合併症よ、眠れ。
言葉遊びはほどほどに、と忠告を受けても、
僕は死をきらびやかな言の葉で紡いでいく。
虐殺の果てに見たものの表記方法がわからなくとも、
君だけには伝えられる自信はあるのだ。
救われない本物の絶望のはざまに堕ちる君。
楽園など存在しないのだ、本当の明日も。
そのために毒薬を試飲することや、
月に一度リストカットすることも別にいいのだ。
結局は食べたいだけ食べ、犯したいだけ犯せば、
心という袋に空気だけが蓄積される。
まあ、それは泡沫であって、質量は無に近い。
だからこそ僕は言葉で君の遺伝子を覚醒させなければならない。
去勢された種馬が意味を成さないように、
音楽の入っていないipodが無価値のように、
ただイカサマに操作する空を奏でよう。
ファイに満たされようが僕の原稿用紙は、
文字の容量でデータが溢れているのだ。
地の下にあるコスモスは綺麗だ、と君は言わない。
本物を比べられない現代人ではない君は言わない。
だから君は傷つくのだ。世間に牙を向けられる。
認知されないダンスホールでいつまでも踊る君は、
死ねない、死ねない、と首根っこを切り刻んでいる。
夢であっても現実であっても苦しんでいる君。
だからこそ僕は君に「言葉」だけで癒すのだ。
詩を書いて、言葉を汚して、歌を歌わないのだ。
口だけのこの表現方法はとても、おかしい。
思わず笑ってしまう。くくく、と笑ってしまう。
けれど君だけは笑わない。真実味を帯びて泣いてくれる。
海水に似た濃度の涙は天から零れる雨水とは違う。
地から湧き出るマグマでもない。じゃあ、何だと訊かれても知らないが。
僕と君の関係は特に叙述するほどでもない。
恋人でも、まして友人でもない。腐れ縁……違う。
一緒に踊った通りすがりの人物さ。赤の他人なのさ。
野菜と果物の関係。切断された腕と抉られた眼球の関係さ。
惨たらしい残虐の昔話、お伽噺の登場人物なのさ。
殺し殺される関係といってもいい。赤い繋がりと言ったところか。
僕は詩を奏でる詩人なのさ。そして君に対しての死を奏でる者。
「あなたは美しい」と僕は言い続けるだろう。
焼き回ししたDVDのように掠れた記憶を蘇らせよう。
君との出会いを。埋葬された僕だけの残像を。
嗚呼!混じりあう。混じりあう。泥と天が。注射針と機械人形が!
そうだ。
僕は――――ぁ。
そう、僕は、発見者であり、目撃者だった。
君は、死んだのだ。
君は、自室で首を括っていたのだ。
単なる偶然にそこを通った者である僕は、
君に恋をした。死体に恋をした。
だから、僕は言葉でしか君を援助することができないのだ。
もう、統合されていない君はヘドロのようだ。
嘔吐物の山、望まない希望、白い地獄。
墓標の前で僕は君に捧げる。この詩を。
「眠れ」と僕は言う。「安らかに眠れ」と。
僕の記憶を持たない僕の女神よ。ただ眠れ。それだけだ。