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2011年・2012年

合併症よ、眠れ。

言葉遊びはほどほどに、と忠告を受けても、

僕は死をきらびやかな言の葉で紡いでいく。

虐殺の果てに見たものの表記方法がわからなくとも、

君だけには伝えられる自信はあるのだ。

救われない本物の絶望のはざまに堕ちる君。

楽園など存在しないのだ、本当の明日も。

そのために毒薬を試飲することや、

月に一度リストカットすることも別にいいのだ。

結局は食べたいだけ食べ、犯したいだけ犯せば、

心という袋に空気だけが蓄積される。

まあ、それは泡沫であって、質量は無に近い。

だからこそ僕は言葉で君の遺伝子を覚醒させなければならない。

去勢された種馬が意味を成さないように、

音楽の入っていないipodが無価値のように、

ただイカサマに操作する空を奏でよう。

ファイに満たされようが僕の原稿用紙は、

文字の容量でデータが溢れているのだ。

地の下にあるコスモスは綺麗だ、と君は言わない。

本物を比べられない現代人ではない君は言わない。

だから君は傷つくのだ。世間に牙を向けられる。

認知されないダンスホールでいつまでも踊る君は、

死ねない、死ねない、と首根っこを切り刻んでいる。

夢であっても現実であっても苦しんでいる君。

だからこそ僕は君に「言葉」だけで癒すのだ。

詩を書いて、言葉を汚して、歌を歌わないのだ。

口だけのこの表現方法はとても、おかしい。

思わず笑ってしまう。くくく、と笑ってしまう。

けれど君だけは笑わない。真実味を帯びて泣いてくれる。

海水に似た濃度の涙は天から零れる雨水とは違う。

地から湧き出るマグマでもない。じゃあ、何だと訊かれても知らないが。

僕と君の関係は特に叙述するほどでもない。

恋人でも、まして友人でもない。腐れ縁……違う。

一緒に踊った通りすがりの人物さ。赤の他人なのさ。

野菜と果物の関係。切断された腕と抉られた眼球の関係さ。

惨たらしい残虐の昔話、お伽噺の登場人物なのさ。

殺し殺される関係といってもいい。赤い繋がりと言ったところか。

僕は詩を奏でる詩人なのさ。そして君に対しての死を奏でる者。

「あなたは美しい」と僕は言い続けるだろう。

焼き回ししたDVDのように掠れた記憶を蘇らせよう。

君との出会いを。埋葬された僕だけの残像を。

嗚呼!混じりあう。混じりあう。泥と天が。注射針と機械人形が!

そうだ。

僕は――――ぁ。

そう、僕は、発見者であり、目撃者だった。

君は、死んだのだ。

君は、自室で首を括っていたのだ。

単なる偶然にそこを通った者である僕は、

君に恋をした。死体に恋をした。

だから、僕は言葉でしか君を援助することができないのだ。

もう、統合されていない君はヘドロのようだ。

嘔吐物の山、望まない希望、白い地獄。

墓標の前で僕は君に捧げる。この詩を。

「眠れ」と僕は言う。「安らかに眠れ」と。

僕の記憶を持たない僕の女神よ。ただ眠れ。それだけだ。

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