バイバイ、加奈。
ちょっと意味わからないと思う。きっと。
で、でもとりあえず読んでみて!
ああ、どうしてここに。河本広人が。なんで。なんで・・・・・?
「俺を知ってる?」
思ったより美形だ。・・・ってそんな場合じゃなくて!!!
「知ってますよ・・・。嫌というほど。」
「じゃあ、俺がここに何をしに来たか分かるよね?」
背筋が寒くなるような声。加奈が肩を震わせた。
「加奈・・・・。大丈夫?」
加奈に話しかけてみたが、
「お姉ちゃん・・・・。」
という怯えた返事しか返ってこなかった。それはそうだろう。
絶対加奈には手を触れさせない、絶対。
たとえ私が死んでも加奈は命をもって守り抜く。あんな奴に加奈も私も殺されてたまるか!
「・・殺されたくない?」
あいつが言った。
「そうに決まってるでしょ、普通の人ならそう答えるわ。」
「そこの妹さんも?」
「当たり前よ、絶対加奈には触んないで!」
「俺を穢れてるとか思ってるの?お前もそこの妹さんも、俺だって同じ人間だろ?」
「あんた、化け物よ。同じ人間でもタイプ・・・。いわゆる殺人者ってこと、認識してもらっていいかしら?あんたと同じにしないで!!」
「ずいぶん気性の激しいお嬢さんだ。しかしもの静かなお嬢さんもいるようだねぇ。
殺されたくなければ、俺について来い。」
「加奈・・・歩いて。平気よ、まだ大丈夫。『まだ』。」
自分で言ったクセに『まだ』の意味を思い知らされた。『まだ』・・・。いずれ殺されるという事。
キャンプカーに乗り込んだ。
「さて・・・。妹さん?これを飲んでもらいたい。」
あいつがそう言って取り出したのは、小さな粉薬。
「なに・・・、するつもり?まさか殺すとか・・。私が飲んであげる。そうでしょ、そうなる事を
予測して言ったの?」
「そんなわけじゃない。ただ、記憶を消してあげるだけだ。15分前の。
俺が証拠にのんでやるよ。」
そう言ってあいつはその粉薬を水に溶かして一気に飲み干した。
するとあいつの目がトロンとし、また覚醒した。
「お・・・お前ら誰だっけ?」
「お姉ちゃん、今のうちに!!」
加奈が囁いた。
でも私はなぜか動けなかった。一瞬のうち加奈と手を取り合ってキャンプカーの階段を下りようとする。
しかし・・・・。
「捕まえた・・・♪」
「!!」
「実はこの薬、俺の友人が作ったもので、まだ30秒しか効かなくて。」
「うぉいっ!!!」
このとき私は相手が広人(勝手に呼び捨てだけど)だとも知らずにツッこんでしまった。
思いっきり。その事に気づき、自分の顔が赤くなっていく。
「お前、面白れーな!!!」
広人が吹き出していった。
するといきなり手を掴まれてグイッと引き寄せられる。
耳元で囁かれた。
「いいか。ある意味さっきの薬はお前の妹を助けてやるっていう事も含めてたんだが。
気を失ってるうちに妹を家のいリビングに運んでお前だけ連れ出すっていう策なんだが。」
「そうなの?・・・本当に?加奈を助けてくれる?」
「でもお前は一緒に来いよ。でないと俺がこの家を襲った意味が無いからな。」
「加奈・・・。おいで。」
私は妹の名を呼んだ。おとなしく加奈が来た。
「この薬を飲みなさい。私も飲むわ。」
「お姉ちゃんも・・・?」
「うん、だから一緒に、ね。」
嘘は言いたくなかった。本当は私は飲まないってこと。ごめんね・・・。
私は粉薬を水に入れて加奈に差し出した。加奈が恐る恐る受け取る。
そして飲んだ。少しずつだけど確実に水の量が減ってきている。
カクン、と加奈の体が崩れた。それを広人が受け取る。
「加奈・・・。バイバイ。」
広人が家の中に加奈を運んでいったとき、つぶやいた言葉だった。
「さあてっと。行こうか?でないと妹さんが追ってくるぜ?」
「出して。」
こう言って、なぜか全国指名手配犯との旅(?)が始まってしまったのである。
でも殺されるというオーラでもなく、楽しい・・・ような?
意外だな。でもなんか気になる、あいつの事。
分からないところがあったらかまわず聞いてね☆
特に薬のところ。あれは自分でも分からない、謎のお話(笑)