と言うので。

 道程ショートカットもショートカット。

 もうすっかり勇者様も慣れたらしいし。

 私達は道なき道を、空の上を飛んで帰還と致しました。


 ちなみにマーベルというのはうちの母の事です。

 ロロとリリにとっては、第3の母くらいのポジションにいます。

 そして何故か第1に君臨しているのは、実の母じゃないという…

 些細な問題だと言い切る子竜達は、幼少期を私の母に育てられたも同然なので。

 彼等は未だに、私の両親をパパ、ママと呼んでいます。

 うちの母は料理上手ですからね。

 育ち盛りの子供達は、胃袋ガッチリ掴まれて、しっかり母に懐いています。



 そうこうする内に、私達の「人類最前線」ハテノ村が見えてきました。

 空から見下ろすと、またいつもとは別の感慨が湧きますね。

 まるでなんだか玩具の町並みを見ているみたい。

 黒々暗黒闇の魔王城のお隣に、ちょこちょことお菓子みたいな家が並んでいて…

 ………うん、すっごいシュールかもしれない。


 村の中、広場へと舞い降りた真竜。

 私達が竜の背から降りる間にも、人々が珍しい竜を取り囲みます。

 魔境でも、竜って引き籠もりがちだから、実は珍しい部類なんだよね。

 数年前までロロイ、リリフの2人がいたから、ハテノ村はちょっと事情が違うけど。

 それでも2人が村を出て、もう数年経ってるから。

 村に来たばかりの拾いっ子達や、当時の記憶が微妙な子達にとっては充分珍しい。

 まあ、ナシェレットさんが度々来てはいたけど、色んな意味で近寄り難かったし。

 それに比べて、今回送ってくれた真竜は見るからに大人しそうだしね。

 子供達が恐々竜を遠巻きに取り巻いて、好奇心に満ちあふれた視線を向けている。

 孤児院の目の前だったから、わらわらわらわら子供達が湧いてくるよ。

 しかも魔族と親しみ馴染んだ子供達だから、まあ剛胆なこと。

 あはははは、子供達! 存分に遊ぶが良い!

 ノリで高笑いをつけて、私は子供達に竜を差し出した。

 竜は、なんだか縋る様な救いを求める様な目で私を見たけど…。

 私はにっこり笑って、放置した。

 子供達が厭きたら労いの言葉の一つもかけて、帰りはお酒でも持たせよっと。


 さてさて、場の流れと時間的に都合良し、ということで。

 空は太陽が真上に近付き、丁度良くお昼まで間があります。

 子供達が叫んだ! 「オニオンチーズグラタン」と。

 おやおや。

 私達がいるのは広場の真ん中。

 私のお家は村の端。

 そのちょっとの距離も我慢できないの?

 苦笑を堪えて子供達を促し、折角だから皆を誘ってうちで御飯といきましょーか。

 メニューはグラタンとは限らないけどね。

 でも、折角だし。

 まだ時間もあるし、お昼の献立に逸品加えるくらいの余裕はあるよ。

 うん、子竜やまぁちゃんにも手伝って貰って、これからグラタン作るかな。


 さて、行こうかと。

 最短距離を通って家に帰ろうとしたんですけど。

 そんな私達を足止めする者が現れた!

 本当に、結果的に足止めではなく、足止めする為に現れた。


「ちょっっ…と、待ってくれえ!」


 必死の形相だった。


「あれ、サムソン。何してるの。なんか用でも?」

「お前等、今日の夕方以降に帰る筈だったろ! なんでいきなり予定大幅変更で朝っぱらから村のど真ん中に出現してんだよ!? 村の端っこで見張ってた意味ないし、足止めも不発になっちゃったじゃないか!!」

「おおう。何だか自分勝手な主張を重ねられてる気がする…」

「大丈夫だ、リアンカ。全然気のせいじゃないから」

「俺もそんな気がする」


 私達が疑惑の眼差しで見つめる青年。

 彼の名前はサムソン。私にとっては生まれた時から知るご近所さんの1人。

 この村に代々住み着く、常識崩壊した村人の1人です。

 普段は黙々真面目に畑を耕す好青年。

 だけど、時として無責任に人を煽って囃し立てる癖がある。

 つい先日も、村民集会で私を勇者様に嗾けようとしたお調子者の筆頭です。


 そんなサムソンは、今。

 絶望の顔つきで私達を見ては、頭を抱えている。


「まだ、日暮れまで猶予があると思ってたのに!」


 何のことですかー。

 日暮れがどうしたっていうんですか。

 猶予って、何の猶予のことですか。


 叫んで頭を抱えるサムソンは、私達の存在が眼中に入っているのか否か…。

 多分、私達の話は聞いていない。

 自分の世界に籠もるなら、私達も引き留められてる必要ないよね?

 足止めとか、何だか意味不明なことも言われてるし。

 ここはちゃっちゃかサムソンなんて無視して、おうちに帰ろう。


 …そう思って再度足を踏み出すと、凄い勢いで回り込まれた!

 うわ、鬱陶しいし邪魔だよ! 今、衝突しそうだったよ。

 一体全体、そうまでしてなんで足止めしたいの?

 ちょっと好奇心が疼いた。


 私の疑問は強く、強く。

 つい、ロロに目配せ。

 私の視線を受けて、ロロが頷き、リリが微笑んだ。

 人間よりも遙かに力の強い、子竜2人に締め上げられて。

 お調子者のサムソンが口を割るまで後5秒。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ